028 城塞都市潜入(4)
恭兵は、活動拠点からの連絡を受けて、すぐに行動した。
「愉快犯も人が悪いですよ! こんなご褒美あるなら、先に教えて下さいよー!」
なぜか、ヒロイン救出イベントと決めつけているが、活動拠点は、“女性”とすら、言っていない。
欲望の力は偉大なのか、先程までクソゲー認定していたとは思えない軽快な雰囲気で、現場に駆け付けた。
「――あれか! ……相手は、禍獣じゃないのかッ!?」
映し出されたのは、一台の壊れた馬車を背に、抵抗を続ける人達と、それを取り囲む倍以上のニヤニヤした盗賊達だった。
思い出されるのは、あの光景……。
これは、GGFではない。“現実に起こりえる未来”だと、思い知ったはずだ。
「また、同じ過ちを繰り返すところだった……」
恭兵は、渋顔を操作して、スナイパーライフを構える。距離があり、夜のため、標的を視認しにくいが、照準補正手套の自動補正があるため、外すことはあり得ない。
画面がスコープ表示に切り替わる。あとは、単純作業だ。表示されるサークル内に標的を収めて、撃つ。
それだけで、次々と標的が倒れていく。盗賊達は、何が起こっているか分かっていない。先生も加わり、制圧速度は増していく。
十四名の盗賊達は、狩る側から狩られる側になっていたことにすら、気付く間もなく、倒れていった。
「ふぅ、何とか間に合ったな」
馬車の周りにいた人達は、キョロキョロと周りを見てはいるが、被害はなさそうだ。
「さて、私のヒロインはどちら様でしょうか? まだ馬車の中にいらっしゃるのでしょうか?」
先程まで、真面目な雰囲気で、取り組んでいたが、余裕が出てくると、残念な人間性が顔を見せる。
『……ラーベ1、こちらアルバトロ。どうやら上手く、救出できたようだな。これからどうする? こちらから接触をはかるのか?』
『いや、今は都市潜入が最優先だ。あちらは、我々を認識出来ていない。このまま、城塞都市に向かう』
「……おいおい渋顔よ、ヒロインイベントは? 待ちに待った、ヒロインイベントはよ?」
今回のミッションは、“目立たない”ことが、クリア条件に入っている。無駄に接触しないことが大事だ。渋顔の言うことは、正しい。
「…………勝手に近付いちゃおうかな? うん、いいよね! これぞ、GGFの醍醐味だよ。オープンワールドは、すべてが自由なのだよ! 決められシナリオをなんて、ぶち壊してやれ!!」
“現実に起こりえる未来”だと再確認した為、余計に、ヒロインイベントは、見逃せないらしい。欲望に目が眩むと、人は過ちを冒す。
恭兵は、スキップしそうな気持ちで、壊れた馬車に近くと、護衛と思われる人達が、揃って剣や槍などの武器を構え始める。
『――何者だ! そこで止まれ!!』
「あっ! ヤバい! そういえば、渋顔は、お話機能が、CQCしかないんだった……」
護衛に警告されたことで、無闇に近づき、首を切られそうになった過去を思い出す。同じ轍は踏まないように、その場で急停止する。
しかし、時既に遅し、事態はさらに悪化する。
『――ッ! こいつ! 人型の禍獣かッ!』
「ち、違いますよー!! ただ無口なだけですよー!! てか、喋らないってだけで、禍獣認定されちゃうの?!」
突然の禍獣認定に、慌てていると、先制攻撃とばかりに、矢が飛んできた。
それを合図に、先生の無慈悲な弾丸が護衛達を次々と葬っていく……。
先生に、慈悲など期待できない。……完全にこちらが、悪役だ。
「ごめん。安らかに眠って下さい。…………麻酔弾で。しかし、大惨事だな……」
眠っている護衛達をスカウターで、確認してみたが、『剣術:C』が一人、残りはDランクで、可も無く、不可も無くだった。
意外だったのは、盗賊達の能力だ。こちらも『双剣:C』が一人、残りはDランクだった。
「護衛と同じランクなのに、盗賊やる必要あるのか? それとも、盗賊を装った刺客だったりするのかね?」
少し、きな臭い感じを受けたが、全員、眠らせた今となっては、関係ない。
「これ、どうしようかね? 流石にこのまま、盗賊達と一緒に、放置はまずいよな」
このままだと、先に盗賊達が起きる可能性が高い。仕方がないので、盗賊達は、ワープコアで、活動拠点に回収していく。
「……どこかの刺客だったら、問題になるかなぁ」
幸い、コートのフードで顔を隠しているので、護衛達には、顔は見られていないはずだ。最悪、人さらいと思われても大丈夫だろう。相手は盗賊だ。
「この国の法律が、人権に厳しくなければ、許されますよね?!」
実際のところ、活動拠点に回収された人間が、その後どうなるのか分からない。仮に、GGFと同じならば、真人間に更生されて、活動拠点のスタッフとして、働く事になる。
(ある意味、活動拠点って、あの世だ……)
「…………よ、よし! 考えたら負けだ! 予定通り、城塞都市に向かおう!」
このまま放置して、周りに禍獣がい居ると、不味いので、護衛四人は、壊れた馬車に積み込んでいく。
「ふぅ、これで大丈夫だろう。さあ、急いで城塞都市に向かおう……」
この場を離れようとした時、壊れた馬車から、絵に描いた様な“金髪巻き髪ツインテール”のお嬢様とメイド喫茶にしか存在しない“THEメイド”風の女性が出てきた。
『――お、お待ちください。貴方が助けてくださったの――』
――ドサッ,ドサッ
…………先生の凶弾は、お嬢さまとメイドすら、まとめて葬ってしまった……。もちろん麻酔弾で。
「ど、どうしようかね。一応、スカウターで確認しようかね」
(決して、イヤらしい気持ちなど無いんですよ。ええ、リアルメイドをじっくり見たいなんて、やましい気持ちなんて、これっぽっちも無いんです。あんなトコやこんなトコを拡大したい訳じゃないんですよ! 本当ですよ!!…………スクショはオッケーですよね?)
「…………何だろうね。背中にイヤな汗をかいてきたな」
(こ、この悪寒には、覚えがあるな。先生をのぞきたいと願ったときに……)
「……止めておこう。次回異世界に行ったときに確実に撃たれる気がする」
恭兵は、お嬢さまとメイドさんには、何もせずに、丁寧に馬車に入れ、城塞都市に向かったのだった……。
自分で書いていて、言うのもなんですが、悪役令嬢登場まで、長かった。ようやく、出てきたのですが、本格的な活動はまだです。
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