第1章 23 夏休み前
熱が治ってから2週間が経ち、相変わらず双葉と楓の関係は変わっておらず普段通りの生活をしていた。たまに2人で帰る事もあったが下校を共にするのは日常化されたのか興味を示す者はいなくなった。
「聞いてますか?楓くん?」
学校から帰宅し楓の家で二人で話していると双葉が、楓の額に手を添えた。
「あ、ああ。悪い、ボーっとしていた。」
「体調不良ではなさそうですけど、もうすぐ夏ですしね。熱中症には気をつけてくださいね?」
「いや、違うよ。あと1週間もすれば夏休みだなって思ってな。」
楓がぼーっとしていたのは実家に帰る件についてだ。母親から「もしあれだったら双葉ちゃんも連れてきてもいいわよ〜」と連れてこいと言わんばかりのメッセージが来ていた。
「そうだね。夏休みかぁ〜。」
「双葉はどこか行くのか?」
楓は、それとなく双葉の予定を聞いてみる。
「んーん。基本は家にいるよ?一応クラスの人たちの連絡は来てるけど海だからね…」
「海苦手なのか?」
意外だなと楓は驚いた。
「んーん。苦手な訳では無いんだけどその親しい友人も海には行かないらしいので私だけ行くというのも心細いと感じまして。」
双葉は気まずそうな顔をしながら事情を説明した。
「あっ、でもせっかくの夏休みですしどこか遠くへ行ってもみたいですけどね。」
「なら、うちに来ないか?と言っても母親がお盆に祖母の家に帰れないらしくて県をまたぐ移動になるんだけど。よければ…」
「「……」」すこしの沈黙が二人の間を駆け抜けた。
「い、いや、無かったことにしてくれ。」
タイミングを完全に間違えたと後悔した楓はいたたまれなくなった所で双葉から思わぬ返事が来た。
「一緒に居ていいんですか?行きたいです。」
目をキラキラしながら嬉しそうにしていた。
「そ、そうか。良かったよ。ならそう連絡しておく。」
楓は、胸をなでおろし、ここ数年なかった変な緊張感が抜けどっと疲れた。
「うん!いつ行くの?」
予定をカレンダーにメモしておくつもりなのかスマホを片手に聞いてきた。
「夏休みが確か7月20日くらいからだったはずだから、8月の頭くらいに3日4日くらい?泊まりで行こうかなって思ってるけど。どう?」
「わかった!じゃあ空けておくね。」
そんな話をして数日後夏休み前、最後の学校に登校した。
「はよー。快」
教室のドアを開けるとすぐ目の前に快が居た。
「おはよう。暑そうだね、髪長いと熱気こもりやすいしそろそろ切れば?」
今の楓の髪は、無造作に伸び散らかしている感じだ。
「たしかになー。もう、4ヶ月は切ってないしな。そろそろ切るか。暑い…」
席に座ると前髪を上げ、少しでも熱気を逃がそうとノートで扇いだ。
「そういえば明日から夏休みだけどどこかいくの?」
「ああ。1度実家に帰るつもりではいるけどそれ以外は普段通りだな。」
教室のクーラーがまだ、ちゃんと効いておらず第二ボタンを外しながら問に答えた。
「そうなんだ。真由美さん元気?」
「まぁ、元気だな。快にも会いたがってたぞ。快の事は俺から適当に伝えておくよ。」
「元気そうなら良かったよ。僕も部活ある夏休みなんて特にオフの日もないから厳しいね。まぁ何かあったら連絡してよ。」
快と軽いノリをしつつ会話をしていると
高橋先生が教室に入ってきたので適当にホームルームを受けた。
「え〜、明日から夏休みではあるが羽目を外しすぎないように……なんて言うつもりもないので、まぁ特に問題を起こすような奴はいないと思っているので楽しいことやりたい事全部やってこい!」
周りからは歓声のような声が上がった。
「ただ、今日はまだ学校あるのでいつも通り受けてくれー。特に後ろの席の神崎とかな。騒ぎたい気持ちもわかるが明日からにしてくれー。」
「あいよ〜、健ちゃん」
神崎は、気の良さそうな雰囲気を出しつつ担任と仲良さそうに話していると一限目のチャイムがなった。
そのまま時が過ぎるのを楓は待ちつつ心の内は、長い休暇に心踊っていた。
(高校生になってから初めての夏休みか。いつも通りダラダラと過ごしていきたいな)
なんてやる気のない堕落した生活を送ろうと燃えていた。
こうして夏休み前、最後の学校が終わり夏休みに突入した。




