第1章 06 二人で買い物
次の日、楓はいつも通り登校しようとマンションを出ると茅野に出会った。
「おはようございます。柊さん、随分と眠そうですね。朝は弱い方ですか?」
「おはよう、茅野。まああまり得意な方ではないな。」
楓はあくびを堪えながら答えた。
「あの昨日の話の続きで今日は放課後どこで待ち合わせしましょうか?」
「そうだな。普通にホームルーム終わったあと下駄箱の出口でいいんじゃないか?」
「分かりました。ではそうしましょう。それでその…」
茅野は何か言いづらそうにしていたが、楓的には一緒に登校しづらいとのことだろうと分かった。
「じゃあ、先に行く。それと待ち合わせ場所はスーパーでいいんじゃないか?」
「そうですね。そうしましょう。」
茅野は気を遣われたことに気づいたのか少し困った顔で了承した。
「また後で。」
そう言って楓は、マンションを早めに出ていった。
学校に着くと、ランニングを終えた快に丁度会った。
「楓、おはよう。」
制汗剤を持ちながらこちらへ来た。
「快、おはよう。朝練か?」
「うん、朝練だよ。みんなで部活も結構楽しいよ?」
「朝からよくやるな。」
楓は素直に驚嘆した。
「そういえばgwはいつの日がオフなんだ?」
「ああ、確か三日後がオフの日だったかな。」
「そうか。ならその日に出かけよう。」
「そうだね。それじゃあまたあとでね、楓。」
そこで会話を終え、楓は先に教室へ向かった。
いつも通り、高橋先生の朝のホームルームを終え、ぼーっと授業を受けていると移動教室から帰ってきた茅野と目が合った。
軽い会釈をすると、微笑み返された。楓は変にどぎまぎしすぐに目線を外した。
(最近の茅野はどうしたんだ?俺何かしたか?)
茅野の初対面との変化に違和感を感じつつ、授業の時間が過ぎていった。
高橋先生の帰りのホームルームが終わると同時にスマホが光った。
確認すると茅野からのメッセージが届いていた。
「ホームルームが早めに終わったので先に向かっていますね。」
という内容だった。
楓は下校時に会ってしまえば待ち合わせをした意味もないと思い少し遅めにスーパーへ向かった。
スーパーにつくと、カートを持ち出している茅野に出会った。
「お疲れ様、茅野。俺がやるよ。」
楓は、カートにカゴを入れ、カートのフックに荷物を下げるため茅野からバッグを受け取った。
「お願いします。それで何食べたいか決まりましたか?」
カートの引く俺の横を歩く茅野、その距離が意外に近くて楓は少し困惑した。
(とりあえず、距離近いから…なんて言えないよな。)
悩んだ楓は、茅野を1度落ち着かせようとした。
「落ち着け、とりあえずお肉は昨日食べたからそれ以外に何か食べたいの探そう。」
楓は、1度距離を離すべく、食品コーナーへ行こうと提案したら了承してくれた。
食品コーナーへ向かうとセールという大きな看板が見えた。
近づいてみると卵が安くなってるようだ。
「茅野、オムライスとかどうだ?丁度卵が安いし。」
「わかりました。ちょっと卵見てきます。」
楓が提案すると茅野が真面目な顔で卵を見に行った。
(卵って大体全部同じじゃ無いのか、、、)楓はそう思いながらも口には出さなかった。
「柊さん、卵持ってきました。今日はオムライスに決定です。」
楽しそうな顔で卵を持ちながらこちらへ歩いてきた。
「ああ、楽しそうだな。俺としても茅野のご飯は楽しみだ。」
「はい。腕によりをかけて作りますね。」
そうしてお互いに消耗品なども買い揃えスーパーを出た。
もちろん昨日と同様に楓が荷物を持った。
その帰り道、楓は気になっていた事を聞いてみた。
「茅野は何でまだそこまで関係が深くない俺をご飯に誘ったんだ?正直、足の怪我のお礼にしてもやりすぎというか。」
茅野は首を傾げながらうーんと言いつつ答えた。
「そうですね。確かにやり過ぎかもしれないですね。でもあの日のお礼以外は何も無いですよ。それにお互いの利益が合致しただけなので。」
そう言う茅野の顔は少し影を落としていた。何となく楓は何かありそうだと思ったがあえて踏み込まなかった。
「そうか、俺としてはご飯が食べれるのならこのくらいの労力は苦にもならないからな。それに茅野がしたいようにすればいい。変なこと聞いて悪かったな。」
「いえ、そんな。こちらこそわがまま聞いてくれたり、話し相手になってくれてありがとうございます。」
そんな話をしていると丁度家の前まで来ていた。
「では、また昨日と同じ時間にうちに来てください。」
「わかった。よろしく頼む。」
そう言い残しお互い家に戻って行った。