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Crimson & Silver -行動開始-

前回の更新から間が開き過ぎましたね、すみません(汗)

という訳で、外伝十話目です!

 崖下に降り立ってすぐ、俺は遺跡の敷地内に直進するアルフレッドのチームとは別の方向へ向かって走り出した。

 すると背後から、例の如くアルフレッドの怒号が飛んでくる。

「おい、てめぇ! 勝手な行動すんな! 俺の命令に従え! 聞いてんのかクソ野郎!!」

 最後の言葉には若干苛立ちを覚えたが、俺はアルフレッドの言葉を無視して走り続けた。

 元々俺は、アルフレッドたちの前で戦う気は無かった。俺が扱う『とある技術』をあいつらの前で見せれば、それだけで俺は何者なのかと尋ねられる事だろう。それを防ぐ意味も込めて、俺は単独行動を取る事にした。

 それに恐らく、アルフレッドたちが向かった先には、『ゴーレム』はあまりいないはずだ。俺には『ゴーレム』たちが集まっていそうな場所の見当が付いていた。

 今回の作戦は『ゴーレム』の討伐。つまり、より多く『ゴーレム』がいそうな場所を探してさっさと片付ければ、それだけ早く仕事が終わる事にも繋がる。

「要するに、さっさと『ゴーレム』を全滅させればいいんだろ? 俺に掛かれば楽勝だっつーの!」

 俺は心の底から溢れてくるような高揚感で、自分を抑えられなくなっていた。

 早く戦いたい。

 余計な事を考えずに、ただひたすら戦っていたい。

 金を稼ぐ為にこの作戦に参加したはずだったのに、いつの間にか俺は、そんな戦闘狂染みた考えの下、遺跡のある一点を目指して走り続けていた。

 俺が向かっているのは遺跡の南西。数多くの石柱が並ぶ石畳の道の中央に、高さ十五メートル程の大きさの、三角形型の神殿のような構造物がある。

 俺はその神殿から三十メートル程の距離を開けて、一旦立ち止まった。

「いかにもって感じの場所だよな」

 独り言を呟き、俺は乱れた息を落ち着かせて、ゆっくりと神殿に向かって歩き出した。

 それは丁度半分の距離。十五メートル程進んだ時だった。

 唐突に地面が短く、だが強く揺れたかと思うと、石畳の道の両脇に立ち並んだ石柱の根元が、砂を巻き上げながら口を開け、中から轟音を響かせながら無数の『ゴーレム』が現れた。

「ビンゴ、ってね」

 これは神殿に近寄ろうとする者に対して発動する、言わばトラップのようなものだ。

 作戦開始前、崖の上から遺跡の全体像を見渡した時、俺は遺跡の南西にあったこの神殿が妙に気になったのだ。

 確かに、遺跡の本殿の方にもいくつか気になる点は見られたが、そこまで行くとさすがに他のギルドメンバーと鉢合わせる可能性がある。それを避け、かつ多くの『ゴーレム』を倒せる場所として、俺はこの場所に賭けてみたという訳だ。

 (しか)してその賭けは、どうやら俺の勝ちらしい。現にこうして、俺の眼の前には数多くの『ゴーレム』たちが立ち並んでいるのだから。

「……とは言っても、こいつら全員を倒さなきゃ、完全に賭けに勝ったとは言えねぇけどな!」

 誰にともなく叫ぶと、俺は両腕を水平に構えた。

 その瞬間、俺の周囲で異変が起きる。

 ゴウッという唸り声のような音を立てながら、俺の周囲で発生したのは灼熱の炎。俺の紅い髪と同じ、深紅を思わせる炎。

 自然現象などでは決してない。この灼熱の炎は、『魔術』によって生み出されたものだ。

 そして『魔術』を行使する俺のような存在を、この世界では総じてこう呼ぶ。


『魔術師』、と。


「いきなりデカイの喰らわせてやるぜ!」

 発生した灼熱の炎は、渦を巻きながら俺の頭上に集束していく。

 出来上がった炎の塊は、続く俺の言葉を待っているかのように、空中で静止している。

「『深紅の流星(クリムゾン・レイン)』!」

 俺が叫ぶと同時に、炎の塊が弾け飛び、無数の火球となって『ゴーレム』たちの身体に降り注いだ。

 俺が扱う『深紅魔法』の中で、『深紅の流星(クリムゾン・レイン)』は一つの対象にその炎を集中砲火させれば、多大な破壊力を発揮する大技だ。

 だが今眼の前にいる『ゴーレム』たちは、装甲が非常に硬い上、数が多い。その為、さすがに一撃で倒す事は困難だったようだ。『ゴーレム』たちは装甲の一部を崩しながらも、活動を停止させるまでには至っていないかった。

