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琴陵姉妹の異世界日記  作者: A愛
第一章【終わりの始まり】

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15/22

第15話 私、異世界へ行っちゃいました


 「あー、蜘蛛を《テイム》したい……」


 ぽつりと呟きながら、私は天井を見上げた。


 だってさ?

 蜘蛛の尻から出る糸で作った服とか、絶対ふわっふわで気持ちいいに決まってるじゃん。しかも灰汁の強いあの三匹とは違って、性格は可愛い系希望。ここ重要。


 ……よし、夢を見るのはタダだ。


 アイテムボックスが無い現実にため息をつきつつ、私は多機能ウェストポーチとリュックの作成を決意した。


 デザインは当然シンプル系。無駄な装飾は削ぎ落とす。


 「今回は飾り無しでいいかぁ。生地は帯の余りと着てない着物で……THE和、って感じでいこう」


 型紙を起こし、まずはウェストポーチから取り掛かる。

 柄の綺麗な部分を選んで慎重にカット。


 「去年のお正月、これにお世話になったんだよねぇ」


 しみじみするけど、この帯、値段は五百円。

 着物専門の古着屋で見つけて「一年使えればいいや」と買った代物だ。


 私は結構な飽き性だ。新作が出れば飛びつく。でも未開封のまま処分、なんてこともザラ。

 だからこそ、こうして再利用できたのは良しとする。


 そして――六時間後。


 「完成ぃぃぃ!」


 和柄ウェストポーチ、堂々の誕生。

 ポイントは和風チャックの取っ手。レジンで和柄布をコーティングして取り付けたのだ。地味に可愛い。


 「防水もしないとね。スプレーどこだっけ……」


 作業部屋をゴソゴソ漁る。


 この部屋、宥子からは“ゴミ部屋”認定されている。

 私は物の位置を全部把握しているから問題ないのだが、宥子は今にも掃除しそうな顔をする。


 掃除したい宥子VSされたくない私。

 終わらぬ攻防。


 ……そろそろ鍵付けようかな。


 ちょうど宥子はサイエスにいるし、金貨で稼いでるみたいだし、鍵代くらい余裕で払えるでしょ。


 コーティングスプレーを吹きかけ、満遍なく仕上げたウェストポーチを吊るして乾燥。

 その後すぐ鍵屋に電話。今日来られるとのこと。


 私はご飯を食べながら待つことにした。


---


 やっぱり蛇ちゃんズがいないと寂しい。


 私が買ったのに、宥子に強奪され、挙句の果てに《テイム》までされてるってどうなの?

 このまま全部持っていかれたらどうしよう。


 「私ってバックアップ要員だよね……。宥子、向こうで問題起こしてないよね?」


 不安がよぎる。


 その予感が見事に的中していたと知るのは、後の話。


 約束の二週間が近い。

 ちゃんと帰ってくるはず……だよね?


 《いつ帰って来るの? 用事終わった?》とメールを送り、携帯をしまう。


 テレビをぼーっと眺めていると、ピンポーン。


 「宅配便ですー。サインお願いします」


 荷物を受け取り、宛名を見る。


 「宥子(ひろこ)宛て? ニャルカリってフリマかよ!」


 どうせブランド物のバッグとかだろう。

 あの人、収集癖が分かりやすい。


 ……まあ、私も昔サングラス集めにハマってたから人のこと言えないけど。


 そういえばチャネルのフレームにレンズ入れ替えたいって言ってたな。

 ついでに私のもやるか。


 宥子お気に入りのチャネルとガッチのサングラスを持ち、自室のチャネル二本も回収。

 ブルーとブラウンに変更予定。宥子は色にこだわりないし問題ないでしょ。


 そこへ鍵屋到着。

 無事に私の部屋に鍵が取り付けられた。


 完璧。


---


 「時間あるし、眼鏡屋さん行くか!」


 着替えて、財布とサングラス四本をバッグへ。

 エコバッグには洛陽住藤原国広とハンマー。確認OK。


 玄関を開け――


 「……は?」


 サイエス。


 え、マジ?


 アイテムボックス無しの私は、武器と言えば洛陽住藤原国広とハンマーのみ。

 あとエコバッグ。


 とりあえず電動バランススクーターに乗り、近くの街を目指す。


 時速三十キロ。遅い。でも文句言ってる場合じゃない。

 現在地確認しないと命がヤバい。


 一時間後、遠くに街が見えた。


 道中、モンスターと何度も遭遇。レベル上がってる気はする。

 怖くてステータスは見てないけど。


 特にヤバかったのがキングホーネット。


 女王蜂よりでかい。硬い。怖い。


 「頭突きってアリなのぉ!?」


 いきなり突進してくる巨体をかわし、関節へ洛陽住藤原国広を突き立てる。


 「グギャッ」


 悲鳴。でも止まらない。


 硬っ!


 もう一撃。同じ箇所へ。


 腕、もげた。


 ラッキー――と思った瞬間、カウンター直撃。吹っ飛ぶ私。痛い。


 「腹立つなぁぁ! カチ割ったるわぁ!!」


 百均ハンマーで頭部を連打連打連打。


 「文明機器なくてもなぁ! 蜂モンに人間様が負けてたまるかぁ! 金銀財宝ドロップせいやぁぁぁ!」


 羽攻撃? 知るか。

 ハイテンション状態の私は止まらない。


 ついにキングホーネットは泡となり、ドロップ品が地面に転がった。


 羽、毒針、毒袋、そして赤ちゃんの手サイズの青い魔石。


 「おおぉ……高そう……!」


 いそいそ回収。


 他の低レベルモンスターはスクーターで轢いては回収を繰り返し、なんとか街へ到着。


 ……そこで待っていたのは。


 「止まれ! 何者だ!」


 門番とのトラブル。


 そして私は――


 警備兵にドナドナされていったのだった。


 宥子(ひろこ)がその街にいるとも知らずに。


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