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青春の味は甘酸っぱくて、苦くて、どこまでも甘い  作者: かいわれ大根
第一章 高槻編
4/8

教科書

 昨日から待ちに待っていた学校がついに始まった。世間は(少なくとも我が校の他コースは)テスト後の休みを満喫しているであろうこの時期に朝から夕方までみっちり授業、というのは普通なら鬱なはずだった。

 でも今日の僕は違う。何故なら隣の席に高槻さんがいるから。それだけで心が踊るなんて、男なんて単純なもんだ。だからバカって言われるんだよ。わかったか世の男共。(いや自分もだろっ!)



 そんなこんなで先生が甲高い声を響かせるいつも通りのホームルームが終わり、各々1限の支度を始めた。


「ねえ小田島、今日の時間割覚えてる?」


突然話しかけられてもうそれはそれはびっくりした。でもまあクラスメイトだし隣になれば普通の事か、と勝手に納得して返事する。


「1、2時間目が数Ⅰ、3、4時間目がコミ英で、5、6時間目が英表だった気がする」

「すごい全部覚えてるんだ、ありがとう」

「にしても最悪な時間割だよな…音楽とか体育とかあればいいのに」

「ほんっとだよね!もう退屈すぎて嫌になっちゃうよ!!」


いきなり食いついてきたので驚いた。きっと音楽が好きなんだろう、確かに好きな科目が無いのは辛い。


「もう体動かしたすぎて大変だよ…小田島はそう思わない?」


…え?音楽じゃないだと??

 高槻さん全身折れるんじゃないかってくらい細いしとても運動が好きなようには見えないんだけど。

 と驚いていたのを見透かされたみたいでそこを突かれてしまった。


「体育好きなの、意外?」

「いやいや、僕もこんな貧相な(なり)だけど体動かすの好きだからそんなことないよ。でもそれにしても高槻は運動好きに見えなくてさ」

「えーなんかひどい、ちょっと凹む…」

「ごめんお願いだからそんな顔しないで謝るから!!」


その時の高槻さんの顔はほんとにしょんぼりしていた。(´・ω・`)に引けを取らないくらい。というか目にうっすらと涙を浮かべてすらいる気がする。


「悪かった、ごめんな…」


その直後


「ううん、平気。もう大丈夫」


と柔らかく笑った。あ、ちなみに音楽も大好きだよ、と付け加えながら。こいつ悪魔か。いや笑顔の可愛さは小悪魔だ。純情で女の子に慣れてない男()にそんな顔をするのはやめてほしい。彼女の純粋で透き通ったような顔でそんなことをされて何も感じない男子などいないだろう。


「あんまりからかわないでくれ…そういうのずるいぞ?」

「え、なにがズルいの?」

「何でも」

「えーなんでもじゃわかんないー」

「じゃあ一生わからなくていーですぅー」


彼女が、高槻さんが今度は声を上げて笑ってくれた。今までもクラスメイトと話す高槻さんのことを何度か目にしたことはあったけど、こんなに笑っている所は初めて見た。大人しい子だと思ってたけど明るい楽しい子じゃん、益々気になってきたよ。


「そしたら今度必ず教えてくれるよね?」

「え、なんで」

「小田島くん優しいから。さっき私が意地悪した時も本気で謝ってくれたし、何より…」


その時ちょうど授業開始のチャイムが鳴った。やばい授業の準備してない。


「支度忘れてた行ってくる!」

「あ、私もだ」

「引き留めちゃって悪い」

「ううん、楽しかったからいい」


その何気ない一言が心の底から嬉しかった事は言うまでもない。

 教室を出て自分のロッカーを開ける。3つある棟の中で何故かこの棟だけロッカーが教室の外にあって不便だ。面倒臭いと思いつつ汚いロッカーを掻き回す。


「やばい、教科書忘れた」

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