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フレイム・ウォーカー外伝 -Behind the Scenes-  作者: エスパー
テルノアリス編(裏)
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とある戦場からの戦況報告・Ⅱ


 戦乱渦巻く首都のとある一角で、ジンは『魔術師』と対峙していた。

 初めに現れた仮面の男たちを撃破したジンの勇姿を称えるかのように、『魔術師』はゆっくりと拍手した。

「お名前を伺ってもよろしいかな、銀髪の剣士さん?」

「……ジン・ハートラー。『ギルド』に所属している」

 警戒心を最高潮にして答えるジンに、『魔術師』は愉快そうに笑ってみせる。

「そんな怖い顔すんなよ。こっちはてめぇの強さに感心してるだけなんだからよぉ。素直に喜んだらどうだ?」

 口元にニヤニヤとした笑みを浮かべ、『魔術師』は舐め回すかのようにジンを見る。

 ジンは不愉快に思った。

 彼の視線がではない。

 彼の態度が、だ。

「――何が面白い?」

「あん?」

「何が面白いと聞いているんだ」

 瞬間、『魔術師』の足下が吹き飛んだ。ジンが『(こく)(れつ)(けん)』から衝撃波を放ったのだ。

 爆音を上げて地面が吹き飛び、土煙が『魔術師』の周りに吹き荒れた。

(こく)(れつ)(けん)』を握り直し、ジンは怒りの籠った眼で『魔術師』を睨む。

「戦いが楽しいか? 争いが面白いのか? 貴様らみたいな下らない人間の愚行のせいで、多くの悲しみが生まれているというのがわからないのか?」

「悲しみ……? ハハッ! 悲しみだって!? 何、お前? そういうアツい事言っちゃう人間なの? ギャハハハ! マジかよ!? 超面白ェーーーーッ!!」

『魔術師』は盛大に笑う。腹を抱えて本当に面白そうに。

 それを一頻り続けた時だった。

 突然ピタリと動きを止め、『魔術師』は無表情で言い放った。

「ギャアギャアうるせぇんだよ偽善者が」

 瞬間、ジンの足下の地面が突如として隆起し、槍の穂先のように尖った刃物となってジンの左肩の辺りを掠めた。

 服が裂け、微かに血が滲む左肩にジンは目を向けようとしたが、そこに『魔術師』の怒声が割り込む。

「ボサッとしてんなよ銀髪っ!!」

「!」

 雄叫びのような声を上げながら『魔術師』が右腕を振ると、それに合わせるかのように、今度は大通りに並ぶ商店の石造りの壁が隆起し、円錐状の岩の塊となって飛来してきた。

 ジンは咄嗟に『(こく)(れつ)(けん)』を振るい、黒い衝撃波で岩の塊を粉々に粉砕した。その途端、土煙がジンの視界を奪う。『魔術師』の姿どころか、大通りの景色すら見えなくなった。

(しまった! 目眩ましか……っ!)

 ギリッと歯噛みした瞬間、ジンは背後に悪寒を感じた。

 感じたが、回避が間に合わなかった。

「ヒャハァァッ!!」

「!」

 ゴツゴツした不格好な岩で出来た槍を握り、突貫してきた『魔術師』の一撃が、今度はジンの右脇腹の辺りを捕え、その部分を朱に染めた。

「チィッ!」

 ダンッと地面を強く蹴りつけ、ジンは『魔術師』と距離を取った。

 右脇腹の辺りがズキズキと痛み、身体中から汗が吹き出し、風邪で高熱を出したかのように身体が火照る。幸い傷は深くないようだが、今のはまともに食らっていれば重傷になっていただろう。

