巨乳?滅びましたが何か?
『巨乳』、そんな言葉がありました。
今なっては存在しない概念です。
西暦2030年代半ばくらいからでしょうか・・異常が起き始めたのです。
最初は、少しずつ。
しかし、徐々に徐々に、目立つ様になっていきました。
思春期の女子は、胸が膨らむ頃には、胸が張り、少し上下しただけで痛みが走るコトすらあります。
しかし、その症状が無くなっていったのです。
小学校高学年頃から、中学校2年生になる頃には完全に収まってしまいます。
すでにバストの成長期を終えた成人女性にだって、バストサイズの変動は起こります。
ダイエットでもしようものなら、痩せて欲しいウエスト周りよりも先に、バストサイズが目減りしていきます。
しかし、異変が観測されだした頃からでしょうか・・・。
ダイエットでサイズの変わったバストサイズが戻るコトは決して無かったのです。
ダイエットとは、自分のバストサイズとの永遠の別れを表すモノ、そうなっていきました。
そして西暦2040年代には、大きくともBカップ、大体の女性はAAAカップからAカップまでのサイズになってしまったのです。
それから数十年・・・2100年になりました。
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「おはよー」
「おはよっ♪」
「今日、盛ってんね!」
「分かる?分かっちゃう?まー、面接試験だしねー。盛ってなんぼっしょ♪」
話しながら歩く女子高生2人は、もうすぐ大学の面接試験を控えていた。
100年前の半数にまで減った大学は、今となっては、面接試験さえ通過出来れば、誰だって入学出来る。
就職に関わりは無く、ただの社会的ステータスや資格収集の一環となっていた。
少子高齢化ではなく、少子少数入学から来る問題としてだ。
少子高齢化で衰退の一途を辿ると思われた日本社会であったが、そうはならなかった。
2020年から全世界を苦しめた新型コロナウイルスの問題によってだ。
ワクチンも作られたのだが、抑え込めなかったのだ。
新型コロナウイルスは変異に変異を繰り返し、2100年現在、全人類の平均寿命は50歳だ。
もはや『新型』とは呼べないくらいに変異したコロナウイルスは、エイズ以上の致死率に至る。
もちろん、80代や90代まで生きる高齢者も存在したが、一握りでしかない。
そんな少子少人数社会になった日本、全世代に渡っての問題とは別に、女性達は、100年前には考えられなかった様な問題を抱えていた。
50歳になるかならないかくらいで死ぬのだ。
もはや、老化問題など無い様なモノだ。
新型コロナウイルス問題よりも前の世代なら、50代60代になっても美しい女性は『美魔女』などと呼ばれた。
しかし、現在、美しいまま最期を迎えるのが全女性の悲願となっていた。
話は戻るが、歩く女子高生の2人を見ると、片方に違和感を抱かざるを得ない。
何故なら、100年前ならば存在したであろう『巨乳』の様な胸元に見えるのだ。
しかし、よく見ると、制服のブレザージャケットとブラウスの間に、その理由が窺えた。
それは、通称『巨乳ベスト』。
それが、片方の女子高生の胸を巨乳に見せていたのだ。
『巨乳ベスト』とは、開発初期は、シリコン製だった。
しかし、重過ぎた。
開発から数年する頃には、ふんわりクッション素材に置き換わっていた。
女性の理想的なバストサイズやバスト形状を模した、様々な『巨乳ベスト』。
かつての『バブル期』という頃に存在したという『ボディーコンシャス』、それには『肩パット』なるモノが付いていたという。
それに倣うのなら、『巨乳ベスト』は『大きめの胸パット』と言えた。
現在、女性が社会生活を送る上で必須の『衣類』となっていた。
2人の女子高生が歩く先には高校が見えた。
オンライン授業がほぼ全てを占める現在、わざわざ通学する必要など無いのだが、そこの判断は生徒各自に任されている。
この2人は、数少ない『実際に登校する』派だ。
まぁ、実際に会ったのは数カ月ぶりではあったが。
学校の校門前に、ワイドショーのインタビュアーも務めるユーチューバー女性が居た。
「おはよーございまーす♪」
「・・ども」
「・・はよっす」
「今日は登校なんですねっ♪」
「・・っすね」
「ん」
「お、貴女は巨乳さんですねー♪」
「わら」
「マジうけっし」
「貴女にとって巨乳とは?」
「・・巨乳?・・・過去の遺物?」
「絶滅種?」
「ですねー♪存在するなら会ってみたい存在ですねー♪」
「会える訳ないし」
「ユーマじゃん、ユーマ」
「確かに!でも、ユーマなら会えるかもしれないですけど、巨乳には会えないですよ?」
「言えてる!」
「わら♪」
滅べた過去の生命体なら、化石で見れるかもしれない。
しかし、『巨乳』の化石は存在しない。
巨乳?滅びましたが、何か?
Twitterで毎週月曜日に見る、某イラスト。
週刊誌連載の始まった、その某作品。
読みつつ、ふと思いついただけの話です。
名付けるなら、『金曜日のスカスカ』とか?でしょうか。