表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/4

中編・遺伝子組み換え作物を掘り下げて見る

※本文ラストにまとめがあります。お忙しい方はそちらの確認だけでも大丈夫で

す。


※前回書き忘れていましたが、現在の日本国内では"研究目的"以外の遺伝子組み換え作物は栽培されていません。


※4/6追記・サブタイトル変更しました。

※4/14追記・細かい修正を入れました。内容に変更はありません。

              〜〜 登場人物紹介 〜〜


先手:好きな焼き鳥の部位は『皮』


後手:好きなスコープドッグは『ターボカスタム』


              ※※ 前提 その一 ※※

 本稿において、

 遺伝子組み換え作物(genetically modified organism、GMO)

 とは、『遺伝子組換え技術を用いて遺伝的性質の改変が行われた作物(Wikipediaより)』の事を指すものとする。

 また名称は、分かりやすさを優先し一般的に用いられる『遺伝子組み換え作物』を基本的とする。しかし、場合によっては『GMO』『遺伝子組み換え〜』などと複数の表記を用いる場合もある。いずれにせよ、意味は同じであるものと認識して頂いて構わない。


              ※※ 前提 その二 ※※

 個人の趣味嗜好に関する点、個人の感情に起因する点などについては、

『お前がそう思うんならそうなんだろう。お前ん中(・・・・)ではな』

 ……の姿勢を筆者、読者問わず標準のものとする。


 上記前提にご納得の上、お読み下さい。






「……い、遺伝子組み替え作物(GMO)は危険だ……」


「……まあ確かに、遺伝子組み替え作物に問題が存在している事は事実だ。前回に引き続いて、それを探って行こうか」


「……おお! やっぱ問題があるんじゃねーか!」


「ああ。……取り敢えずは、遺伝子組み換え作物の安全性についてだ。前回は触れなかったが、実のところ遺伝子組み替え作物には以下に挙げる問題点が指摘されているんだ。


 一、遺伝子組み換え技術によって、"昆虫が食べると死ぬ"作物が育てられてい

   る。それを人間が食べるのは危険だ。


 二、遺伝子組み替え作物を食べると、薬が効かなくなる可能性がある。


 三、遺伝子組み替え作物によるアレルギー被害や死亡報告が存在する。


 四、遺伝子汚染など、環境への悪影響がある。


 ……大きく分けると、こんなところだな」


「な、何と言う事だ! いずれも無視出来ぬ大問題なり! これは徹底的に掘り下げ、遺伝子組み換え作物の罪過を白日の下に晒さねばなるまい!」

「ああ。……それでは、早速始めようか。題して、


『しょうちしたきさま(のいけん)はきる』。


 じゃあまず――」


「……ちょい待ち」

「ん?」


「……あのさ、その不穏な題名は?」

「もちろん、これから上記四つの指摘を具体的に掘り下げた上で"ぶった斬る"ために用意した、相応しい題だ」


「……え?」

「前回言ったはずだろう? 『GMOの安全性(・・・)について掘り下げる』って。これら指摘はそのために避けて通れない、言及した上で反証するべき意見なんだ」


「」

「改めて始めようか。

 まず、


 一、遺伝子組み換え技術によって、"昆虫が食べると死ぬ"作物が育てられてい

   る。それを人間が食べるのは危険だ。


 この意見からだな。


 害虫抵抗性を持たせた遺伝子組み替え作物には、害虫となるガ、チョウ、カ、コウチュウへの対策として、『BT(Bacillus thuringiensis)菌の毒素タンパク質の遺伝子』――"BTタンパク質"が組み込まれている。要は"微生物から取った、殺虫成分を作る遺伝子"だな。


 この作物を対象となる害虫の幼虫が食べると、消化管のアルカリ性によってBTタンパク質が活性化し消化管の受容体と結合、消化管の細胞を破壊する。その結

果、害虫はエサを食べても消化する事が出来なくなり"死んでしまう"」


「……な……なるほど! 確かにそんなもんを人間が食べたら大惨事が!」


「全く起こらない。BTタンパク質は人間の胃――"酸性"には反応しない。そのまま胃液でアミノ酸へと分解されて終わりだ。


 もし万が一、BTタンパク質が人の胃液で分解されなかったとしよう。……が、そもそもBTタンパク質は『受容体』を持つ昆虫にしか毒性が作用されない。BTタンパク質の受容体はチョウ目、コウチュウ目の昆虫の腸管にしか存在せず、人間は受容体を持っていないために全くの"無害"だ」


