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親愛なる森山へ。
これは、僕からの助言であり、愛だっだ。
「嫁に、来てもいいんだけど」
僕がそう口走ると、森山はバツが悪そうに、目線をそらした。
恋人と暮らして5年になる彼女たちの関係は、はっきり言って、うまくいってはいないと思う。
仕事ばかり熱心にしている彼女の恋人よりも、僕が森山を幸せにできるのだと確信していた。
「少し、考えてあげる。新潟に帰るのはいつ?」
さっきの態度からは想像のつかない発言に動揺した。
それを隠しながら、
「2か月後かな。ひいばあちゃんが誕生日だから、その時にでも」
「わかった」
ニッと笑う彼女に、少しでも期待をしてしまう僕は、愚かだろうか。
彼女はよそ見なぞせず、このまま恋人と暮らすべきだ、あきらめるべきだと願っている自分と、彼女を自分のものにしたいと強く想う自分とが葛藤を繰り返してきた。
否、今も繰り返している。
僕は、彼女を手にいてることが本当の愛だと、
彼女を鳥籠からにがしてあげることが本当の愛だと思っていた。