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Palette  作者: ししゃも
22/30

第1章 22 知らぬ間のバースデー


それから数日、ストレスから開放されたのか気が抜けたのか楓は風邪を引いたのであった。


ピピッと音が鳴ると体温計は37.8度を指していた。

(はぁ…だるいなって思ったら風邪か)

楓は、快に欠席すると学校に伝えてくれとメッセージを送りそのままベッドへ倒れ込んだ。


しばらく寝ていると額に冷たいものが置かれたのを感じた。目を開けると上から覗き込む双葉が居た。


「なにしてるんだ?」

寝起きのしゃがれた声で双葉に聞く。


「起きましたか、えっと食欲ありますか?お粥作ったので良かったらどうぞ。」

お粥を取りに行こうとする双葉を楓は止めた。


「食欲はあるけどその前に双葉、学校は?」

時計を見ると午前10時を指していた。


「私も休んじゃいました。本田さんから連絡を貰って。」


「さすがに行っても大丈夫だぞ?単に風邪ってだけだ。」

(快のやつ変な気を遣いやがって。)

楓は快に余計な事を言わないように釘を刺すと決めた。


「それでもです。それにしたくてしてるので気にしないで下さい。」


「迷惑がける。ゔぅん、ごめん。」

痰が絡み咳払いをしながら謝罪した。


「じゃあご飯持ってくるのでその間に汗拭いていてね。」

蒸されたタオルを渡して部屋を出ていった。


汗を拭き終わると、ちょうどドアがノックされた。

「もう入っても大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫だ。」

返事をすると、双葉が鍋を持って入ってきた。


「良かったらどうぞ。シンプルな味付けなのできっと食べれます。あ、残しても大丈夫ですからね。少しでも胃に入れておくことが大切です。」

双葉は鍋を置くと、小皿にお粥をよそって渡してきた。


「あ、食べれますか?食べさせた方がいいですか?」

他意の無さそうな真剣な表情で聞いてきた。


「流石に1人でも大丈夫だ。」

お粥を1口食べると程よい塩味が効いていて朝から何も食べていない胃に全て納まった。


「これだけ食べれれば平気だね。良かったです。」

双葉は安心したのか、ほっと胸をなでおろした。


「うん、美味かった。お粥までありがとう。」


「楓くんの好みの味で良かった。食べ終わったら、また横になって今日は安静にね?」

そう言いながら額の汗を拭かれた。


「それくらい自分でやるよ。俺ももう17になるんだし?」


「ん?そろそろ誕生日なの?初耳ですね〜」

楓の頬を軽くつまみながら「なんで教えてくれなかったのー?」とジト目で詰め寄ってきた。


「言う必要が無いと思ったんだよ。変に気を使わせたくないし。だから今の発言は失言だったと思ったよ、悪い。忘れてくれ」


「んー、一緒にお祝いできた方がいいじゃないですか。楓くんにはお世話になっていますし。」

双葉は、首を傾げながらお世話になっているのに誕生日は祝わないというのは変だと思うという結論に至ったらしい。


「それで、いつなんですか?誕生日。もう言ってしまいましたし、ここまで来たら言ってしまいましょう?」

風邪が移るかもしれないというのに双葉はジリジリと楓に詰め寄ってきた。


「とりあえず、離れないか?風邪が移る。」


「いえ、言ってくれるまでここから離れません。」

意外に頑固な双葉の態度に風邪もあってか説得を早々に諦めた。

「はぁ……今日だよ。」


「き、今日?なんで早く教えてくれなかったんですか。どうしましょうか。ん〜…」

双葉は、流石に今日だとは思っていなかったのか急に悩み出した。


(こんなに感情が出ている双葉は見たこと無いな。なんか新鮮。)なんて思っていると、お腹も膨れて楓は、眠くなってきていた。


「とりあえず、俺は横になるからさ、また後ででいいか?」


「あ、分かりました。ごめんなさい、気を遣えなくて。それでは1度帰宅しますので何かあれば連絡してくださいね。」

そう言い残し、双葉はお粥の鍋を持って帰った。

(にしても失言だったな。起きた時にまた対処しよう。)

