正義のリレー
19本目
「正義ってよくないですよね」
「んなバカな」
「まぁ百歩譲って正義がいいものだと仮定してですよ?」
「はぁ」
「欲に塗れた正義はよくないですよね」
「なんか、まぁ。例えば?」
「正義でマウントとか」
「よくない」
「正義で一方的に殴りつけて憂さ晴らしとか」
「めっちゃよくない」
「ほら、正義よくない」
「ホントだ。いや違くて。それは正義じゃなくて正義を利用するやつが悪いって話で」
「じゃあ正義は悪くないと?」
「どう考えてもそうじゃん。使う人の問題であって」
「正義は道具だと」
「うん?」
「バカとハサミと正義は使いようだと」
「ちょ待」
「理論武装、って聞いたことあります?」
「はい」
「凶器扱いということでよろしいですね」
「よろしくないわ!」
「わがままな……」
「これオレ悪いの?」
「そんなことまだ言ってません」
「……まだ?」
「ではお聞きします。凶器でないなら、正義とはなんですか?」
「正義とは……」
「3」
「え?」
「2」
「ちょ」
「1」
「論拠もなく否定するだけですか」
「いやカウントダウンはひどい」
「ひどい?悪いということですか?」
「いやそこまでは」
「私は悪くない。ありがとうございます」
「そうは言ってないんだ」
「話を続けましょう」
「聞けって」
「はい、なんでしょう?」
「…………」
「…………?」
「話の続きをどうぞ」
「はい。さて、凶器についてですね」
「違」
「はい?」
「いやもう、はい、それで」
「バカもハサミも正義も、私欲の為に使うのはよくありません」
「言い方」
「これらは承認欲求や自己顕示欲を満たしたり、ましてやマウントを取って一方的に殴りつけ、反撃しようものならそれすら攻撃材料に使って叩き潰すなど、到底許されるものではありません」
「……なんかあったの?」
「何か?」
「いえ」
「ひとたび悪と断じられたが最後、残された道は逃げるか諦めるかの二択。どちらが悪と言うべきでしょうか!」
「……やっぱなんかあったよね?」
「ありません!」
「なんかごめん一旦落ち着こう?」
深呼吸。
「まぁ、バカを使って欲求を満たそうとするのは」
「待って待って。バカの話はしてません」
「失礼、そうでした」
「なんかヤバい方向に行きかけませんでしたか?」
「まさか。さて、正義の話でしたっけ」
「まぁその、落ち着いて?ホントに」
「至って冷静不時着です」
「墜落しないで」
「失礼、沈着でした」
「不安しかない」
「さて、正義対悪なんて物語はよくありますが、現実においては正義と相対するのはおおむね別の正義ということになります」
「よかった、帰ってこれた」
「争う以上、勝たなければなりません。勝てば官軍、負ければもはやそれは悪です」
「まぁ確かにそうだけども」
「となれば、勝つために必要なのは洗練された技術です」
「うん?」
「勝つためには手段を選んでいられません。いや、違いますね。すみません」
「あ、はい」
「手段はしっかり選ばないとですよね」
「ちょ待」
「より確実に。より効果的に。マウントを取る隙など与えずにヤツを蹂躙し、共に勝利の美酒に酔いしれようではありませんか!」
「私欲!よくないって自分で言ってた」
「瑣末なことです!やられた方は一生引きずるんです分かりますかこの気持ち」
「もはや私怨」
「いいえ。これは正義の復讐です!」
「あかん。お巡りさん助けてー!」




