表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/74

032 城塞都市潜入(8)

「まさか、あんなに説教されるなんてなぁ」 


 社会人になってから、正座なんて、法事の時くらいしかする機会がない。想像以上に足がしびれた。


渋顔(ハイラント)は、洋風な顔してるのに、中身は和風なんだよなぁ」


 説教をするときに、正座させるのは、日本独特な文化だろう。起源の中国ですら、正座文化はもう無い、なんて話もあるくらいだ。


渋顔(ハイラント)先生(シュティル)には、これからもお世話になる予定だし、朝食でも作って行きますか。胃袋を掴むのは、夫婦円満の秘訣ってくらい――」


(――夫婦?! えッ、私と先生(シュティル)は、夫婦になれるのでは?!)


 名誉挽回の為に、胃袋を掴む話から、まさかの展開。確かに、GGF(ゲーム)ではないから、夫婦になることは可能かもしれないが……。


「いい……素晴らしい発見ですよ!! それなら、異世界(向こう側)に骨を埋めても悔いは無い!」


 ……あぁ、また始まったようだ。顔が今までの中でもトップクラスにヤバい。鼻の穴の広がり具合から、これは、長くなりそうだ。


「むしろ、現在世界に戻るメリットあるのか?  リアル先生(シュティル)の美しさは、今までの人生で、見たことないレベルですよ! ハリウッド女優なんて相手ならないレベル! その上、あのスタイルに、あのファッション! エロテロリストなんて言葉は、先生(シュティル)の為にあるんじゃないですか?!」


 ……エロテロリストなんて言葉、久しぶりに聞いたよ。


「今まで愉快犯(なんか凄そうな存在)なんて呼んで、ごめんなさい。今日からは、仲人さん(なんか凄そうな存在)と呼ばせて頂きます。結婚式では、最高のスピーチお願いしますよ!」


 ……遂にどこのどなた(なんか凄そうな存在)か分からない存在を仲人にしちゃったよ。


「ッ結婚式!? ……不味い! 不味いぞ! 先生(シュティル)のウェディングドレス姿を直視出来る気がしない! 見ないなんて選択肢は無いのに、見れる気がしない!! その上、あのデレた笑顔なんて見せられたら…………あぁ、生きてて良かったよ」


 ……生きてる事に感謝するのは良いけど、今回の妄想は、とくに酷いな! ストレスか? ストレスなのか?!


「もうすぐイケメン(パツキン王子顔)になるわけだし、最高のカップルの誕生だな!!」


 ……それは無い。まだ期待していたのか。


「よし、熱々の朝食を未来の花嫁(シュティル)に届けるためには、先に防弾盾バリスティックシールド越しの射撃練習を終わらせてしまおう。待ってね! 未来の花嫁(シュティル)


 ……もう、好きにして下さい。





 ***





 一気に妄想から現実に戻ると、そこからの動きは速い。新しく手に入れたQBXー(ショートバレル化)97B(アサルトライフル)の射撃練習をするための標的を設置していた。


「まずは、防弾盾越しの射撃が可能かの検証からだな」


 試しに、防弾盾に空いている穴に銃口を差し入れる。すると、トンデモ現象(なんか凄い力)が発生して、固定された。


「どうやら、上手くいきそうだな」


 盾に付いている、のぞき窓からターゲットを見ると、スカウターが起動して、十字照準線が現れる親切設計で、その十字をターゲットに合わせて撃てば、ある程度は、狙い通りに当たる。


自宅(こちら側)でも、スカウターが起動するんだなぁ」


 思わぬ収穫に喜びながら、射撃を開始する。銃口が防弾盾に固定されているので、片手でも両手持ちのような感覚で撃つことが出来た。


 QBXー(ショートバレル化)97B(アサルトライフル)は、装弾数30発、予備弾倉は六本で、最大所持弾薬210発と、ハンドガンの約三倍所持出来る。また、5.56㎜NATO弾を装填しているため、威力も強くなっている。

 ハンドガンと違い、サイレンサーが付いていないため、敵に発見されてから、使用する予定だ。……できれば、出番が無いことを祈っている。 

 攻略サイトの情報によると、この銃は射程と集弾性能がイマイチらしい。しかし、命中精度は良いので、一発目は当たりやすいとの事。


「確かに、連射するとバラバラと着弾位置がズレるな。射程については、標的が近すぎて、よくわからない」


 能力(アビリティ)に射撃や精密狙撃などがあると、集弾性能や命中精度などに補正がかかるそうだ。


 しばらく、防弾盾越しの射撃練習を続けていた為、用意していた予備弾倉が半分程度になっていた。


「……さすがに、普通の射撃練習もしなきゃな」 


 防弾盾を外し、普通に撃ってみる。


「あれ? なんか変だな?」


 ……防弾盾を装備していた時より、難易度が高くなったように感じていた。連射してみたら、より着弾位置がズレる……。


「……なるほど、防弾盾が、銃架(銃を支える足)の代わりになっているのかも知れない。銃初心者の私には、防弾盾ありスタイルが合っているのかもな」


 恭兵は、防弾盾“有り”と“無し”の両方を今後も練習していくことにした。


「練習することで、能力(アビリティ)を修得出来るのかなぁ」


 GGF(ゲーム)では、能力(アビリティ)のレベルはミッションをクリアしていけば、上がったが、新しく修得することはなかった。

 しかし、今はGGF(ゲーム)ではない。練習を続けていれば、修得できるのかもしれない。剣術や格闘などは違い、射撃なら弾さえあれば、一人で練習できるため、検証しやすい。


「よし、背負いザックに入れてた予備弾倉を使い切るつもりで、練習しよう」


(Fランクくらいなら、すぐに修得出来るかもしれないからなぁ)


 そんな打算的な思いもありつつ、恭兵は、練習に励んでいった。





 ***





「さすがに、疲れたな……」


 背負い袋(ザック)の予備弾倉を撃ち切り、腕時計を見ると、『15:38:59』と表示されている。


「てか、もう十五時過ぎてるのか……。ちょっと練習に集中しすぎたな。朝食どころか、昼食も取ってない」


 不思議なもので、時計を見たことで、空腹感が襲ってくる。何か食べようと、部屋に戻ると、キッチンに大好物の弁当(バラエティ特盛り)が、鎮座している。


「今日は、頑張ったし、異世界(向こう側)に行くのは、明日でいいか……」


 恭兵は、未来の花嫁(シュティル)に、早く食事を届けたい思いもあるが、今日は、自宅(こちら側)で過ごす事にして、大好物の弁当(バラエティ特盛り)で、空腹を満たすことにした。


「さて、後は棚の移動だけだな」


 遅めの昼食を満喫したあとは、前回と同様に、棚や冷蔵庫を倉庫(アプローチ)に置いていった。


「流石に、これ以上は置けないか……」


 射撃練習用も兼ねているため、邪魔にならないように配置している。二部屋分の棚と冷蔵庫が、倉庫(アプローチ)の収納限界だ。


「ここからは、キャンプギアを厳選して、増やさないとなぁ」


 今後の厳選作業を思うと憂鬱な気持ちになりながら、腕時計を見ると『18:23:19』と表示されていた。


「少し早いが、お酒でも呑みながら、映画でも見ようかな。よし、アクション映画で、カッコイイ銃の構え方でも研究しますか!」


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