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Crimson & Silver -少年たちの過去-

今更ながら、外伝最新話投稿です(苦笑)

本編に比べれば読んでる人少ないみたいですが、途中まで読んでた方、大変遅くなって申し訳ありません!


 二十分ぐらい経った頃だろうか?

 気付くと俺の周りには、数多くの『ゴーレム』の残骸が転がっていた。

 俺の視界で捉えられる位置に『ゴーレム』の姿はない。恐らくこの辺りにいた『ゴーレム』は、全て破壊する事が出来たようだ。

 とりあえずは戦闘終了と考え、俺は右手の『紅蓮の爆炎剣フレイム・ロングソード』を消滅させた。

 その瞬間だった。

「動くな」

「!」

 背後から俺の首筋に、黒い刀身の剣がピタリと張り付いた。剣の刃から、冷たく硬い感触が伝わってくる。

 今俺の背後に立っているのは、間違いなくジン・ハートラーだ。これから彼の言っていた、『罰』とやらが始まろうとしているらしい。

「随分いきなりなんだな。あんたが言ってた罰ってのは、殺すって事なのか?」

「殺すつもりはない。そんな事をしても、何の意味もないからな」

「そうかよ。だったら何でこんな真似を?」

「キミにはいくつか尋ねたい事がある。こうした方が、正直に答えてもらい易いだろ?」

「尋ねたい事?」

 ジンに背中を向けたまま、俺はチラリと背後を振り返る。真剣な表情でこっちを見ているジンの瞳には、確かに殺気のようなものは感じられない。

 訝しく思っていると、ジンの口がゆっくりと動き始める。

「さっきのキミの力。俺は門外漢だからよくはわかないが、あの力は『魔術』だろ?」

「……ああ、そうだ」

「つまりキミは、『魔術師』という事だな?」

「……一体何が知りたいんだよ、あんたは?」

 回りくどい質問の仕方は好きじゃない。俺は彼の真意を知る為、敢えて率直に尋ね返した。

 するとジンは俺の意志を悟ったのか、黒い刃の剣をゆっくりと俺の首筋から外し、背中の鞘に納め直す。

「キミが『魔術師』なら、もしかしたら俺の追っている男の事を知っているんじゃないかと思ってね。それを確かめたかったんだ」

「あんたが追ってる男?」

「さっき、俺がいつから『ギルド』メンバーに加わったか、という話をしただろ? 俺が追っているその男は、俺が『ギルド』に入るきっかけを作った男だ」

 ジンは僅かに俯いて間を開けた後、再び顔を上げて強い口調で言い放った。

「ボルガ・フライトと言う男を知っているか?」

「……いや、知らねぇ。聞いた事ない名前だ」

「本当か?」

 変に疑り深い奴だな。この状況で嘘ついて何になんだよ?

 俺は内心で少々イラッとしながらも、顔には出さないように平静を装う。

「本当に知らねぇよ。大体何なんだ、その男が作ったきっかけになった事って?」

 俺がそう問い掛けると、ジンは一瞬言い淀んだようだが、意を決したかのようにゆっくりと口を開く。

「奴は……、ボルガ・フライトは――」


「俺の家族の命を奪った男だ」


「……え?」

 命を奪った? それは文字通りの意味として受け取っていい事なのか?

 その言葉が本当なら、ボルガ・フライトって奴はあんたの――。

「奴は俺の仇だ」

「!」

 俺が言い淀んでいた事を、ジンはあっさりと口にした。

『ギルド』で初めて顔を合わせた時とは違う。彼の瞳にはまるで、憎しみの炎が宿っているかのようだ。

 だけど俺には疑問が残る。

 彼はなぜ、その仇の名前を俺に訪ねてきたんだろう? 俺にその質問をぶつけた意図は何なんだ?

