009 異界からの来訪者(1)
「……よし、愚痴っていても仕方がない。とりあえず『異界からの来訪者』を攻略してみますか!」
気持ちの整理がついたのか、前向きな発言が出てきた。何だかんだで、楽しみにしている部分があることは、否定できない。
恭兵は、昔から『ファンタジーに、現代兵器』という設定が好きだ。幼い頃は、自衛隊が戦国時代にタイムスリップする映画にハマっていたし、最近だと、自衛隊が異世界に繋がる門を潜って、大暴れするアニメにハマっていた。その頃は、まさか自分が、異世界に転移するとは、夢にも思ってもいなかった。
さっそく、『異界からの来訪者』をACCのメニュー画面で選択。ミッション攻略を開始して、最初に実施することは、バディの選択だ。選択メニューに表示されているのは、先生と馬。恭兵は、潜入や殲滅作戦時は、先生、長距離移動は馬と使い分けていた。
今回は、先生を選択する。なにが起こるかわからない時に、先生がバディだと心強い。
さらに別枠で、他のプレイヤーキャラをレンタルして、連れて行けるのだが……。
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◆ヴァイス(ヘンテコ転移じゃない!( ・`ω・´)キリッ)
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レンタルキャラ一覧に表示されてのは、伝言板のみ。
「くッ! 人の名前を使って、話かけてくんなよ! 相変わらずの顔文字がイラつくな! 話しかけてくる時点で、ヘンテコ転移なんだよ!」
……さすがは、愉快犯だ。走り込めるスペースには、必ず飛び込んで、ゴールを狙う生粋のストライカーのようだ。
恭兵は、構うと喜ぶだけで、時間の無駄だと諦めて、伝言板をレンタルし、渋顔と先生の装備品を設定していく。
装備品は、メインウェポン・バックウェポン・セカンドウェポン・サポートウェポン・その他の六つに分類されている。
メインウェポン・バックウェポン・セカンドウェポンは、それぞれ一つの武器種が選択できる。
“メインウェポン”は、腰に装備する武器で、選択できる武器種は、アサラトライフル・ショットガン・グレネードランチャー。
”バックウェポン“は、背中に装備する武器で、選択できる武器種は、スナイパーライフル・マシンガン・ミサイル・シールド。
“セカンドウェポン”は、小さな武器で選択できる武器種は、ハンドガン・サブマシンガン。
“サポートウェポン”と“その他”は、選択した武器種ごとに、持ち込める量の設定がある。
“サポートウェポン”は、八つの武器種が選択できる。グレネードなどの投擲武器や地雷などの設置武器だ。
“その他”は、携行品・アーマー。携行品は、ステータス関係を上げる薬物、暗視装置などから八種類。アーマーは頭、体、手、足でそれぞれ装備品を選択できる。
これらは、いわゆるプレイヤーの装備だ。適用されるのは、渋顔と伝言板。バディである先生が、選択できる装備は、“スナイパーライフル”と“アーマー”だけだ。
渋顔たちの装備品の細かいことは、追々説明するとして、問題は伝言板の装備と能力だ。
恭兵は、愉快犯にイラついて、ちゃんと見ていないことに気付き、今更ながら、確認することにしたのだが……。
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メインウェポン :
バックウェポン :
セカンドウェポン:
サポートウェポン:
:アクスバーナ手斧38㎝
:カイバーBK2
その他 :リッジラインザック75
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「背負い袋は、“その他”になるか」
今までプレイしたGGFでは、見たこともない装備品。恭兵が武器になりそうだと思ったキャンプギアだ。つまり、伝言板には、異世界にいた時の恭兵の装備品が反映されている事になる。
そうなると気になるのは、能力だ。この装備だと、近接系の能力が欲しいところだが……。
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木工:D
鍛冶:C
料理:D
帰還pt:0/100
特殊スキル:ヴェルトヴィラ Lv1(1/5)
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近接系の能力どころか、攻撃系能力すら、一つもない。ごく普通の一般人である恭兵が、反映されているのだから当たり前だ。
気になるのは、【帰還pt】だ。0/100ってことは、MAX100ってことなんだろうが、100になったら現実に戻れるということなのか? そもそも、能力なのか、特殊スキルなのかも分からない。能力なら、ランク表示があるはずだし、特殊スキルならレベル表示があるはずだ。色々と異質な項目で、今は分からないことだらけだ。
最後に、特殊スキル【ヴェルトヴィラ】は、恐らく、ドアを生やすスキルだろう。こちらには、ちゃんとレベル表記はある。だが、必要経験値が極端に少ない。こちらも、何か落とし穴がありそうだ。
伝言板のステータスは、恭兵のステータスが反映されている。装備品の内容から、それは間違いないだろう。もう一度、異世界に行くような事があれば、何か対策が必要だ。
「よし、設定完了だ。『異界からの来訪者』は、どんなミッションなんだろう? ゴブリン以外のモンスター出てこないかなぁ」
恭兵は、異世界転移後、初めてのミッション攻略に、少し浮かれていた。