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琴陵姉妹の異世界日記  作者: A愛
第二章【セブール】

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第23話 Cランク昇級試験

 露店で自作ポーションやら三〇〇円ショップのアクセサリーやらを売り払って戻ってきた宥子(ひろこ)と合流し、私達は一度宿に戻って今後の方針を決めることにした。夕暮れの光が差し込む部屋で、ベッドに腰掛けながら二人で顔を見合わせる。


 「私のランクがFだから宥子(ひろこ)のランクとは釣り合わないんだよねぇ」


 ため息交じりに言えば、


 「そりゃーね。一緒のパーティを組めるかも不明だし、困ったな」


 と宥子(ひろこ)も腕を組む。彼女は既にCランク。私はF。規約上、ランク差が大きすぎると正式パーティ登録が難しいらしい。仮登録は出来ても、受注制限や報酬分配で不利になる。


 二人で「どうするかー」と唸っていると、窓の隙間からにゅるりと赤い影が入り込んできた。


 <昇級試験受けたらえーやん。>


 いつの間にか脱走していた赤白(せきはく)である。相変わらず気配を消すのが上手い。


 <紹介状もないのに受けれんよ。>


 私が返すと、


 <始まりの町のギルドのおっさんが容子(まさこ)の存在を忘れとったで押し通せば良えんや。街通しのやり取りやったら時間掛かるしバレへんって。>


 さらっと犯罪スレスレな提案をする。


 <バレないょー>


 紅白(こうはく)とサクラまで同意した。


 やっちゃえー、と弾けるこの空気。誰の影響だ? ……宥子(ひろこ)か。宥子(ひろこ)だな。


 混沌とした空気の中、当の本人はふっと笑った。


 「正攻法で行けば良いじゃない。こっちはダリエラさんを知ってるし、ギルドの失態もあるんだから、私がアンタを昇級試験に受けさせるわよ」


 ニヤァっと意味深に笑う。その笑みは完全に“交渉”ではなく“脅迫”の類だ。


 どうやら冒険者ギルドは、宥子(ひろこ)に脅される運命にあるらしい。合掌。


 後ろで蛇ちゃんズ+サクラが「鬼だ」とか「交渉じゃなくて恐喝」とか囁いているが、宥子(ひろこ)は華麗にスルーした。


 「じゃあ、サクっと冒険者ギルドに行こうよ!」


 私は立ち上がる。


 「明日でも良くない?」


 面倒くさそうな宥子(ひろこ)


 「化粧して服もバッチリなんだよ。それを明日もするの? てか出来るの?」


 ズボラ癖出さない? と畳み掛けると沈黙した。


 分かってるじゃないか、宥子(ひろこ)よ。


 「折角化粧してるんだからサッサと済ませちゃうよ!」


 私は彼女の腕を掴み、半ば強制的に宿を出た。


 ◇ ◇ ◇


 宥子(ひろこ)を先頭に冒険者ギルドへ到着。中は相変わらず騒がしい。


 「すみません、ダリエラさんはいますか? 昇級試験の事でお話しがあるんですが」


 宥子(ひろこ)はギルドカードを提示する。周囲の視線が一斉に集まった。どうやら彼女はここで相当な噂になっているらしい。


 すぐに奥からダリエラさんが現れた。


 「宥子(ひろこ)さん、何か不手際でもあったかしら?」


 柔らかな物腰だが、目は明らかに警戒している。


 「ダリエラさん側には不手際は無いですよ。私の方の不手際です。私の妹も一緒に昇級試験受けてなかったので受けさせに来ました」


 「あら? 昇級試験の紹介はヒロコさんだけでしたわ」


 その言葉に宥子(ひろこ)は涼しい顔で続ける。


 「本当なら始まりの町まで戻っても良いかなって思ったんですけど、また此処で試験ですよね? 紹介状が無いだけで門前払いなんて無いですよね? あ、でもあの屑門番や人殺しOKな馬鹿職員に職務怠慢職員が湧いて出るから遠慮してます?」


 猛毒。


 美女の顔がビシッと引き攣った。


 「……大丈夫です。妹さんの昇級試験を受けられるよう手配します」


 十分ほどで準備が整う。


 「えっと、お名前は?」


 「容子(まさこ)です。宜しくお願いします」


 ぺこりと頭を下げる。


 試験場へ案内されながら私は確認する。


 「試験は一撃与えること。魔法使用可。どちらか気絶か死亡で終了、で合ってます?」


 「気絶した時点で終了よ。殺人は許してないわ。でも全力で挑んで大丈夫よ」


 太鼓判いただきました。


 ◇ ◇ ◇


 試験官は若い青年だった。


 「獲物は?」


 「爆薬と銃です」


 怪訝な表情(かお)


 「試験は俺に一撃与えること。気絶か死亡で終了だ」


 あ、ギルマスと言ってる事が違う。糞試験官に当たったらしい。


 「じゃ、始めましょうか!」


 「簡単に昇格できる試験じゃねーぞ。子供の遊びじゃない」


 ……喧嘩売られました。


 「構え!」


 合図と同時に青年がブーストで加速。私は条件反射で火炎瓶を投擲。


 轟音。


 爆炎。


 青年は必死に避けるが爆風で吹き飛ばされる。


 無傷な私。


 「Water(ウォーター)!」


 水魔法が飛ぶ。私は小型プラスチック爆弾を投下、視界を奪う。その隙にドラゴンフライを股間へ。


 発砲。


 「ギャーーーーーーアァァアアアア!」


 青年は崩れ落ちた。


 私は下級ポーションをぶっかけておく。EDになっても知らない。試験だし。


 壁が少し吹き飛んでいるが、まぁ誤差だ。


 ◇ ◇ ◇


 意気揚々と受付へ戻る。


 「宥子(ひろこ)勝ったよ!! 完全S勝利♪」


 ハグしようとしたら避けられた。悲しい。


 「何か爆発音が聞こえたんだけど……」


 鬼のような顔。


 「え? だって私の武器だもん。ちょっと壁が吹っ飛んだぐらいだよ」


 「大丈夫じゃないわよ! 弁済請求されたらどうすんの!」


 バチコーン。


 痛い。


 「試験官が気絶か死亡じゃないと終了にならないって確認したし、全力で良いって言われたもん!」


 胸を張ると、宥子(ひろこ)は深いため息を吐いた。


 その後、私はギルドカードを提出。


 結果――


 Cランク昇格。


 受付嬢が引きつった笑顔でカードを返してくる。


 周囲の冒険者達は微妙に距離を取っていた。なぜだ。


 こうして私は無事、宥子(ひろこ)と肩を並べるCランク冒険者になったのである。


 ……なお、修繕費の話は後日請求されるかもしれない。


 その時はその時だ。私は前向きに生きる。


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