 あれこれ思考する俺をよそに、ジンは真剣な眼差しで続ける。

「俺がボルガ・フライトに会ったのは一度きり。その時奴は、『雷』を操る大剣、『魔剣』を所持していたんだ」

「『雷』を操る『魔剣』だと……?」

 この大陸には、『魔術』を武器に介して殺傷能力を高めた希少な武器、『魔剣』と呼ばれる物が存在する。

『印術』を用いて武器に特殊な能力を付けるのとは違い、『魔剣』は製造の段階から、高尚な『魔術師』と高い技術を持った『刀鍛冶』が、共同で造り出していく事で生まれる、最も強大な力を持った武器だ。

 だが『魔術師』と『刀鍛冶』の両方が揃ったからと言って、必ずしも『魔剣』製造が上手くいく訳じゃない。

 昔ミレーナに聞いた話だが、『魔剣』は普通の武器を造るのと違い、武器その物に『魔術』の力を定着させなければならない。その作業の難易度がとてつもなく高い為、『魔剣』一本を製造するのに年単位の時間が掛かるらしい。

 だからこそ失敗や挫折を繰り返す者が多く、『魔剣』は希少な物となっているんだ。

 そしてその『魔剣』には、様々な『魔術』の力が宿っているとされる。多分、今ジンが持っている二本の剣も『魔剣』なんだろう。さっき見た黒い衝撃波なんかが、その証拠だ。

 希少とはいえ、数種類はあるとされる『魔剣』。もしかしたらその中に、彼が言った『雷』を操る『魔剣』というのも、存在しているのかも知れない。

「なるほど? 俺が『魔術師』だってわかったから、その男の話をしたって訳だな? 上手くいけばその『魔剣』を造り出した『魔術師』を特定し、なおかつ男の行方を追う手掛かりにもなると思って」

「ああ、そうだ。――だがどうやら、キミは本当に何も知らないようだな。さっきの非礼は詫びるよ。すまなかった」

 そう言ってジンは、深々と頭を下げた。

 だが俺としては、まだ気持ちの整理が付いていない。一度に色んな事を暴露されて少々混乱している。

 何があったのか……、というのは、あまり深く聞くべきじゃないんだろう。それは知り合って間もない俺がする役目じゃないはずだ。

「と、とにかく頭を上げてくれよ。別に気にしてないからさ……」

「……そうか? ならその言葉、有り難く受け取っておくよ、ディーン」

「……」

 何だろう……。何か凄く自分が悪い事をしている気がする。

 いや、何となく理由はわかってるんだ。彼は自分の事情を、少なからず俺に話してくれたというのに、俺の方はと言えば、未だに彼に隠している事がある。

 それは俺のフルネームであり、俺がどんな存在かという事だ。

『深紅魔法』の事。

 ミレーナの事。

 どこからどこまでを、どういう風に話せばいいのかわからないが、それでも俺は思う。

 このままじゃダメだ……!

「なぁ、ジ――」

 だがその時、彼の名前を呼ぼうとした俺の声は、遠くから響いてきた爆音によって掻き消された。

 俺とジンは同時にその方向を振り返る。

 音のした方向は遺跡の中心部。そこから土煙のようなものが、次々と舞い上がっていくのが見えた。

「あそこは確か、アルフレッドたちが向かった方向のはずだ……!」

「……おい、まさか」

 俺は思わずジンと顔を見合わせる。

 そして次の瞬間には、二人同時に駆け出していた。

 今回の作戦の目的は、遺跡を徘徊する『ゴーレム』を一体残らず破壊する事。

 ついさっきまでの俺たちと同じように、あそこでも激しい戦闘が繰り広げられている。

 どうやらジンに俺の事を話すのは、もう少し後になりそうだ。



ああ……、一体どれだけの間外伝に手を付けてなかった事か……。

やはり二足の草鞋なんて作者には到底無理だったという事なんでしょう(苦笑)


また時間掛かるかも知れませんが、それでも何とか書き上げられるよう努力していきます。

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