少年剣士ラカン
リュカ村
この村は王の外れ山と山に囲まれた村だ。男は炭鉱で働き女子供は畑を耕し1日に一度教会でお祈りをして1日が終わる。何処にでもある田舎の村だ。
ただ、変わっていることがあるとするなら……
ゴーンゴーンと鐘の音が聞こえる。
「魔物が出たよ!」
辺境にして秘境。高い山に阻まれたその先には魔物が住む土地
魔界と呼ばれる世界があることだけ
「俺が相手だ! こい!」
木剣を握りしめ魔物と対峙する。猿のような見た目にヘビの尻尾の魔物が興奮している。
身体中には無数の傷がある。恐らく天敵に追われてここまで逃げてきたのだろう。情けはかけない。いくら弱っているからといっても魔物だ人を簡単に殺すことができる。
「オラァァアアア‼︎」
木剣を力一杯魔物に振り降ろす。ドカァっと命中した音が聞こえる。魔物はその場で倒れ苦しそうに悶えるトドメとばかりにもう一撃と振りかぶる。
「ゴアァ!」
「くっ! フン!」
魔物の爪が頬を掠める。血の匂いがするが気にせず伸びきっている魔物の顔面をフルスイングで打ち抜く。ゴギャっと音が聞こえ勝利を確信する。
「どうだ!」
「どうだじゃない! このバカ息子」
ボカッ! 頭の上から足にかけて衝撃波が通り抜ける。
振り向くと筋肉の塊……っという表現しかできない男が立っていた。親父だ。
「鐘が鳴ったら家に入っていろと言っただろうが! この話をするのは初めてじゃあ無いはずだが⁉︎」
「ガキ扱いするな! もう直ぐ10歳だ! 倒せたから良いだろう! それに親父が来るのが遅いのがいけないんだ!」
「倒せたから良いじゃ無い! お前の頬の傷はなんだ! 一歩間違えれば大惨事になるんだぞ! わかってるのか!」
「ぁ、あの! バルガスさん! 早くラカンの傷を治療しないと……その……あの……」
親子ゲンカしている途中に弱々しい声で乱入者が現れた。教会で使われている修道服に長めの銀色の髪に日光を反射しそうな白い肌、クリッとした青い眼が今にも泣きそうな顔でこちらを見ていた。
「あぁ、ユーリか……すまんがこのバカの治療を頼む。治療が終わったら家でコッテリ絞るから覚悟しとけよ!」
ズカズカと炭鉱の方に歩いている親父を睨む。ガキ扱いしやがって……
「悪かったなユーリ」
「いいよ。それより剣の腕上げたね。スネークモンキーに勝っちゃうなんて! 凄いことだよ!」
両手一杯に手を広げパタパタと効果音が付きそうなジェスチャーで伝えようとしている。同じ村の数少ない幼馴染は今日も興奮しながら俺の戦いを見ていたのだろう。
「それより治療頼めるか?」
「あ! ごめんなさい!」
ユーリが頬に手を近づけると薄い緑色の光が頬に触れる。暖かい。この歳で治療魔法か使える人はそうは居ない。
あぁ、才能の違いを見させられているようで辛い。
俺には無いものが目にある。
俺には魔法が使えない。