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030 城塞都市潜入(6)

 GGF(ゲーム)を終了したのは、自宅(こちら側)の時間で十九時過ぎ。


「……寝るには、まだ早いなぁ。倉庫(アプローチ)に、棚を設置するか」


 まずは、部屋にあるアイアンラックを移動し、テントや寝袋、アウトドアウェアなどの異世界(向こう側)でも、需要がありそうな品や缶詰やお米、調味料、ガス缶などの消耗品を移動させていく。


 次に、冷蔵庫を移動させたのだが、独り暮らしにもかかわらず、部屋に合わせて、ファミリー向けの冷蔵庫を買っていた為、大変な作業だった。


「まさか、こんな事態になるとは、思っていなかったからなぁ」


 ずっしりと重い冷蔵庫をなんとか運び終えて、改めて倉庫(アプローチ)を見てみると、まだスペースに余裕があった。


「次回も同じように、増やせそうだな」


 みるみると増殖していくキャンプギアを見て

 、思わずニヤけてしまう。倉庫(アプローチ)一杯に広がるキャンプギアを想像すると、ニヤニヤが止まらない。


「……残念なのは、種類が増やせないことだなぁ」


 当たり前だが、恭兵が持っているキャンプギアは増やせても、新しいギアは、手に入らない。キャンプ沼にハマっている恭兵にとっては、痒いところに手が届かない感じだ。


 作業を終え、腕時計を見ると『21:06:07』と表示されいる。まだ、寝るには早い。恭兵は、アプローチの廊下を使って、射撃練習をする事にした。


「さて、どうしようか? とりあえず、標的が必要だよなぁ」


 早速、部屋に戻り、インターネットでダウンロードしたターゲットの絵を印刷し、部屋の隅に放置されたダーツの的に貼り付ける。


「よし、これなら、いくらでも増殖できるよな」


 作成した標的をアプローチの廊下の天井からガイロープを使って吊す。距離は短いが、銃に慣れるのには、十分な効果はあるだろう。


「何もせずに、本番に挑むよりはマシかな」


 まずは、狙って撃ってみる。


 ――パスッ


 貰った銃は、サイレンサー付きだ。実際のサイレンサーは、音が低くなるだけで、音自体は大きいなどと聞いた事があるが、GGF(ゲーム)上の架空銃だからか、音はまったく出ない。

 また、反動もほとんどない。片手でも撃てる程度の反動だ。この銃は、9㎜口径なので、実際の銃でも、反動が少ないのかもしれない。


 問題は、標的だ……。吊しただけではダメだった。弾が能った瞬間、大きく揺れて、二発目の難易度が跳ね上がる。

 そこで、標的の下部にガイロープを追加し、砂浜やアスファルトなどのペグが打てない地面に、タープを張る場合に使用する重りを準備し、結び着けた。


 ――パスッ


 全く揺れない訳ではないが、先程よりは、良くなった。だか、納得のいく出来ではない。


「……突っ張り棒で、支えるか」


 手摺壁(てすりかべ)と天井の間に、突っ張り棒を二本追加し、標的を固定する。万が一、外れても、ガイロープの保険もある。


 ――パスッ 


「うん、これなら大丈夫だ」


 納得のいく改善を終え、満足げな笑みを浮かべる。その後、麻酔銃の練習を続けていると、ふとある疑問が頭に浮かぶ。


「なぜ、防弾盾バリスティックシールド自宅(こちら側)に持って帰らなかったのか……」


 自分の間抜けな行動に、後悔しながら、射撃練習を続けた。





 ***





「ふぅ、大分、少なくなってきたなぁ」


 練習用の予備弾倉を見ると、残り僅かになっていた。腕時計をみると、『23:18:46』と表示されている。


「結構、集中して練習してたなぁ」


 銃は男のロマンだ。恭兵は、楽しそうな顔をして、一心不乱に練習に励んでいた。楽しい時間は、あっという間に過ぎるものだ。


「そろそろ異世界(向こう側)に、戻りますか」


 このまま自宅(こちら側)で、安全に寝ても良いのだが、異世界(向こう側)にリスクを背負ってでも、戻るメリットがある。

 自宅(こちら側)から、異世界(向こう側)に向かう場合は、六時間の開扉(かいひ)インターバルが無いのだ。


 異世界(向こう側)で寝るのはリスクがあるが、今回は、渋顔(ハイラント)がいる。余程の自体がなければ、大丈夫だ。


 それに対して、恭兵は、特殊スキル『ヴェルトヴィラ』は、恐らく、ドアを(くぐ)った回数がレベルアップの条件だと考えていた。


 特殊スキルは、次のレベルアップまでの必要経験が表記されている。普通なら、少なくともレベル1なら、(0/50)位はある。しかし、最初に表示されたのは(1/5)で、大分、少ない表示だった。


 そして現在は、『ヴェルトヴィラ Lv1(2/5)』と表示されている。恭兵自身が異世界(向こう側)に行くためにドアを(くぐ)った回数と同じだ。(くぐ)れば、(くぐ)るだけ、レベルアップに近付く可能性が高い。


 次の移動で、はっきりする。異世界(向こう側)の宿で寝るために、ドアを(くぐ)り、経験値が貯まれば、間違いない。 


「さて、今回持って行く荷造りをしようか」


 倉庫(アプローチ)のおかげで、前回みたいに、なんでもかんでも、持って行く必要はなくなった。最低六時間生き延びる事が、出来るだけの物資で良い。


 また、この特殊スキルの仕様だと、異世界(向こう側)で、自宅(こちら側)の品物を大量に売る事は難しいが、生活費を賄う位はできる。その分のストックが出来るだけでも、心に“ゆとり”が生まれる。


 前回は、先生(シュティル)に野営道具一式を渡して喜ばれた。


「今回は渋顔(ハイラント)にも、渡そうかな。うん、今回は移動時間が長いだろうし、きっと喜んでくれるだろう」


 装備品関係は渋顔(ハイラント)に“おねだり”すれば、また入手出来るので、予備として、“すべて”置いていく。


「次は、構想計画の装備品をまとめて、おねだりしようかね」


 恭兵は、異世界(向こう側)で寝たら、すぐに帰ってくるだろうからと、そんなに深く考えていなかった。


「よし、(ドア)(くぐ)って、異世界(向こう側)に行こうか!」


 この時までは、これまでにない程、期待に満ちた足取りで、ドアを(くぐ)って、異世界(向こう側)に移動したのだった…………。

 

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