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18話【解呪の方法】

 


 わたしは護身を考えなくてはいけないようだ。

 鍛えると言ってもわたしは剣なんて扱えない。涙花が中学生の頃、体育で剣道の授業があったけどはっきり言って全くセンスの欠片さえ無かったのを覚えている。恐らく剣士は向いていない。無理だと思う。

 なら弓はどうか?涙花が高校の頃、弓道の授業で以下略…。


 ──無理じゃん!!わたし超危険!?


 この体格じゃ取り敢えず何も出来ないのはわかってたけど、改めて考えると異世界って危険なのね…。どうしよう。


 ─ハッ!そうだファム! ファムは【守り人】だって言ってた!て事はそこそこ強いんじゃない!?


 バッと期待を込めてファムを見て愕然とした。


 ──鳥。


「ダメじゃん…」

「ティア様?どうかしましたか?」

「あ…うん。ナンデモナイヨー」

「?」


 自衛はまぁ今は置いておくとしよう…。



「とりあえず立場とか種族云々は抜きにして、わたしに気を使って畏まる必要はないから。ルードもダルケンも普段と同じ様に喋ってくれていいんだよ?」

「ですが…」


 ダルケンとルードは当惑し顔を見合わせた。


「何を気にしてるのか解らないけど、ここにはわたし達の他に誰も居ないんだから」

「二人ともお言葉に甘えたらどうですか?ティアがそうして欲しいと望んでいるのですから」


 クロエに言い含められたからか二人は渋々だが頷いた。


「ですが私はその…普段から敬語でして…逆に砕けた喋り方が苦手なのでこのままでよろしいですか…?」

「確かに、ダルケンはいつもこうだな。クロエもダルケンには敬語だし…あ…いや…敬語と言うには微量だが毒も含まれているような…?」


 ひとり首をかしげているルードをクロエが無言で見詰めると、彼は慌てて口を噤んだ。


 三人のなかで一番年上はダルケンで23歳。クロエは19歳。ルードは今年成人したばかりで14歳。団長であるクリードさんは31歳なのだとか。ちなみにクロエとダルケンは幼馴染みらしい。

 こうして見るとクロエはルードの姉的存在で、ダルケンはクロエに尻に敷かれているって感じかな。

 わたしの中で彼等の相関図が出来上がる。


「みんな仲良しだね」


 そう言うとみんなの表情がほっこりと和んだ。





「あ、そうそう。解呪の方法なんだけど、一応いつくか見つけたんだけどね」


 三人の表情が驚愕に染まる。

 実は昨夜のうちにいくつか解呪の方法を見付けておいたのだ。


「とりあえず呪いの度合いにもよるんだけど…軽いものならお守り(アミュレット)で防ぐ事が出来るのは知ってるよね? けど聞いた限り軽い呪いじゃなさそうだし、恐らく命を取る類いのものだと思うから人間に解呪は難しいと思う」

「っ、そんな…」


 三人は愕然とし絶望したように苦渋を滲ませる。悔しそうに拳を握りしめ、歯を噛み締めた。


「なんて顔してるの。わたしは()()()()難しいって言っただけだよ?」


 きょとんとわたしを見詰める六つの眼が「まさか」と揺らぐ。


「安心して!精霊王(わたし)なら解呪できるよ」

「「「!!」」」


 驚愕に立ち上がった彼等は破顔していた。わたしもつられて頬が緩む。

 と同時に彼等は慌てて口許を塞ぎそっと自分達の団長を振り返り、静かに上下する胸を確認してほっと息を吐き椅子に腰を落とす。

 座った後みんなクスクスと笑い出した。


 後はクリードさんが回復すればそのまま彼等の仕える国に転移で飛び、一仕事して帰ってくればそれで終了だ。うむ、完璧。










 チクチクチク…


 チクチクチクチク…


 午後、わたしは日当たりのいい庭でひとり洋服作りに精を出していた。今はひたすらにタックを縫い進めている。


 ミシンでダー!っと縫うのは楽だけど、こうしてチクチクと手縫いをするのも時間を忘れて熱中出来るので好きだ。


 お昼ごはんを終えるとルードとダルケンが「自分達が食器を洗いたい」と言うのでお任せすることにした。

 男ばかりでは録なことにならない、とクロエが監視役について行き、わたしはひとりポツンと取り残されてしまったのだった。


 ─ふふふ…若いってスバラシイ!全然肩がこらない!


