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青春の味は甘酸っぱくて、苦くて、どこまでも甘い  作者: かいわれ大根
第一章 高槻編
7/8

解の公式

「起立、気をつけ。礼。」

「「お願いしまーす」」


 2時間目の授業が始まった。さっきの宣言通り授業はプリントを使って進行するようだ。


「はい、それじゃみなさんプリントの課題を先ずは自力でやってみて下さい」


先生の指示で配られたプリントに目を通す。問題は至ってシンプルだった。

『2次方程式における解の公式を導け』

解の公式くらいはもちろん知っている。ax^2+bx+cにおいて云々というやつだ。しかし改めて導けと言われると難しかった。教科書の93ページは見るな、答え載ってるからと指示が飛ぶ。



 数分が経ったところで


「それじゃそろそろ考えが煮詰まった人もそうじゃない人も出てきたでしょう、近くの人と相談して答えを出してください」


と。これはまた高槻と話すチャンスかもしれないと思い即座に行動に移す。幸いにも彼女は答えを出せていないようだ。手元には辛うじて導き出した解答がある。


「高槻、できそうか?」

「ううん、できない」

「えっと…ここはまず」

「まって!」


…え?待って?


「もう少し自分で頑張る」

「お、おう。わかった。」


頑張れよ、と一言声を掛けて退くことしかできなかった。高槻は頑張るな、そんな所も好きかもな…

 そしてさらに数分が経った頃、ついに


「ごめん小田島、教えてください…」


今にも消え入りそうな声に、ちょっと意地悪してみたくなった。ほんの出来心だった。


「あれ、自分で頑張るんじゃなかったの?」

「…」


黙って膨れてしまった。でも申し訳ないけど可愛い。


「もういい、そしたら蘭に教えてもらうっ!」


蘭…ああ、後ろの今泉のことか。

ってそんな事は今はどうでもいい、怒らせてしまったから何とかしないと。


「ごめんなさい、少しからかい過ぎた…」


その目は少し潤んでいた。そんな目をしないでくれ頼むから…


「じゃあちゃんと教えて…?」

「もちろん教える!」


潤んだ瞳で上目遣いされて落ちない男などいなかった。


「まず平方完成して…」

「なるほど、ありがとう!小田島の説明ってわかりやすいね」


多分高槻の理解力が高いだけだよ、と返しつつ褒められて内心舞い上がっていた。


 

 先生が指定した時間には大分余裕があり、説明した解答を綺麗にノートにまとめ直しても尚時間が余っていた。周りも少しずつ雑談を始めていて、先生もそれを咎める様子はない。聞くなら今だ。


「なあ、高槻って彼氏いるの?」

「え、いきなりどうしたの」

「いや…モテそうだから聞いてみた」


やっぱりいきなり聞くと警戒されるよな。選択を誤った。

 まあどうせ彼氏の一人や二人いるだろうという予想だった。これだけ容姿が綺麗なら言い寄ってくる男は星の数ほどいるだろう、と。



 しかしその予想は裏切られた。


「いないよ」

次話投稿予定 8/21 21:30

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