表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想生物(モンスター)と恐竜、どっちが強い? 近代兵器を持ち込めないダンジョンで、恐竜を使役してモンスターを狩る話  作者: たけや屋
第1話 ティラノサウルス対ゴールデンゴルゴーン——人生を売っても買えないもの
1/82

ティラノサウルス対ワイバーン

 木々が鬱蒼うっそうと生い茂る富士の樹海も、巨獣によって切り開かれたら道ができる。魔界の帝王が遊び半分で木々を引き抜き、薙ぎ倒した跡地だといわれている通称ドラゴンズ大通り(アベニュー)


 そこで2体の怪物がにらみ合っていた。両者はどちらも『相手より強い』と思っているのか、獰猛なうなり声を発している。


 現代に蘇った恐竜・ティラノサウルス。全長15メートル。

 魔界に住まう幻想生物モンスター・ワイバーン。全長10メートル弱。


 体格から見て、打撃力はティラノサウルスの方が上だ。しかし機動力は翼竜ともいわれるワイバーンが勝る。

 魔界は地上の常識が通用しない。そんなモンスターに上空から襲われては地球最強のティラノサウルスでも危険だ。獲物を追い詰めても、空を飛んで逃げられてしまうかもしれない。


 そこを補助するのが魔界探索士であるともえ梨丸なしまるの仕事である。少年は茂みの中に身を隠しながら、音がしないよう慎重に弓矢を構えた。やじりはサメの牙。矢の後端にはロープが結びつけられている。


 茶色のティラノサウルスと、スカイブルーのワイバーン。双方の体表に筋肉が膨れ上がっている。もはや一触即発だ。


 梨丸は矢を放つ。それは狙い通りワイバーンの翼の膜を貫通した。

 翼竜は反射的に身をよじった。しかしロープが絡みついて簡単には外せない。モンスターのパワーをもってすれば、携行用のロープなど一瞬で引き千切られてしまうだろう。固定先の木すら引き倒されてしまうかもしれない。


 だがそれでいい。完全に動きを止める必要はない。余計なことに力を使わせ、わずかばかりの時間稼ぎができればいいのだ。

 飛び道具でモンスターの動きを鈍らせるまでが人間の仕事。あとは恐竜の仕事だ。


 すぐにワイバーンがロープを噛み千切ったが、もう遅い。ティラノサウルスは獲物を捕食する寸前だった。


GRRRRAA(グルルルルアア)!」

 10トン近い超重量が突進し、魔界の大地を激しく振動させる。そして凶悪な牙が翼竜の首を一撃で噛み砕いた。


 冥土のみやげも思わせぶりな遺言も無い。恐竜の戦いはただ殺して終わりだ。

 梨丸は周囲の安全を確認すると、茂みから出た。


「よし! よくやったネック!」

 いたわりの気持ちを込めて恐竜あいぼうの身体を撫でてやる。ティラノサウルスは仕留めたばかりの獲物を食べていた。その名の由来である好物の首肉ネックを。


 獲物が完全な形であればあるほど高値で売れるが、功労者に文句は言えない。この鮮やかなスカイブルーのワイバーンを売れば当分は食うに困らないだろう。

 しかし高収入な魔界探索士とはいえ無駄な贅沢は厳禁だ。なにしろ恐竜は高級スポーツカーよりも競走馬のサラブレッドよりも維持費しょくひがかかるのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