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琴陵姉妹の異世界日記  作者: A愛
第二章【セブール】

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第18話 姉は私をティムしている事を忘れていました

 「ちょっと業務用(ぎょうむよう)スーパーと100円ショップに行ってくるわ」


 腰に手を当てて言い放ったのは、我が姉――宥子(ひろこ)である。


 そのあまりに唐突な宣言に、私は作業台の上から顔を上げた。


 「何しに?」


 当然の疑問だ。ついさっきまでサイエスだのギルドだのと異世界モード全開だったのに、いきなり庶民的ワードをぶち込まれても困る。


 宥子(ひろこ)はこともなげに答える。


 「商業ギルドで砂糖・塩・胡椒の取引があるから」


 なるほど、現代日本の物資をサイエスに横流し……もとい、輸出する気か。


 「OK! いってら」


 私はぐっと親指を立てて送り出してやった。


 お金になるなら頑張ってくれ。

 私は手伝わんが!


 玄関の扉が閉まる音を聞きながら、私はニヤリと笑う。


 さて、姉が真面目に商売している間、私は私でやるべきことがある。


 現在、私――容子(まさこ)が作っているのは、C-4ことプラスチック爆弾である。


 え? 物騒?


 知るか。


 今後はレベルの高いモンスターともやり合う可能性が高いのだ。火炎瓶なんてロマン兵器では心許ない。キングホーネット級を一撃で吹き飛ばす火力が欲しい。


 材料を慎重に配合し、粘土状に整え、信管を仕込む。


 「うん、いい感じ」


 舐めると死ぬレベルの代物だ。毒性も爆発力も折り紙付き。絶対に取り扱い注意。


 一個目が完成。

 二個目に取りかかったところで、玄関の開く音がした。


 「ただいま……。疲れたよ」


 ヒィヒィ言いながら帰ってきた宥子(ひろこ)は、買い物袋を両手にぶら下げている。


 私は鼻で笑った。


 「たかだか五分の距離じゃん。何言ってんの」


 すると即座に逆ギレ。


 「容子(まさこ)もやってみたら!? 私の気持ちが分かるよ!」


 キャンキャン吠えるが、


 「嫌だ。面倒臭い」


 一刀両断。


 ガクッと肩を落とした宥子(ひろこ)は、袋から砂糖や塩を取り出しながら言った。


 「これから小分けにして詰めていくから、邪魔しないでね」


 「はいはい」


 作業モードに入る姉。


 その背中越しに声が飛んでくる。


 「サクラのご飯まだだったから、あげてくれる? あげすぎ厳禁だからね!」


 サクラちゃんのお世話を任された。


 よし来た。


 ぷるぷるモチモチの愛しき存在、サクラちゃん。


 私は全力で構う。


 お饅頭。

 金平糖。

 ちょっと多めに。


 「美味しい? 美味しいよね?」


 ぷるぷる震えながらもぐもぐする姿が尊い。


 宥子(ひろこ)の「与えすぎ厳禁」は、宇宙の彼方へ消え去った。


 サクラちゃんが満腹でころんと丸くなったのを見届け、私は次の作業へ。


 リュック作成だ。


 前回、タガーケースと一緒に裁断までは終わっている。あとは縫うだけ。


 ミシンを走らせ、補強縫いを施し、裏地を整え――


 「いやっふぅーーーーーーー! 出来たぜぃ!!!」


 完成。


 シンプル和柄リュック。


 どうせ宥子(ひろこ)に横取りされる未来が見える。だから私はビジューを鏤めた豪華版を別に作るのだ。うひひ。


 しかし。


 ……あれ?


 さっきまでそこにいたはずの宥子(ひろこ)がいない。


 サクラちゃんもいない。


 リビングへ戻ると、テーブルにメモ。


 【サイエスへ行ってくるね。】


 はぁ~~ん???


 「何勝手にサクラちゃんとサイエス行ってんだゴラァ!!」


 即電話。


 数秒のコール音の後、繋がる。


 「何で置いていくのよ、馬鹿! 声掛けてよ!」


 すると冷静な声。


 「声掛けたのに無視スルーしたのは、お前じゃん。明日商談あるからサイエスで泊まるわ」


 は?


 帰ってこない?


 「私もそっち行くから帰ってこい!」


 連れてけコール発動。


 だが宥子(ひろこ)はきっぱり。


 「無理<キリ>!」


 「ドケチッ!」


 ケチケチどケチ野郎!!


 ならば。


 「私も行くもん」


 「いや、無理くね?」


 「さっき行けたんだから行けるはず!」


 ブチッ。


 電話を切り、私は玄関へ。


 サイエスに繋がれ――と念じながらドアを開ける。


 ガチャ。


 そこに立っていたのは。


 「……これちゃった」


 目の前に宥子(ひろこ)


 「……来ちゃったね」


 本当に来やがった、という顔。


 どうやら条件が判明した。


 宥子(ひろこ)がサイエスにいる状態なら、《契約》されている私――容子(まさこ)も玄関を通って来られるらしい。


 なるほど、テイム主従リンク的な何かか。


 「じゃあ私も来るね」


 当然のように言うと、


 「トラブル起こさないでよ?」


 釘を刺される。


 「はいはい」


 不貞腐れつつ、私は街へ散策に出た。


 石畳。露店。武装した冒険者。


 胸が高鳴る。


 私は子供じゃない。


 放っておいてよね、宥子(ひろこ)


 ――とはいえ。


 内心ちょっとワクワクしているのは、内緒である。


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