楓は眠りについた。


楓が眠りについてしばらくするとチクタクという時計の小刻みな音が聞こえた。

その音で目を覚ますと、午後17時になっていた。


(結構寝たな。)と軽く伸びをすると、頭痛は変わらずするものの、体の調子は幾分かマシになっていた。気怠い体を起こし熱を測ると37.0度となっていた。

そのままリビングへ飲み物を取りに行くと、経口補水液やゼリーなどが入っている袋が冷蔵庫に入っていた。


「双葉からか?後で連絡してみるか」

そんなことを思いながら、スマホで連絡を取る。


「体調は幾分かマシになった。ゼリーとか双葉が持ってきたのか?ありがとう。助かる。」素直にお礼を送ると直ぐに返信が来た。


「起きたんですね。体調良くなってきて良かったです。その袋は本田さんからです。楓くん家のドアノブにメッセージと一緒にかけてあったので入れておきました。今ご飯の支度しているので後で持っていきますね。」


とりあえず快にスマホでお礼を送っておいた。

すると電話がかかってきた。

「お、お寝坊さん起きた?さっき来たのにインターホンに出てくれなくて悲しかったよー」とからかいながら電話をしてきた。


「悪かったな。気づかなかった。」


「体調はどうよ。明日もさすがに休むでしょ?」


「ああ、そうする。というか快はなんで双葉の連絡先知ってるんだ?」


「なんだい?嫉妬か?安心して、学校の連絡先の家にかけただけ。何も無いよ。」

電話越しでもヘラヘラしてそうな快が想像できた。


「いや、嫉妬というわけではなくて迷惑を快にも双葉にもかけたから気になっただけだ。」


「そっか。んじゃ安静にね。まだ家じゃないからさっさと帰るわ。」

電車のホームにいるのかアナウンスが鳴った。


「分かった。ありがとうな。」

楓は電話を切ると何故か楓は安心した。

確かに少しだけ双葉と快が連絡を取りあっているのか気になっていること、そして連絡を取りあっていないことに自分の中のモヤモヤしたものが晴れた気がした。


よく分からずそのままシャワーを浴びて軽く部屋の換気をして考えていると玄関が開いた音がした。


玄関へ行くとマスクをしている双葉が、グラタン皿を耐熱の包みに入れたバッグを持ってきてくれた。


「悪いな、風邪に付き合わせてしまって。」


「んーん、いいの。

私も色々と助けてもらったもん。」

双葉は、気にしてないと微笑みながら楓に伝えた。


「それじゃこれ食べれる?食欲はあるよね?朝もお粥全部食べれたもんね。」

そう言いながら、リビングへ行きグラタンとスプーンを2つテーブルに置かれた。


「双葉もここで食べるのか?移るかもしれないし今日は別にした方がいいと」まで言うと双葉は頬をふくらませた。

「そんな訳には行かないもんね!誕生日だもん。一緒に居る。」


「そ、そうか。でも…うん。分かった」

腕を組み頬を膨らませている双葉を見て楓は折れた。


「分かればいいんです。」

ふふん。とご機嫌な様子の双葉とグラタンを食べた。

食べ終わると双葉が、バッグから何かを取りだした。


「あ、あとこれ。今日急いで作ったから好みの味では無いかもしれないけど」

中から少し大きめのチョコマフィンが4つも入っていた。


「おおおお…美味そうだな。これいいの?」

楓は、久しぶりの甘いものに目を輝かせた。というよりも反射的に渡されたマフィンを受け取ってしまった。


「そんなに焦らなくても楓くんのですよ。ふたつは甘くして、もうふたつはビターにしました。」


「助かるよ。すごい嬉しい反面、急に作ってもらって申し訳ないという気持ちがすごい。」


「ほんとですよ〜、次はちゃんと何かあるとき言ってくださいね?これも隠し事無しです。」


「ああ、ありがとう。」そう言いながら、マフィンを食べようとしたが一人で食べるのも勿体ないとマフィンを1つ双葉に渡した。


「え、いいんですか?実は味見程度にしか食べてなかったのでちゃんと食べてみたかったんですよね。」

双葉、おずおずとマフィンを受けとり、最初は美味しいと感想を言っていたが途中から2人ともマフィンに夢中になり4つ全てのマフィンを分けて食べてしまった。


「うん。美味しかった。さすがに風邪をひいてるからここら辺で解散するか。また今度このお礼はする。だから誕生日教えて?」

楓はやり返してやろうと目が笑っていない笑顔を振りまいた。


「……まぁそうなりますよね。誕生日ですか。8月20日です。でも何もしなくて大丈夫ですので、あんまり気にしないでください。」


「ほぉ?自分はしたのにされたくは無いとそんな話を呑むと思っているのか?」

楓はさらに悪い顔になりつつ双葉を追い詰めた。


「じ、じゃあ帰るので!ご馳走様でした!」

双葉は、逃げるように帰って行った。

(8月か覚えておくか。)

スマホのカレンダーに双葉の誕生日を入れた後スマホをいじりながら安静にするため早めに寝た。

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