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琴陵姉妹の異世界日記  作者: A愛
第一章【終わりの始まり】

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第5話 容子、姉に武器を装備させる

 宥子(ひろこ)め。


 折角こっちが徹夜で用意した武器一式と商売セットを、綺麗さっぱり置き去りにしてサイエスへ行きやがった。


 死にたいのか、あいつは。


 帰宅した瞬間、私は無言で詰め寄った。


「お前は死にたいのかぁああああ!!?」


 そのままギッチギチに締め上げる。


「ギブギブ! 死ぬ死ぬ! 中身があああああ!!」


「死ね!!」


 腰をロック。逃がさない。


 数分ほどジタバタしていたが、やがて宥子(ひろこ)は私の腕の中でぐったりと沈黙した。


「……ふん。」


 ペイっと廊下へ放り投げる。


「……痛い。」


 ぐすぐすと情けない声。


 私は一瞥してからリビングへ戻った。


 ドカッとソファに腰を下ろすと、数秒後に宥子(ひろこ)も転がるように隣へ寝そべる。


「で? たった一日でどんな武器を用意したんだよ。今のところ万能包丁とゴキスプレーで対応できてるから出番ないと思うけど。」


 ……はい?


 私はゆっくり視線を向ける。


(やっぱり時差あるな)


 向こうでの“一日”は、こっちでは一週間。


 そして何より。


「万能包丁とゴキジェットでモンスター退治?」


「うん。結構いける。」


 サイエスの生態系どうなってる。


 ふむ、と顎に手を当てていると、


「これ、お土産。」


 ペイっと渡されたのは、趣味の悪い異世界版コケシ。


「……随分と趣味が悪くなったね。」


「私の趣味じゃないから! 身代わり人形なんだって。瀕死状態から一度だけ守ってくれるらしい。体力は30%しか戻らないけど。」


 さらっととんでもない説明をする。


 なるほど、RPG定番アイテム。


(地球で発動するかは不明……)


 試す気はない。絶対にない。


 とりあえず万が一の保険だ。


「即死回避+回復アイテム併用前提だね。」


「だよねー。」


 そして私は淡々と告げる。


「ちなみに。あんたが向こう行ってる間、こっちでは一週間経ってる。」


「……は?」


 静止。


「蛇ちゃんの世話は!? ちゃんとしてるよね!?」


「第一声それかよ。」


 紅白(こうはく)赤白(せきはく)のケージを凝視して確認している。


 問題なしと分かると、ようやく安堵。


(時間差より蛇優先か)


 まあ、世話くらいはする。


「それより。瓶詰め調味料、売れた?」


 手を差し出すとベシッと叩かれた。


「売ってない。憲兵に開拓民と間違えられたから。設定が“村が魔物に襲われて出稼ぎ”なんだよ? 調味料大量販売とか不自然すぎるでしょ。」


「ふーん。妥当。」


 少しずつ流す作戦か。


「もう少し大きい街で卸した方がいいね。金は?」


「金貨まで手に入れたよ。」


 テーブルに置かれた一枚。


 私は手に取り、刻印と重量を確認する。


「偽造可能レベルだね。」


「物騒なこと言うな!」


「技術が遅れてるって意味。向こうで偽金貨掴まされる可能性あるよ。」


 真っ青になる姉。


 私は続ける。


「宝石や真珠も価値ありそう。養殖技術ないなら揃い玉は高値。向こうで買った物は必ずサンプル一つ置いてって。あと金貨二枚追加ね。含有量調べるから。」


「はい……」


 従順。


 ◇


「で、今度はちゃんと装備持ってくよね?」


 私は巨大な箱を差し出す。


「重っ!!」


 下敷きになる宥子(ひろこ)


「テント、寝袋、着替え。あと売却用装飾品。封印されしお宝も新品から中古まで。」


「私のコレクション売るの!? 鬼!」


「無職は身を削れ。」


 生活費は切実だ。


 泣きながらアイテムボックスへ収納していく。


 そして私は次の箱を開けた。


「次、武器説明。」


 実物を見せつつ、操作は動画で解説。

 弾なしで動作確認を何度も繰り返させる。


「普通に木板くらいは抜ける。低レベル魔物なら対応可。」


 本当はそれ以上だが言わない。


「充電器、予備バッテリー、使い捨て弾。ソーラーパネルも。」


「凄い量……」


「命には代えられない。」


 諭吉三十枚が飛んだ。痛い。でも必要経費。


 私は本気だ。


 ◇


容子(まさこ)、今後の活動なんだけど。」


「聞こう。」


「始まりの町、エリアボスのせいでポーション品切れ。移動できない。」


 始まりの町。ネーミング安直。


「エリアボスって?」


「ゴールデンリトリバー一・五倍の狼。ワーウルフ。レベル1初戦がそれ。自称神縊りたい。」


 鬼の形相。


「これで癒されろ。」


 モフモフのネズミーぬいぐるみを押し付ける。


「ネズミー行きたい!!」


「金を稼げ。」


 現実は非情。


 金貨換算、約二万円相当。


 スキルで錬金あれば金塊化が理想。


 ◇


「儲けは?」


「金貨30・銀貨8・銅貨8・青銅貨4。」


 なかなか。


 私は金貨二十五枚を鍵付き貯金箱へ。


「純度調べる。小銭問題はギルド預金機能確認。」


「頭良いな。」


「気付いてなかったの?」


 ツッコミ。


「薬草採取するからバケツとスコップ。あと弁当、肉多め。」


「はいはい。」


 アイテムボックスは時間停止。


 出来立て持参可能。


 宥子(ひろこ)が準備に去る。


 私はキッチンへ向かった。


 フライパンに油を引く。


 肉を焼く。


 保存用も含め大量生産。


(姉が前線、私が兵站)


 役割は明確。


 神が仕組んだ舞台でも。


 私達は勝手に攻略する。


 ジュウ、と肉が焼ける音が響く。


 戦いは続く。


 だが今は――


 腹が減っては戦はできぬ、だ。


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