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043 救出

 「ランバートさん、狭いですよ」


 ミラリオが小声で文句を言ってくるとランバートも小声で反論する。


 「仕方ないでしょう。3人もいるんですから」


 今、ランバート一行はシャロの案内で領主の館から少し離れた場所にあるシュテファンが監禁されている石造りの小屋へむかっているところだ。


 ランバートたちも相変わらずの軟禁状態なので透明マントを使用して抜け出しているのだが、さすがに3人もいるとかなり密着した状態になっている。


 「すみません。わたしがいるせいで…」


 シャロが申し訳なさそうに言うと、


 「いえ、あなたがいないと正確な場所がわかりませんからね。それにあなた1人だけあの部屋に残すわけにもいかないでしょう。少々狭いくらい我慢しないといけませんよね」


 ランバートはお嬢様育ちのミラリオがまたわがままを言っている、と言いたげだ。


 「私はあなたのその腰の荷物の事を言っているんです!」


 ミラリオはランバートが右腰にぶらさげている革袋(金貨入り)を睨んでいる。代官代行のディアスに会った後にランバートが後生大事に持って帰ってきた物だ。中身を聞いてもランバートは「機密事項だ」答えなかったが、(金貨の袋に決まっている)とミラリオはしっかりその中身を見抜いている。


 「静かに!いくら反乱分子が私の尾行者に気をとられているとはいえ、あまり騒ぐと気付かれますよ」


 ランバートが声を抑えながらも鋭い叱責をすると、


 「その荷物から音がしたらどうするんですか」


 こちらも小声で抗議を続けるミラリオに対してランバートは自信たっぷりに答える。


 「私は音がしないように動くことができますからね」


 実際にランバートはどうやっているのか近くに人がいる時は革袋から音を全くさせないで歩いている。全く無駄に能力が高い男である。


 (それにしても俺を尾行していたヤツは相当の使い手のようだな。完全に反乱分子の一部を引き付けてくれてるもんなあ。一体どんなヤツなんだろうか…後でお礼でも言いにいこうかな)


 思ったよりも反乱分子の数が少ないのはその男が頑張ってくれているおかげだろう、とランバートはその相手がウォーベックだとは知らずに感謝しているが、のん気にお礼などを言いに行ったら確実に修羅場になるだろう。


 そもそも自分をつけ狙っている者にお礼を言いに行こうという発想がずれているのだが、そこはランバートらしいと言えばらしいところだ。

 

 「ここです。やはり見張りは残しているようですね。ただ、周りの兵はいつもより少ないようです」


 シャロがささやいているようにドアの前には2人の男が立っており、その周辺に10名ほどの男たちが巡回している。


 「中にもいるのですか?」


 「はい。3人ほどの見張りがいると思います。それから世話係が2人」


 シャロの返答にランバートが「全部でだいたい20人…ですか」とつぶやくと、「ランバートさん、計算がざっくり過ぎますよ。17人です」とミラリオが思わず突っ込んでいる。


 「20も17もあまり変わらないでしょう。それくらいならやることは同じですからね」


 (ごまかしているのか、本当にそう思っているのか、この人の場合わからないんですよねえ…)


 返答するランバートが顔色一つ変えていないので判断できないミラリオだが、やることが同じだという事には同意見なのですぐに行動に移すことにする。

 

 「ランバートさん、この人数なら当初の予定通り私が外の見張りを引き付けますからその隙に突入してシュテファンを奪還して下さい」


 そう言って1人だけ透明マントから出てミラリオは反乱分子の者たちの前に姿を現わすと、


 「私は執政警邏隊三番隊隊長、ミラリオだ!反乱分子ども!大人しく代官シュテファンの身柄を返してもらうおう!」

 

 と堂々と宣言する。正直、芝居がかっている気もしたが見張りたちを引き付けるならこれくらい目立つ方がよいだろう。


 その姿に男たちは驚きながらも、剣を抜いてミラリオに殺到していく。


 反乱分子とバレてしまっていたら、もはやミラリオを殺すしかないと判断したのだろう


 しかし、ドアの前の2人の男たちだけはよく訓練されているようで持ち場を離れていない。


 ミラリオはその二人を引き付けられなかった事を残念に思いながら、迫ってきた1人目の男と剣を交えるが、その時にはドアの前の2人の男は崩れ落ちており、更に小屋のドアも斜めに断ち斬られて開いている。


 (まだこっちは1人目だっていうのに…)


 相変わらずの早業に驚きながらも、男たちを更に小屋から引き離そうと引き気味に戦いながら2人目を倒した時に、ランバートが小屋から飛びだしてきて手当たり次第に切り捨てている。ようやく男たちも小屋の異変に気付いたようだが後の祭りだ。


 シャロに肩を貸してもらいながら小屋から出てくるシュテファンの姿をミラリオが見た時には今相手をしている3人目以外は皆ランバートに倒されていた。


 (これって、私が見張りを引きつける必要なんてなかったんじゃあ…)


 作戦も何もないようなランバートの力技にげんなりしながらミラリオは3人目の男にとどめを刺すのだった。

話の展開のタイミングがわるくて今回は少し短くなりました。前回の半分くらいですね。

次回は 044 革袋 です。 6章は次回で終わりになります。

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― 新着の感想 ―
もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな状態
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