 その巨体の一部を崩しながらも、ゆっくりと動き始める『ゴーレム』たち。

 俺は再び『紅蓮の爆炎剣フレイム・ロングソード』を出現させ、群がる『ゴーレム』の中心に向かって走り出した。

 疾走する俺を狙おうと、右側前方にいた『ゴーレム』が巨大な右拳を振り下ろしてきた。

「当たるか!」

 一声叫び、俺は高く跳躍してその一撃を躱した。足の下を通り過ぎる巨大な拳を一瞥し、その腕の上に着地する。

「うおおおおおぉぉぉっ!」

 まるで階段を駆け上がるみたいな感覚で、俺は『ゴーレム』の身体を踏み台にして進み、肩の辺りで再び跳躍する。そして『ゴーレム』の顔の部分に向けて、炎剣を振り下ろした。

 刀身が接触した部分から、爆発と炎が噴き出す。

 俺は『ゴーレム』の背後に着地すると、その背中に向けて、虚空に浮かべた十字の炎を放った。『烈火の十字爆撃(バーニング・クロス)』は『ゴーレム』の背中に飛来すると、紅い爆発を起こしてその装甲を破壊する。

「ドンドン行くぜーーッ!」

 俺は続け様に、辺りの『ゴーレム』たちに向かって、無数の『烈火の十字爆撃(バーニング・クロス)』を放った。

 あちこちで起こる紅い爆発。それを見ていると、俺は何とも言えない気分になった。

 自分は今、戦場にいる。数多くの『魔術兵器』を相手に、たった一人で戦い続けている。それが俺の胸の内に溜まっていた何かを、吹き飛ばしてくれていた。

 もっとだ……! もっと戦いを!

 いつの間にか、戦いを欲する戦闘狂のようになっていた俺は、自分の周囲に気を配る事を怠っていた。

 無数の『烈火の十字爆撃(バーニング・クロス)』の爆発で生まれた爆煙によって、俺は背後に迫る『ゴーレム』に気付くのが遅れた。

 巨大な鋼鉄の塊の一撃が、俺の身体に振り下ろされる、まさにその寸前だった。

「伏せろ、ディーン!」

「!」

 俺は声のした方を振り返るよりも、その指示に従う事の方を選んだ。

 その直後。俺の頭上を巨大な鋼鉄の拳が通り過ぎた。あと一瞬伏せるのが遅かったら、俺の身体は粉砕されていただろう。

「そのままジッとしてろ!」

 今度こそ俺は、声のした方を振り向く。

 するとそこには、両手に刀身の色が違う剣を握り、こちらに疾走してくる銀髪の少年の姿があった。

 確か名前は――、ジン・ハートラー! 何であいつがここに!?

「『(こく)(れつ)(けん)』」

 ジンが何かを呟いた瞬間、彼の右手に握られていた黒い刀身の剣が、微かに振動したように見えた。

 そしてジンは、その剣を『ゴーレム』に向けて振るう。

 するとその瞬間、黒い剣の刀身部分から黒い光のようなものが発生し、『ゴーレム』の右腕の部分に飛来した。

 と同時に、黒い光が『ゴーレム』の右腕を容易く破壊してみせた。

 俺はその場から飛び退いて、立ち止まったジンの隣に転がるように到達する。

「――悪い、助かった。だけどあんた、何でここに?」

 体勢を立て直しながら尋ねると、ジンは『ゴーレム』の群れを見つめながら口を開く。

「単独行動するキミを止めに来たんだ。本来は五人編成のチームを崩す訳にはいかないんだが、キミはアルフレッドの言葉に聞く耳を持っていないようだったからね。キミ一人の為に、チーム全体の配置を変える訳にはいかない。だから俺が一人で来たんだ」

「そりゃどうも。――それで? 命令違反の俺を罰しに来たのか?」

「そのつもりだったが事情が変わった。まずは眼の前の『ゴーレム』たちを片付ける。キミに罰を与えるのは、その後だ」

 何だか思っていた以上に、このジン・ハートラーと言う少年は手厳しい奴みたいだ。俺は苦笑しながら、ジンと同じように、眼の前の『ゴーレム』たちに視線を向ける。

「だったらお互い、絶対に生き残らなきゃな」

「そうしてもらわないとこっちも困る」

「行くぜ、ジン!」

「キミに言われるまでもない」

 そう言い終えた瞬間、ジンは素早く駆け出す。

 その後に続く為、俺は『紅蓮の爆炎剣フレイム・ロングソード』を構え、『ゴーレム』の群れに突貫した。



本編の方に気を取られ過ぎて外伝が疎かになるっていう(笑)

まぁ逆のパターンじゃないだけマシなんですかね……?


とにかく、今後はこのような事がないよう気をつけたいと思います。

頑張れ俺!

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