第1章 25 夜を共に
今日一日、双葉が泊まることになった。
(はぁ…にしても昼間は疲れた。カフェインで酔ってたにしてもなぁ。理性が働いてくれて良かった。)
自分のことをほめながら湯船に浸かっている楓は、しみじみと双葉との距離感について考えていた。というのも晩御飯まではまだ時間があったので先にお風呂に入ってしまおうとなり、双葉は自分の家に1度帰ることになった訳だが、やっと一人の時間ができたことで楓は、抱きつかれた瞬間がフラッシュバックしていた。
(人との距離感がな…最近はあいつの方から何かと来ることが増えたな。)
最近の双葉の行動を振り返り、それが少しづつ楓の中の双葉との関係の変化に気づいていた。
(俺はどうしたいんだろうな。このままの関係で良いのか、でも他の関係って何だ。ただご飯を食べる関係だったのが休日を2人で過ごすようになってから何となく触れ合う頻度も増えて…)
楓は、深めのため息を付き、自分がこれからどうしたいのか迷っていた。
(そもそも俺は双葉のことが好きなのか。いや、良くないな。こういうのは考えるタイプじゃないし。)
考えるのをやめて、さっさと風呂を出た。
お風呂から出て、リビングでゆっくりしていると玄関が開いた音がした。
「お、お邪魔します。」
そう言いながらリビングに来た双葉は、シルク生地のパジャマを着ており、お風呂から出たばかりなのかシャンプーの香りがした。
「とりあえず、ご飯作るね。」
せっせとエプロンを着てリビングに立つとひき肉などを取り出した。
「手伝うよ。」そう一言だけ一緒に晩御飯を作った。
今日はハンバーグらしく、肉を一緒にこねていると双葉が隣に来てこちらを見上げる形で話しかけてきた。
「今日はありがとうございました。最近は特に楓くんに助けて貰ってばかりです。」
「お互い様だろう。風邪もそうだし勉学も見てもらうこと多かったしな。、」
「そうですかね。今日のことはまた後日お礼させてください。」
双葉は真面目そうに言ってきた。
「大丈夫だよ。お礼なんてされたら俺はいくつもお礼しなきゃいけなくなるしな」
楓は苦笑いをした。
「そうですか?まぁ、確かにいちいちお礼するのも大変ですね。ではまたどこか行きませんか?
最近は、学校のこともあって中々出かけられなかったから。本当は少し行きたいところあって。」
「ん?いいぞ?俺も8月に実家に帰るからその前に出かけたいとは思ってたし。
それに髪も切らなきゃな。前髪が目にかかりそうになっているのがさすがに目障りになってきた」
「確かに長くなりましたね。そろそろご飯できるので、またご飯終わったらこの続きお話しましょ?」
双葉ははにかみながら楽しそうに料理をした。
ハンバーグを食べ終わると、双葉から早速と言った感じでスマホにURLが送られてきた。
「ん?ここに行きたいのか?」
送られてきたURLを開いてみると双葉がよくメッセージに送ってくるクマのテーマパークであった。
「その…夏だけそのクマの浴衣着てるぬいぐるみがあってですね。それが欲しくて。」
こちらの顔を伺っているのか低姿勢な態度でいる双葉に楓は二つ返事した。
「いいぞ。こういうテーマパークは行ったことないからあんまり頼りにならないからそこだけ頼むけど。」
楓からOKが出るとは思っていなかったのか双葉は、目を丸くした。
「い、いいんですか?ほんとに?」
こちらに詰め寄ってきた双葉に楓は体を後ろに反りながら答えた。
「あ、ああ。さっきも言ったろ。
どこか出かけようとは思ってたって。」
「じゃ、じゃあ予定決めよ?えっと27日とかどうかな。」
「分かった。じゃあ27日に行こうか。」
「うん!」
嬉しそうな双葉をみて楓は笑みをこぼした。
「んじゃ、そろそろ寝るか。」
会話をしていたら時刻は22時過ぎになっていた。
「わかった。えっと一緒の部屋?」
「なわけあるか。おれはリビングだ。
はぁ…付き合ってもない男女が一緒の部屋で寝るか?てか、同性でも俺は嫌だぞ」
呆れながら速攻ツッコミを入れた。
「むぅ。付き合ったら一緒に寝てくれるんですか?」
「何が言いたい。俺は、」
楓が話を誤魔化そうとするとすかさず双葉が 口撃 してきた。
「じゃあ私はまだ楓くんと話し足りないので部屋でお話しよ?」
「また明日話すから。今日はもう寝よう。」
「わかったぁ…」
とぼとぼと楓の部屋に帰っていった双葉を見て少し後ろ髪を引かれたが耐えた。
深夜にエアコンのせいか、喉が乾き起きると双葉もリビングで飲み物を飲んでいた。
「うるさかったですか?ごめん起こしちゃって。」
「いや、エアコンのせいか喉がかわいてな。たまたま起きただけだ。」
「もう、2時半か」
ソファに座り直し、時計を見ると4時間も寝ていた。
「なんか、早くに寝て深夜に起きるとまだ寝れるからか長く寝れる気がして得した気分になりませんか?」
「なんか分かる。」
そんな話をしていながら、暗い部屋でソフトに楓が座ると隣に双葉が座ってきた。
「部屋に戻らないのか?」
「んー、もすこし。文句とかじゃないんだけど、知らない部屋に一人でいるの慣れないんだよ?」
肩にもたれかかってきた双葉からまだシャンプーの匂いが残っていた。
「それは悪かったな。」
「んーん。家に帰ってもエアコン壊れちゃってるし感謝しかないんですけどね。楓くんは、私の事ちゃんと見てくれるし細かい事にも気が配れて毎回助けてくれるから何となく頼っちゃうんです。」
「晩御飯の時も話したけどお互い様だよ。俺も双葉には助けられてるし。主にご飯で。真っ直ぐ生きてる双葉を見てると手が抜けなくなる。」
「へへ。そうかなぁ。じゃあ頑張ってる私にご褒美ください。」
「できる範囲なら。」
そう短く告げると手を握りしめられ、楓にもたれかかった。
そのまましばらく2人は無言でいた。
「それじゃ寝るね。また明日。」
「あ、ああ。」
足早に帰っていく双葉を見送ると、楓はまだドキドキしている自分の心臓に手を当て深呼吸してした。
勤めて冷静にしていたがそんな事とは裏腹に楓は顔を真っ赤にし、寝ようとすぐに横になるがあまり眠れずそのまま
朝を迎えた。