 ジンは痛みを堪えながら、ニヤついた表情の『魔術師』を睨んだ。

「随分セコイ真似をするんだな。とてもじゃないが、『魔術師』とは思えない戦い方だ」

「褒め言葉として受け取っとくぜ。俺をてめぇみてぇな偽善者と同じにするんじゃねぇよ。俺は自分に正直に生きてる。だから相手を殺す時も容赦なんかしねぇ。紳士ぶったりもしねぇ。相手を殺す為だったらどんな事だってやるぜぇ? こんな風にな!」

 振り上げた両手を地面に押し当てる。それだけで『魔術師』の足下の地面が変化を起こした。隆起し、槍状に尖った岩の塊がジンに襲い掛かる。

 だがジンは冷静だった。血が流れ、紅く染まった左腕を振るい、『(はく)(めつ)(けん)』から白い衝撃波を生み出して放った。

 先程と同じく、衝撃波を受けた岩の塊は空中で爆発を起こし、土煙が視界を奪う。その中でジンは、姿の見えない『魔術師』に冷たく言い放った。

「大層な自論をお持ちのようだが、本当にわかっているのか? 相手を殺す覚悟を持った以上、自分が殺されても文句は言えない事をな」

 瞬間、ジンは『(こく)(れつ)(けん)』と『(はく)(めつ)(けん)』から同時に衝撃波を放った。しかもただ放った訳ではない。自分の身体を中心に円を描くかのように回転を加えて、全方向へ衝撃波を放ったのだ。

 黒と白が織り成す衝撃波の波は瞬く間に土煙を払い、同時にその中に紛れ込んでいた『魔術師』の身体を容易に吹き飛ばした。

「ぐああああぁぁっ!」

 ダァンッという音を立て、『魔術師』の身体は商店の壁に叩きつけられた。肺から息が強引に吐き出され、『魔術師』は苦しそうに膝を折った。

「ク、カハァッ!」

「攻撃の仕方がワンパターン過ぎる。もう少し頭を使ったらどうだ?」

 ジンは膝を折り悶える『魔術師』に、『(はく)(めつ)(けん)』の切っ先を突き付けた。冷徹な眼差しで見下ろすと、明らかに『魔術師』の顔色が変わっていた。ほんの僅かな回数交戦しただけで、立場があっさりと引っくり返っていた。

「よ、止せ……! 頼む! 殺さないでくれ!」

「……さっきの自論を吐いていた人間とは思えない台詞だな」

 ジンがギリッと『(はく)(めつ)(けん)』の柄を握り締めると、刀身が淡く光を放ち始めた。

 相手に最早戦意は無い。だがジンは容赦しなかった。さっきの『魔術師』の言葉が癇に障っていたからだ。

「何の覚悟もない奴が戦おうなどとするな。……反吐が出る」

「止め――!」

 紅い髪の少年にすら見せた事もないような冷たい表情で言い放った瞬間、爆音が辺りに響き渡った。

 ジンの『(はく)(めつ)(けん)』から発せられた衝撃波、『(びゃく)(らい)』。それが『魔術師』を襲い、爆発を起こした音だった。

 商店の一部を破壊し、朦々(もうもう)と上がる煙の中から、ジンは悠然と歩いて現れた。背中の鞘に両手の剣を納め、ジンは煙の上がる商店の方を一瞥する。

『魔術師』は死んではいない。ただ再起不能になるまで、ジンが『(びゃく)(らい)』を放ち続けたのだ。

 ピクリとも動かなくなった『魔術師』を見つめ、ジンは聴こえていないとわかっていながら、それでも言った。

「命がある事を感謝するんだな。命の重さを知らない者よ」

 視線を前に戻し、ジンは首都の街並みを走り始める。

 傷は痛む。だがのんびりはしていられない。

 まだ何かが起こる。そんな予感がジンにはあった。



という訳で、本編の中でジンが言ってた『魔術師』との戦いを描いてみました。

こっちも早く終わらせないとな(汗)



それはそれとして、勝手にランキングの方では、本編よりこっちのが若干ですが人気あるみたいです。

投票してくれてる方がいるみたいなんで嬉しいかぎりです。

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