ディンテス大洞窟での遭遇
「おい、聞いたか? ディンテスの大洞窟が踏破されたってよ」
「はあ? 冗談キツイぜ。
バカ祭りの日はまだ先だぜ?」
「嘘じゃねえよ。 俺だってまだ信じられねえんだけどよ……」
「おいおいおい。 マジかよ……」
こんな会話がされているのは、サクリ王国にあるファイズという迷宮都市、そこの探索者酒場だ
なんでも数日前、唐突に迷宮の罠が全て解除され、階層を自由に転移できる魔法陣も消え、深部から様々な天災級モンスターが上がってきたらしい
それらのモンスターに対処しようと探索者が集まり、いざ防衛戦だと覚悟を決めていたのだが
這い出してきた天災級モンスターは人間に目もくれず、何かから逃げるように去っていった
都市長は大慌てで王国に連絡を取り、その翌日には第四番王国兵と宮廷魔導師、そして迷宮学者がこの街に到着した
第四番王国兵、彼らは迷宮や魔力溜まりから起こったスタンピードや、天災級モンスターが現れた時に出動する
1人1人がS級探索者ライセンスを持ち、大災級相手なら1人で倒せる程の強者である
そんな彼等と宮廷魔導師が来たからには、再び天災級モンスターが現れても大丈夫だろう
~カマキリ視点~
おっす俺カマキリ! 地上に向かって移動中なう!
とか空元気出してみたけど、悲しみしかないわ
あの妖精ちゃんのスイーツパーティが終わった後、とりあえずむしゃむしゃしながら上がって来たんだ、だけど狭いわ魔物が薄味だわで、もうね悲しい
ここまで来たらモンスター狩りするより、早く外出て迷宮とか探した方が良さげだな、って脳内会議で今さっき決まったわ
ぐむぐむと魔法で洞窟を拡張し、俺ちゃんが歩きやすくする
時たまトカゲとかオークっぽいのが近寄って来る
お肉が自ら近付いてきたのを逃がすなんて、勿体ないからつまみ食いしながら地上を目指し歩を進める
~ディンテス大洞窟の入口~
「兵士長はいるか! 」
そう言いながら兵士団のテントに入ってきたのは、今回魔導師団の師団長に任命されたカシューだ
まったく、会議中だって知ってるだろうに、そんな張り上げ無くても、ココに居るって事をよう
「何かあったのか師団長」
「モンド! もしかしたら超災級が生まれたかもしれない!」
「なんだと?! 間違い無いのか!」
超災級と言ったら魔級の中でも最高位の階級だ
「間違い無いはずだ。迷宮学者が計測していると、先程から大規模な土魔法の反応が計測されている。その反応は、迷宮の深部から、地上に近付いて来ているようだ」
「つまりその超災級は、出てこようとしてるって事か……」
これは拙い事になった
ただ単に迷宮が寿命を迎え、核が崩壊したって事ではなく、迷宮の魔素溜りから生まれた変異種って事か
変異種、奴らは迷宮や龍脈が自衛の為に生み出す魔物では無く、ただ単に魔素溜りから生まれた魔物だ
妖精種が主にそれだな、基本的に魔災級以上になる事が多い
「とりあえず王城に通信は済ませた。返事が来るまでに斥候を送るか?」
そんな事を考えてると、カシューから情報収集の提案された
そうだな、外から見るのではなく、直接確認した方が早いだろう
「そうしよう。 こちらから3名出す、カシュー師団長の方から2名お願いしたい」
「了解したよモンド兵士長」
~迷宮中部~
ある~日♪洞窟の中♪スライムに♪であ~た♪
ぷるぷるゼリーに赤いコア、見た目はアメーバなんだけど
そのゼリーをチュルチュル吸うとソーダ風味のシュワシュワって感じかな!
久々の薄味じゃない、ちゃんとした甘味を感じたわ
結構なお手前で……バリボリ
ンンっ…! コアもソーダキャンディみたいで美味しいわ
それにしても、このトロールっぽいのは不味くてダメダメですわ、まったく
もっとスライム君を見習いなさい!
スライムはいね゛ーがー
いたらちゃんと“ぷるぷる、ボクは悪い子じゃないよ?”って言いながらでてくるんだよ?
あ、でも見た感じ原始生物っぽいから喋れないか
とりあえず掘り進める事にする、あそーれそーれっとね
拡張してると、時たま天井からペチャっとスライムが落ちてくる、それをチューチューしながら進むこと数時間
第1村人を発見! 数は5人、剣士2シーフ1魔法使い2って感じ、探索者かな?
それにしてもスライムうめえ
~斥候小隊視点~
「なんだアイツは……!」
「うわぁ……スライム啜ってるぞ……」
「見たことの無い魔物だ……魔道具で鑑定を頼む」
そう魔導師達に頼み、我々は対象のスケッチを始める
対象はスライムに夢中なのか、動かずにじっとしていてくれて直ぐに描き終えた
それとほぼ同時に魔導師が鑑定を終え、結果をこちらにも見せてくれた
◇
名:5paなまjqlк¿ふ☎
種族:半竜種[*½ы種]
階級:計測不能
称号:lk育s3に、٩₩ヌ管n#者、異世界の魔、貪り喰らう者、迷宮踏破者、国を滅ぼし者、妖精の天敵、スライムの天敵、etc…
◇
「なんだよこれ……」
これははっきり言って異常な鑑定結果だ、魔道具の故障としか思えない
見たことの無い記号が多数並び、有り得ない数の称号がズラリと表示されている
それを見ていると、魔導師の1人から衝撃の事実を告げられた
「ガウズ小隊長、この魔道具は故障していません」
今、何といったんだ。俺の耳が壊れていなかったら、故障ではないと……?
「すまない、もう一度頼む」
嫌な汗が出てくる。頼むから故障していると言ってくれ
「魔道具は…正常です……」
それを聞いた途端に背中が生温く感じ、手足は氷魔法を当てられた様に寒く感じる
これはダメな感覚だ、冷静にならねば
「これ以上の接触は危険と判断し、これより撤退する。 各自記録した情報は魔導師のマロニエ女史へ渡した後転移石にて離脱する」
「「「「了解」」」」
魔物の階級
10から1の数え階級
小災級~超災級の魔災級
と呼ばれる二種類があります
数え階級は魔法と言葉を喋れない魔物を指し、魔法や言葉を操る魔物を魔力量で各魔災級に分けます
例えば妖精ならば大災級へ分類され、吸血鬼は天災級となります
魔災級の魔物は基本己の欲望を満たす為に生きています
ですが妖精や少数の魔災級は人類に交友的である為、例外で国や街を作る事を認められてます
それらは魔族と呼ばれ、国ならば国のトップ、街ならば都市長が魔王となります
あと、主人公が現地民の言葉を鳴き声としか理解してない理由として
・日本語と和製英語位しか知らない
・自動翻訳とかそんな便利なスキルはない
・かなりの巨体だから可聴周波数が変わっている
・虫の鼓膜&外骨格伝導のため音としてはそこまで拾えない
という感じになってます