第1章 04 晩ご飯を共に
茅野と話した日から一週間が経った。あれからマンションですれ違うこともなく、GW『ゴールデンウィーク』まであと二日に迫っていた。楓は、GWに何をするか考えながら教室に向かう。
「おはよう、楓。GW何して遊ぶか考えてたでしょ?」
教室に入ると快が話しかけてきた。
「ん?ああ。今年のGWは4連休だからな。何しようか考えてはいた。」
「じゃあ俺もサッカー部が休みの日があるから、夏服でも買いに行かない?」
一人暮らしをしたばかりで何かと不足しているものがある楓は、良い機会だと思い誘いを受けた。
「ん、丁度良い機会だし行こうか。」
快は楓が誘いを受けるとは思っていなかったのか意外そうな顔をしていた。
「駅前の大型デパートにしよう。楽しみにしてるよ。」
目的を果たしたのか機嫌良さそうに席に着いて行った。
「はーい、席につけ、ホームルームするぞ〜」
高橋先生のホームルームが始まり、気づけば1日が過ぎていった。
放課後
楓は、夕飯のお弁当を買いにスーパーへ直行した。特に最近は自炊をしようとする考えはあまりなく、健康食や栄養価が高い飲むゼリーなどを好んでる。そのため買い物はいつも30分もかからないくらいで済んでいる。そんな中、今日は珍しくお肉が食べたかったので、安価な鶏肉を見ていた。
(どれにしようか。唐揚げにするか。いや揚げるのめんどくさいしな。出来たものでいいか。)
なんて考えていると、茅野が片栗粉が、2つで半額になっているコーナーで悩んでいるのを見つけた。
「どうしたんだ?茅野も自炊か?」
楓は、自炊をする気はないのだが、気恥しさから自分は自炊をするような言い方をしてしまった。
「柊さん、お久しぶりです。実は片栗粉が2つで半額なんで唐揚げにでもしようと思ったのですが、私だけで唐揚げだとどうしても余ってしまうので悩んでいたんです。」
女の子が一人暮らしで唐揚げは確かに作る量を考えても余ってしまうだろう。
そんなことを考えていると
「そうだ。良かったら一緒に食べませんか?」
名案だと閃いた顔でこちらを見てきた。
確かに、唐揚げを買おうとしていた楓であったがまさか、出来たてを頂けるとは思っていなかったので、お互いに少しの沈黙が流れた。
「あの、すみません。急に変なこと言って。忘れてください。」
そそくさとその場から離れようとした茅野だった。
「ああ、悪い。まさかそんなことを言われるとは思ってもなかった。茅野が良ければこちらとしては喜んで頂くよ。」
楓は、実際にその言葉がちゃんと伝わっているかどうか分からないくらいに衝撃を受けていたが何とか言葉には出来た。
「そ、そうですか。では唐揚げにしましょう。せっかくですし他に何か食べたいものとかありますか?この前の怪我のお礼です。」
料理に自信があるのか、少し得意げに聞いてきた。その顔はやる気に満ちていて身長差があるからか少し上目遣いになっている。
「う、うん。そうだな。唐揚げがあるなら味噌汁とかでいいと思うけど、俺はそこまで料理が得意じゃ無いからな。食べたいものがパッとは出てこない。参考にならなくてごめん。」
言っていることは事実であったが、誘われたことに未だに動揺していてそれどころではないので基本的に茅野に、任せることにした。
「なるほど。ではお味噌汁と唐揚げとサラダにしましょう。ちなみに柊さんは、唐揚げに何かかけますか?ご参考までに教えてください。」
「そうだな。マヨネーズとかレモンとか普段使うトッピングはこんなものだな。あ、でもピリ辛なものも好きだな。」
ご飯のアイデアが出せない分、味については言えることは伝えた。
「わかりました。では、ラー油とネギでどうでしょうか?」
「いいな。とても美味しそうだ。」
そんな話をしながら買い物を終えレジを抜けた。
「さすがにご飯を食べさせてもらうんだ。荷物くらいは持たせてくれ。あと、お金はこっちが出すから。」
「いえいえ、私のわがままで付き合わせてしまったので、大丈夫ですよ。荷物も軽いので大丈夫です。」
そんなことを言われてしまったが流石に女の子に荷物を持たせるのもどうかと思ったので、楓は花柄のエコバッグを取った。
「むぅ、意外に強情ですね。でもありがとうございます。助かります。お金は折半でお願いします。」
茅野は、童顔なこともあり少し幼さが残る顔で笑っていた。
「わかったよ。それじゃ帰るか。」
楓は、茅野とカゴを片付けスーパーを出ていった。
早めに更新できるように頑張ります。