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夢幻の書  作者: こばこ
122/129

第二部 第三章「忍ぶ者たち」⑤

「燕?」

 ロディは、よく分からないがどうせ何かあるんだろうという、極めて複雑な表情で首を傾げて見せた。

「燕がな、南から北へ渡る。その時に、手紙を届けてもらうのさ」

「鳩みたいにか。しかし、燕の文使いなんて聞いたことがないぜ」

「そういうことができるやつがいるだろ?」

 セディアの言に、ロディがシルヴィーを見た。

「へえ、そんなこともできるのか」

 と、静かに言った。今更何を聞いても驚かないという態度だった。

「確実ではありません。ですが、燕たちに行先を聞いて回り、王宮を目指すものがいれば、文を託すことができます」

「誰に届けるかも?」

「簡単な指示なら。ですが、確実ではありません。相手の方にも、うまく気付いていただかないといけませんし」

「それについては心配いらない」

 セディアが、静かに言った。

「勘のいいやつだ。上手く振舞ってくれると思う」

「受け取り人は、春日国の皇太子か」

「そう。ミカサに、協力を仰ぐ」


「だがお前は、まず南に行くと言っていなかったか。交換条件を出して、ウィンを王女の立場に戻す、と」

 ロディが、先日飯屋でセディアが話した内容を口にした。

「ああ。まず南に行く。でも、下準備としてはそれより先にすることがある」

「それが、春日国の皇太子に連絡を取ることか」

「そうだ」

「春日国は、すでにお前と協力関係にあるんじゃないのか」

「協力関係には、ある。だが、それは友人の延長のようなもので、軍を動かすとなれば話は別だ。列島統一の方針も含め、きちんと話したうえで、出兵を依頼する」

「軍を動かす?春日国の兵を頼みに、北ノ国の国軍と戦をするつもりか?」

「戦にしないための軍だ。現状、王都は一旦落ち着いている。俺の立場からすれば、落ち着いてしまっているとも言える。この状況下で、俺が正当の皇位を主張して帰国するには、相手方が、戦っても無駄だと思うくらいの権力を見せつけて戻るしかない。目に見える形で、兵力として示すんだ」

 セディアの言葉に、ロディは首を傾げる。

「戦をしないための大軍、という話には賛成だ。だが、問題が二点ある」

 ラスクがいたら、ロディの言葉にうんうんと頷きそうだなと、ウィンは思った。

「まず、春日国が列島統一に同意するかという問題だ。彼らにとってのうまみはなんだ。北ノ国まで出兵する見返りと、その担保を、どうやって示すんだ」

「それに答える前に、もうひとつの問題点について聞こう」

「春日国の兵力はたかがしれている。そもそも北ノ国に併呑されてから、牙を抜かれた軍だろう。まっとうな将軍もおらず、戦闘経験のある兵も少ない。そんな兵に、抑止力があるのか」

 セディアは、ロディの言い分を聞くと、俯いてくつくつと笑った。

「なんだよ」

「いや、さすがだよ」

 まだ顔に笑みを残したまま、セディアは顔を上げた。

「指摘の通りだ。その二つは、解決しなければならない課題だと、俺も思っている」


 そう言って、彼はミカサに提案するつもりである条件を告げた。


 一つ、列島統一ののちは、旧春日国地域についての統治の全権を春日国皇家に移譲する

 一つ、統一国家および旧北ノ国は、旧春日国の統治方法および文化政策について口出ししない

 一つ、旧国間の隊商の行き来については全面的に自由とし、税を課さない

 一つ、統一国家は列島全域に対して徴兵権を持つ

 以上、北ノ国皇太子の名をもって約す

 ついては、皇太子一行が王都に帰還する際は、春日国の兵一万を率いて同行すべし

 なお、友好の印として、春日国皇太子ミカサと北ノ国皇女フローラの婚姻を望む

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