プロローグ
初めまして、花緑といいます。
このお話は気分が乗った時に書いていきますので、続けられたらいいなと言いますか、とりあえず頑張りますのでお願いします。
むかしむかし、この大陸には一人の魔王がいたそうだ。魔王は手下の魔族を操り、人間たちの土地をどんどんと侵略し、支配していきました。
でも、力が弱く魔法も使えなかった人間たちも、それを黙って見ているだけではありませんでした。一人の少年が勇者として名乗りを上げたのです。少年には何の力もありませんでした。でも彼は拾われた両親が丹精込めて作った装備と、魔法が使えた特別な従者と共に世界を巡り、侵略された土地から様々な方法で魔族たちを追い返していきました。
少年は時に、追い返した方法が気に入らなかった人間から非難を浴びることもありました。でも、彼は決して挫けることはありませんでした。彼は従者に向かって、よくこんなことを言っていました。
「みんなが考えた方法じゃ、お前が笑顔で暮らせる世界は絶対に来ないんだ。俺はお前を見捨てることが出来なかったからさ。出来れば、皆が笑顔になれるような、そんな未来にしたいんだよ」
そんな、彼に惹かれたのか、彼の元には次第に仲間たちが集まってきました。その中には後の国の王となる人物や、後の魔族の街の領主も含まれていました。
そして、長い長い旅の末、勇者達は鎧を纏った魔王と相対しました。そして、戦闘が始まりました。
その中で、少年は気が魔王の心が泣いていることに付きました。ずっと、人間や、魔族の心に触れていた彼は、なんとなくですが人の心が分かるようになっていました。
二人は剣を交えながら、語り合いました。魔王自身には何の力もないこと、魔王の家に伝わる『呪い』が魔王を魔王足らしめていること、配下は誰も自分の話を聞いてくれなかったこと、そして――勇者がうらやましかったこと。
勇者は悲しみました。どうしてこんな心綺麗な子にこんな残酷な運命を負わせたのだろうと。だからこそ、彼は真心を込めて剣を振るいました。決して彼女を傷つけぬよう彼女の『鎧』だけを打ち壊せるようにと、涙を流しながら振るい続けました。
そして、何度目かの打ち合いの後、ついに魔王の鎧は甲高い音を立てて、少しずつ壊れていきました。同時に、魔王の剣と勇者の剣が光を放ち、二人をどこかへと連れて行ってしまいました。残ったのは寄り添いあうように重なった、二つの剣だけでした。
もう一つ、この戦いの終わりと共に起こったことがありました。剣の光が世界中に溢れ、すべてを包み込んだのです。その日を境に、人間たちも魔法を使えるようになったのです。
それは、勇者と魔王が切に祈った奇跡――『魔王』という悲しき存在が生まれてしまわないように、魔法を持った稀有な人々が、他の人たちに忌み嫌われてしまわないようにと、ありとあらゆるモノに魔王の力を分け与えたのです。――これなら、全ての者から魔王の力を吸い取らなければ魔王が生まれることは決してありません。
勇者の仲間たちは、戦いの後、世界の人たちにもう戦わなくていいこと、これからは人も魔族も手を取り合って生きていくことを広めていきました。それが普通となるまでにもとてもとても長い時間がかかりましたが、少しずつ少しずつ手を取り合っていくことができるようになりました。
それでもまだ、人間や魔族の残した負の遺産はこの大地にたくさん残っています。戦いのために掘られた洞窟や街道には凶悪な生物や兵器が住みつき、生活を脅かしています。今度は私たち一人一人が手を取り合って勇者となっていくことが必要なのです。
――それに。まだ、この世界から魔王の呪いは消え去っていませんでした。時々、強い魔力と『魔王の鎧』を持って、生まれる子供たちが現れたのです。彼らはいつしか『魔王』と呼ばれるようになっていきました――。