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第9話 姉の帰省

今回は沙枝視点です。

暑い日差しが窓から差し込む、夏の昼下がり。

こんな暑い日は引きこもるに限る!


「はー面白かったわ〜」


家の誰もいないリビングでエアコンをガンガン効かせながら、気になっていた映画を見たらほんま面白くて最高やった。


「やっぱこの監督の作品、ハズレ無しじゃ」


自分では気づかんった点を知りたくて、映画のレビューを検索した。


「どれどれ……えっと、ストーリーは面白かったですが、戦国時代が舞台なのにポテトサラダを食べる描写があった点が気になりました、じゃがいもは江戸時代以降日本に渡ってきたものなので今作に登場するのはおかしいと思います」


たしかに秀吉じゃがいも食っとった!


「ま……まあストーリーがおもろかったけん細かい描写は気にせん!

えーっと次のレビューは、誰々くんの演技がかっこよくてキュンとした……

あー俳優ファンかいな、さて次……」


その時、玄関からドアが開く音が聞こえた。


「ただいま〜」


どうやら私は映画に夢中で車の音に気づかんかったみたいじゃ。電気自動車はこういうとこ嫌やな。


玄関の人影は、私を見るなり口を開く。


「あれ?沙枝ったらまだパジャマのままなの?」

「夏休みやけん」

「夏休みだからってこんなクーラー効かせた部屋に引きこもってたら体に悪いわよ。お姉ちゃん心配だわ」

「今日最高気温37度やけん、外出るほうが体に悪いわ。もしそれで倒れたらどうするん」

「その時は看護学生として私が看病するわ。そうそうさっきも通りすがりの高校生くらいの男の子を助けてね〜オンラインサロン勧めたのよ」

()うか」


スマホとテレビの接続を解除し、チャンネルを地デジに戻す。

お姉ちゃんに背を向けて、自室に戻ろうとするとまたお姉ちゃんが話しかけてきた。


「沙枝、また髪伸びたんじゃない?いい加減ヘアドネーションすればいいのに」

「そういうん興味無いわ」


そう言い残して自室に続く階段を上る。

揺れた長い髪の毛先が脚をチクチクと刺す。

やっぱりお姉ちゃんは苦手じゃ。



寿千枝ことぶきちえ、私の4つ上の姉。

子供の頃から努力家で、テストは毎回すごく勉強して平均点を取っとった。

努力家やし、みんなに優しかったけん、先生からの評価も良くて高校も大学も推薦入学。

ほやけど、横浜の大学に行ってお姉ちゃんは変わってしまった。

マルチ商法にハマって、ようけ(沢山)サプリメントを買わせようとしてくる。

セミナーの教えみたいなやつで、伊予弁を捨てた。家族に対しても標準語で話すようになった。

誰かと話しよる時に、どこか虚空を見てるような目になったお姉ちゃん。

私は()んなお姉ちゃんが嫌いになってしもた。


部屋に戻ってくると、冷房を消しとったせいで熱気がむわっと体を包む。

冷房をつけた後、踏まないように髪をかきあげもて(ながら)ベッドに横になる。


しばらくぼーっとしよったら部屋が涼しくなってきた。宿題しよ。




夕食の時間。


「今日は千枝のための、スペシャルサラダよぉ」

「やったー!お母さん大好き!」


大きな皿に盛り付けられた沢山の無農薬野菜。

野菜が苦手な私のことなんてお構い無し。

一口食べたピーマンは苦かった。


お母さんとお姉ちゃんは大学トークで盛り上がる。

私はひたすら苦い野菜を食べる。


「大学だけやなくバイトもサークルも頑張って……千枝はほんっま偉い子ねぇ」

「私なんて横浜の中ですらまだまだよ。横浜とか東京にはもっと凄い人が沢山いるから私もっと頑張りたいの。


そうだ、沙枝は高校で何か頑張ってることある?」

「…………何も思い浮かばん」


突然私に聞かれて、何も答えれんかった。


「部活は?」

「帰宅部」

「中学では吹奏楽部やってたのに、高校ではやらないの?」

「ブラックやったけん。もうやりたないわ」

「勿体ないな〜大変な環境でこそ成長できると私は思うけどな」


やっぱりお姉ちゃんは嫌いじゃ。

調味料で誤魔化しよるだけの苦いサラダを片っ端から口の中に放り込んで、皿が綺麗になったらすぐに自分の部屋に戻った。


これから夏休みの間毎日、こんな日々が続くと思うと嫌になる。


学校の友達は部活やら帰省やらで遊べんし、とりあえず明日もまた正樹くんの家に行こうかな。

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