表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
琴陵姉妹の異世界日記  作者: A愛
第一章【終わりの始まり】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/23

第8話 テイムさせました

「……きて、起きてってば! 容子(まさこ)、いい加減に起きろっ!!」


 視界が揺れる。


 いや、世界が揺れているのではない。

 私が揺さぶられているのだ。


 拘束揺さぶり。


 容赦なし。


「うぅ……はよ……てか何……」


 夢の中では札束の海で平泳ぎしていたというのに。

 あと少しで“億”に手が届いたのに。


 現実は非情である。


 頭をガシガシ掻きながら起こした張本人を見ると、宥子(ひろこ)は額に青筋を浮かべていた。


「アンタが起こせって用件メモしてたんでしょーがっ!!!! っかぁーーーーーー腹立つ!」


 メモを突き付けられ、私は数秒フリーズ。


 ……ああ、書いたな。


 寝る前の私、優秀。


 起きた後の私、ポンコツ。


「悪い忘れてたわ。うん、取りあえず私を契約(テイム)してくれ。」


 真顔で言った。


 すると宥子(ひろこ)は三歩下がり、変質者を見る目になった。


「ごめん、容子(まさこ)……私、そういうのに偏見は持ってないけど、自分の身に降りかかるのは無理。無理! 絶対無理ぃ!!」


「は?」


 何を想像した。


「違う違う違う! そういう意味じゃない!」


 私は布団から起き上がり、理論武装に入る。


「私も向こうの世界に興味あるし、渡し忘れた物もあるし。契約(テイム)ってさ、対象と魔力的に繋がるんでしょ? だったら私も異世界に引っ張れるんじゃね?って話」


 沈黙。


 宥子(ひろこ)の目が、ゆっくりと理解へ移行する。


「……アンタ異世界に来るの? マジ? ドM?」


 失礼極まりない。


 私は即座にアイアンクローを発動した。


「物は試しだ。やってダメなら諦める。それに確認したい事もある」


 さらに畳み掛ける。


「あと、このキャリーケースとそこにある箱、マジックボックスに収納しといて」


「増えてるんだけど!?」


「気のせい」


 ◇


 朝食を終えた後、私はソファ中央に仁王立ち。


「さあ、やれ」


「ほんとにやるの?」


「早く」


 半ば強制的に、宥子(ひろこ)が私へ手をかざす。


 空気が一瞬、震えた。


 見えない糸が絡みつく感覚。


 胸の奥が、ほんのり温かい。


「あ、出来た」


 え、成功?


 想定外の即答。


「じゃあステータス! 早く!」


「ステータスオープン」


 空間に半透明のウィンドウが展開する。


---------STATUS---------

名前:未設定(琴陵(ことおか)容子(まさこ))

種族:人族

レベル:1

年齢:25歳

体力:8

魔力:11

筋力:5

防御:6

知能:20

速度:1

運 :10

■装備:ミックマウスTシャツ・黒のパンツ

■スキル:料理50・裁縫50・鍛冶42

■ギフト:なし

■称 号:なし

■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命

■ボーナスポイント:0pt

-------------


「……」


 数秒の静寂。


「え? レベル低くね?」


 25歳、レベル1。


 人生ハードモード。


「体力8って何。速度1って何。ナメクジ?」


「うるさい」


 だがスキルは悪くない。


「料理50、裁縫50、鍛冶42……生活特化型か。戦闘スキル皆無は痛いけど、ポイント入ったら回復系、彫金、錬金、魔法、刀は取りたいな」


 私は早口で未来設計を口にする。


 頭の中では既に産業革命が始まっている。


「ナニコレ……」


 宥子(ひろこ)は呆然。


 私は拳を握った。


「よし、決めた。私も行く」


「は?」


「ちょっと着替えてくる」


 ◇


 クローゼットを開け、戦闘兼作業スタイルへ換装。


 パンク系に改造したドラゴンフライジャケット。

 機能性重視のブーツ。

 装備は最低限に抑える。


(私は前衛じゃない。後方技術枠だ)


 玄関隅のキックボードのバッテリー残量確認。


 よし、満タン。


 リビングに戻ると——


 魂が抜けた宥子(ひろこ)がいた。


「戻ってこれるよね……?」


「理論上は」


「理論上って何」


 私は姉の腕時計を掴む。


「時間合わせるよ」


 サイエス時間にペンダント型時計を同期。


 カチ、カチ、と秒針が重なる。


 空気が張り詰める。


 胸の奥で、契約(テイム)の糸が共鳴する。


「行くよ」


「ちょ、心の準備が——」


 私はその腕を掴み、玄関へ引きずった。


 扉の前。


 異界へ続く、見えない境界線。


「初異世界、か」


 怖くないと言えば嘘だ。


 だが。


 未知は嫌いじゃない。


「ほら、しっかりして。前衛様」


「アンタほんと図太いよね!?」


 空間が歪む。


 足元が浮く。


 重力が裏返る感覚。


 視界が白く弾け——


 次の瞬間。


 私は、異世界(サイエス)の大地を踏んでいた。


 レベル1、速度1。


 戦闘力ほぼゼロ。


 だが。


 頭脳と技術と根性はある。


「さて」


 私はゆっくりと笑った。


「産業、起こすか」


 琴陵(ことおか)姉妹、初の同時参戦。


 サイエスの運命が、今ちょっとだけ揺れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