 涙花ボディなら今頃バキバキに肩がこっているはずなのに、全く悲鳴を上げない我が肩を誉めちぎりたい。


「─?」


 熱中しているとスッと頭上に影がさす。

 顔を上げるとクリードさんが膝に手をついてわたしを見下ろしていた。


「クリードさん。寝てなくて大丈夫ですか?」

「はい。この分なら夕刻には帰れるかと。─それは何を縫っているのですか?」


 クリードさんは柔らかく微笑みわたしの膝元を指した。


「ワンピースです。今度ファムと街に出掛けるので。流石にこの格好じゃ出歩けないし…」


 苦笑を溢し着ているワンピの裾を摘まむ。

 そう…こいつはレイシュメルという金と同価値の恐ろしいワンピ。これを着て往来を歩くなんて自殺行為だ。

 解る人間なら無防備にこんな格好で歩いている幼女なんてただのカモだ。いや、ネギだっけ?

 とにかく、わたしは安全にお買い物がしたい。


「隣に座っても?」

「どうぞ」


 クリードさんはわたしの横に腰を下ろし手元の縫い物を見て感心したように息をついた。


「上手ですね。私の国では女性が服を作れるのは花嫁として誉れ高い事なんですよ」

「へぇ~」

「料理も淑女の嗜みとして幼い頃から教わるそうですが、ティア様ならすぐにでもお嫁に行けそうですね」


 にこりと微笑みながら言われて、なんだか照れ臭かった。


「ん~…でもわたしに求婚する人なんていませんよ。だって精霊王だし」


 まぁもし結婚したとしても相手は同族なんだろうな。


「そんなことは無いと思います。そんなに可愛らしいのですし」

「ははは…ありがとうございます。 あ、でもそう言えば数日前にわたしに『お嫁さんになってほしい』って言ってきた子が居ましたよ」

「「え」」


 クリードさんの声に被ってもうひとりの声が聞こえたので振り返るとそこにはルードがポカンと立ち尽くしていた。


「あ、ルード。洗い物おつかれさま。ありがとう」

「ぁ、うん。や…それは良いんだけど。えと…求婚の話って…」


 なんだかもごもごとしているので、ルードも座れば?と横をポンポンとしてみる。彼はおずおずとわたしの横に腰を下ろした。


「求婚の話? あはは、ナイナイ。相手は人間の男の子だったし、きっと大きくなったら忘れちゃうよ。それにわたしたち精霊は他種族と結ばれる事は難しいかな」

「どうして…?」


 眉間に小さく皺が寄ってる。そんなに不思議なことでも無いと思うんだけどなぁ。


「寿命が違うからだよ。わたし達精霊からすれば人間はとても短命だもの。それに精霊はとても一途だから、残される悲しみに耐えられない。─なんて言ってもわたしは経験がないからわかんないけどね~えへへ」


 恋をしたことがないなんて口にしてしまい、恥ずかしくて笑って誤魔化そうとしたら二人もぎこちなく笑みを浮かべた。

 異世界ではまだ恋したとこないから仕方ないじゃん。


 残される辛さは知らない。けど残して逝くあのなんとも言えない感情はわかる。


 だから他種族に恋なんてしない。


 わたしはそう決めていた。



「ルードならお年頃なんだから、恋のひとつやふたつ、当然あるんでしょ?」

「なっ…!?」


 ニヤリと笑いながらルードに矛先を向けると思いの外焦った。


 ─ふふ。恋はしない、けど【恋バナ】はするよ!


「ぼ、僕より団長の方が年頃じゃないか!」

「え~?ケチケチしないで教えてよ! あ、勿論クリードさんにも聞くから安心して!」


 グイグイと攻めるとルードは慌てて立ち上がりダルケンの方へ逃走してしまった。チッ、つまらん。





次話では旅立ちたいと思います!爆


ブクマありがとうございます(*´ω`*)

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