「」

「蚊取り線香ってあるだろ? あれは、火を点ける事によって有効成分である『ピレスロイド(ピレトリン)』が空気中に揮発される仕組みだ。ピレスロイドの受容体を蚊は持っている一方で、人間は持っていない。だから、蚊取り線香を焚いても『蚊だけ死んで人間は平気』なんだ。あれと同じようなものだよ」


「」

「そもそも食品を食べるって事は、対象の"遺伝子を食べる"って事に他ならない。しかし、食べた遺伝子はその後胃液によって分解され、各種栄養素となって体に送られる。"遺伝子がそのまま体に吸収される"訳じゃないんだ。遺伝子を組み替えようが組み替えまいが、それは変わらない。当然、遺伝子がそのまま身体に影響を与える訳もない。食べたものの特徴をそのまま取り込むのは星のカービィだけであって、通常の生物ではあり得ない」


「」


「と言う訳で"問題点その一"の結論。『全く無問題』」


「」


「では次だ。


 二、遺伝子組み替え作物を食べると、薬が効かなくなる可能性がある。


 遺伝子組み換え作物には選抜マーカー、つまり『遺伝子組み換えました』と言う目印として、"抗生物質耐性遺伝子"が組み込まれている。だから、この作物を食べると人間のゲノムに耐性遺伝子が取り込まれ、抗生物質が効かなくなってしまうのではないか――と言う意見だ」


「な……何てこった! これは決して無視し得ぬ、由々しき事態!」


「になど、全くならない。"問題点その一"と同じく、胃で分解されて終わり。以

上」


「」

「しかも最近では、消費者の不安払拭のために抗生物質耐性遺伝子"以外"の選抜マーカーを使用したり、全く新しい植物由来マーカーなんかが開発されている。


 "問題点その二"の結論。『全く無問題』」


「」


「では、次だ。


 三、遺伝子組み替え作物によるアレルギー被害や死亡報告が存在する。


 まずアレルギー被害から。


 米国の企業が、栄養価を高める目的で"ブラジルナッツ"のタンパク質を含む大豆を遺伝子組み替えによって開発しようとした。


 ところが、開発段階でアレルギーを引き起こす可能性がある事が明らかになり、結局開発は中止された」


「こ……これは大事、な……り……」


「……途中で気付いたか。つまり、くだんの遺伝子組み替え大豆は『市場に流通していない』。開発段階でストップが掛かった、と言うだけだ。『被害がある』って言うのは、単なる"誤認"だ」


「」

「そもそもブラジルナッツにアレルギー成分が存在している事は以前から知られており、件の遺伝子組み換え大豆がアレルギーを引き起こす可能性があるのは事前に予想出来ていた事なんだ。


 つまりこれは、"予期せぬ事態"でも何でもない。むしろ、安全評価システムが適切に働いた結果、開発が中止されて市場流通が防がれた事例なんだ。安全性の証明にこそなり得ても、問題点になどなり得ない」


「」

「次に、死亡事例について。


 日本の企業が、遺伝子組み換え技術によって微生物に作らせた『Lートリプトファン』を主成分とする健康食品を開発し、米国で販売した。ところが、該当製品を摂取した者の中から全身性の激しい筋肉痛と好酸球増多を主な症状とする健康被害が多発(好酸球増多・筋肉痛症候群:eosinophilia-myalgia syndrome、EM

S)。報告患者数1500人以上、死者39名と言う事件が発生した(トリプトファン事件)。


 その後の調査により、米国食品医薬品局(FDA)は『製造中、不純物を取り除く工程が不十分であった』事を報告し、『遺伝子組み換え技術に原因がある』とは断定しなかった。そして日本の厚生省(現・厚生労働省)も『これら不純物が遺伝子組み換え技術と直接関連性があるとは言えない』としている。


 つまり、これも誤認だ」


「」


「"問題点その三"の結論。『全く無関係。事実誤認』」


「」


「最後だ。


 四、遺伝子汚染など、環境への悪影響がある。


 これは、


『遺伝子組み換え作物の花粉が一般園場へ飛散する』


『除草剤耐性遺伝子を導入した作物が周辺の雑草と交配し、除草剤に耐性のある雑草が蔓延する』


 ……と言った事態を懸念する声だな」


「…………だ……大問題……」

「になど、やっぱりならない。


 まず最初の『花粉の飛散』について。これは『遺伝子組み換え作物の栽培地域』と『通常の作物の栽培地域』との間に適切な緩衝域を設け、栽培者に管理を徹底させる事によって解決可能だ。つまり『十分距離を開け、きちんと管理しましょう』って事だ。この前提の上で問題が発生したのであれば、それはもはや"管理体制側"の問題だ。遺伝子組み替え作物そのものの問題であるとは言えない」


「」


「次に除草剤耐性の雑草について。


 除草剤耐性遺伝子を導入した作物は、あくまでも『特定の薬剤に"のみ"』耐性を持つのであって、『全ての薬剤』に耐性を持つ訳じゃない。仮に周辺の雑草が薬剤への耐性を持ったとしても、それとは無関係の"他の除草剤"で除去出来る。


 RPG風に言えば、『火属性に耐性がある』だけであって『全属性が効かなくなる』訳じゃない。水属性なり雷属性なり、耐性を持たない他の属性攻撃で攻めれば良いだけの話だ。


 ……そして、遺伝子組み換え作物を栽培する農場では『特定の薬剤のみ』を使用するため、結果的に減農薬となる。そのため、一般の農場よりも『多様な生物が存在している』と言う報告がある」


「」

「それどころか、除草剤耐性作物を栽培する事は畑の手入れに掛かる手間を削減

し、『機械的な除草方法による温室効果ガス排出』を低減させる事が出来る。


 事実、アメリカ合衆国で"グリホサート"系の除草剤に耐性を持つ作物の栽培を行った結果、1996年から2013年までの17年間で農業による二酸化炭素の排出量を『約1900万トン』減少させる事に成功している。むしろ遺伝子組み換え作物は、"地球環境への多大な好影響"を与えている事になるんだぞ。……もっともこちらの場合は、『グリホサート耐性を持つ作物の増加により除草剤そのものの使用量増加、それによる人体への害の懸念』が指摘されているが。


 ……と言う訳で"問題点その四"の結論。『環境対策は十分可能。むしろ、好影響を与えている』」


「」


「……まとめ。『一〜四まで、全て問題点として機能しない』。以上」


「」


「その上で、前回紹介した各研究機関の結論をもう一度紹介しよう。


『遺伝子組み替え作物が安全ではないという証拠は存在しない』


 大事な事なのでこれで四回目です」


「」


「遺伝子組み替え作物は安全――つまり、食べても人体に悪影響などない。また、環境にも悪影響を与えないどころか好影響を与える」


「……だったら、一体どこに問題があるって言うんだよぉっ!?」

「泣くほどか」


「泣くわ! 折角、遺伝子組み替え作物を断罪してやろうって張り切ってたのに、この仕打ち! 一体どうしてくれる――」


「……それ(・・)だよ」


「……はい?」


「だから、まさしくそれ(・・)なんだよ。遺伝子組み替え作物の抱える"問題点"は」


「いや、だからどう言う……」


「君は遺伝子組み替え作物を『悪いもの』だと認識している。それも、前回指摘した通り『みんな言ってるからそうなんだろう』程度の理由で。しかし今まで述べて来た通り、実際には悪い点などほぼ存在しないか、十分な対策が行われている。逆に、『良いもの』だと言う側面はろくに取り上げられない。


 "遺伝子組み換え作物"に対する人々の認識と実態との間に齟齬(そご)が生じ、結果不当な理由で『悪いもの』扱いされている。正確な判断による評価がなされず、誤解や偏見に基づいた判断によって貶められ、結果として重大な損失をもたらしている。それを『問題点』と言わずに何が問題なんだ」


「」

「と言う訳で、今回のまとめだ。


 一、遺伝子組み替え作物に対し指摘されている問題点の大半は無意味、または十分な対策がなされている。


 二、大和(やまと)平野にも丘ぐらいあ<<削除されました>>


 ……以上だ」


「」

「では、また次回」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