表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あめ  作者: shino
1/1

あの日


「先生!おっはようございます」


ドタドタと階段を駆け上がってきたかと思うと、そいつは、襖を蹴破って部屋に入ってきた。


僕は寝起きが良い方ではない、ましてやこの手の起こされ方は大嫌いだ。

僕は、もそもそと布団へ潜る。

しかし、それはあっさりと遮られた。


「ご飯冷めちゃいますよー」


ニッコリ微笑みながらも、力ずくで布団を引き剥がすそいつが見えた。

雨音が聞こえる。

そのまま窓の方へ視線を移すと、ふとあの日のことがよみがえってきた。



あの日の雨は、今日より酷かった。

空はどんよりと暗く、今にも雷が鳴りそうな天気。

叩きつけるような雨が、ひっきりなしに降っていた。

雨粒が傘にぶつかる音は、とても耳障りだ。



ポケットの小銭を、右手で触りながら、いそいそとコンビニへ向かう。


ふと足元に、何か大きなかたまりがあった。初めはゴミかと思ったが、微かに動いているところを見ると、それが生き物だということに気付いた。


一瞬、息が止まりそうになった。


その生き物は、人間だ。


そいつは、大きな瞳をこちらに向け、ゆっくりと顔を上げた。


色白で、黒く艶のある髪。スッと通った鼻。まつげが長く、瞳が大きかった。何より僕は、その瞳が青かったことに驚いた。


しかしやがて、その大きく特徴のある瞳は、静かに閉じ、こっちを向いていた顔は、力無く地面に倒れてしまった。


僕は頭が真っ白になり、考えるより先に体が動いていた。傘を投げ捨て、そいつを抱き抱えて、無我夢中で雨の中を走り出した。

ただひたすら。

微かに残る、そいつの体温を感じながら。


最近の台風接近に伴って、雨をモチーフに小説を書いてみたくなりました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