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8話 ニコニコ作戦

倉庫の中でギャングたちが焦っていた。

ナイフをどこに向けていいのか分からないからだ。

その周りを高速で動き回る少年。

目で追うのはギャングたちには困難だった。

聞こえるのは、靴が地面を擦る音だけ。

「そっちだ!」

「いやそっちだって!」

叫びが飛ぶ。

いつ殺されてもおかしくない状況なのに、

タトゥーの男が死んでから誰も死んでいない。

まだ二十四人残っていた。

高速移動しているのは音鳴。暗殺者である。

音鳴は困っていた。

いつでも殺せるのに、あれから誰も笑わない。

――台本通りに殺せない。

だからとりあえず右手に刀を持ったまま

高速で動いていた。笑ったやつをいつでも殺せるように。

「な、何やってんのよ!」

倉庫にお嬢様の声が響く。

泣き止んではいたが、顔には殴られた跡が残っていた。

「早く殺しなさいよ!」

「キュッ」と音を立てて、

お嬢様の前で音鳴は急停止した。

「うわぁ……」

ギャングが驚く。

まるで突然現れたように見えたのだ。

お嬢様は意外と平気そうだった。

見えているはずはないのに。

「さっきから何やってんのよ」

「なかなか上手くいかない。

さすが三つ目の難所だなぁ」

「はぁ? あんたならすぐ殺せるでしょ。

あいつら、あんたのこと見えてないでしょ」

「、、、暗殺って難しいな」

二人が話していると、ギャングの一人が

音鳴にそっと近づいた。

ナイフで刺そうとした瞬間、音鳴が振り向く。

「バツン!」

蹴りが入り、ギャングは吹っ飛んだ。

「大丈夫だよね。まだ笑ってないのに、死んでたらまずいよなぁ」

「笑ったとか笑ってないとか、どういう意味よ」

「……どういう意味って、

ギャングたちが笑わないと殺せないんだ」

「なんでよぉ!」

「……なんでなんだろう」

お嬢様は訳の分からない音鳴を睨む。

その後、ため息をついた。

「まぁいいわ。じゃあ私を先に助けなさい」

「あー……それも無理。

先にギャングを殺さないと」

「なんでよぉ!」

お嬢様は顔を赤くしながら叫んだ。

音鳴はぽつりと呟く。

「泣いたり怒ったり、大変そうだね」

その時。

「ククッ」

ギャングの一人が笑った瞬間、

地面を蹴る大きな音。

一瞬で首が落ちる。

「これで二人。意外と時間かかる……どうしよう」

音鳴が困ったように首を傾ける。

「ねぇ!」

お嬢様が呼ぶと、

音が鳴り、音鳴は瞬時にお嬢様の前に現れた。

「なに?」

お嬢様の声が急に小さくなり、

音鳴は耳を近づけた。

「笑わせるって、どの程度でいいの?」

「ん? うーん……にやければ怒られないんじゃないか」

「誰に怒られるのよ」

「ボス」

「ボスって誰よ」

ボスは何者なんだっけ……。

「……喜劇王?」

「知らないわよ……まぁいいわ」

二人は、ギャングには聞こえないような声で話していた。

「私は早く助かりたいの。もう限界なの。

だから……私が笑わせるのでもいいの?」

お嬢様は睨んでいたが、顔は赤かった。

「いいんじゃない」

「だからこっち見ないでよ」

音鳴はお嬢様に背を向ける。

沈黙のあと――

「ジャバァッ」

と音が鳴り、お嬢様の足元に水溜まりが広がった。

顔は真っ赤だ。

ギャングたちがそれを見て笑った。

「ははは、やべぇお嬢様怖くて漏らしてんぞ!」

「はははは!」

笑い声が広がる中、

静かに口角を上げる少年が一人だけいた。

「早く殺しなさい!

あんたが殺すなら証拠なくなるし……!

別に我慢できなかったとかじゃないから……!」

真っ赤な顔で、恥ずかしそうに

お嬢様が声を荒げる。

だが音鳴は黙ったままだった。

いや――笑ったギャングを殺すための

最短ルートを探していた。

「聞いてるの!?」

お嬢様が呼んだ瞬間、音鳴が消える。

地面を蹴る音が二十三回。

笑い声が一つずつ消えていく。

三秒後。

「ドン……ドン……ドン……」

首が落ちる音がした。

そして体が、ドミノのように倒れ、

血が湖ができた

お嬢様は声が出なかった。

(本当にすごい暗殺者かも、ばかそうなのに)

音鳴は一瞬で目の前に戻り、楽しそうに言った。

「お漏らしって結構笑えるんだね」

お嬢様は音鳴を睨み

「殺すわよ」

「え? 褒めたのに。なんで?」

その後音鳴は沈黙したまま、

お嬢様を見つめた。

お嬢様はたじろぐ。

「な、なによ。早く縄切ってよ。

ギャング全員死んだでしょ」

「四つ目の難所……」

音鳴はお嬢様の顔を見て、冗談抜きで言った。

「俺も漏らせば笑う?」

「あんた、まじで殺すから」

四つ目の難所が一番難しいかもしれない。

音鳴はそう思った。

台本には

「お嬢様を笑わせてから助けろ」

とあった。

だがお嬢様は笑わず怒っている。

理由は分からない。

「早く切りなさいよ!」

お嬢様が言い続ける中、

音鳴は笑わせる方法を考えていた。

無視していたわけではない。

その時。

「パチ…パチ…パチ…」

拍手の音。

「すごいねぇ。さすがは暗殺者、音鳴」

ギャングから離れた場所に座っていた、

腰に剣を携えた茶髪の男が歩いてくる。

お嬢様は睨みつけた。

「あいつも殺して! あいつが私をさらったのよ!」

「でもなぁ……台本にないんだよなぁ。

ギャングを殺して終わりなんだけど」

音鳴は台本を確認した。

四つ目の難所の次のページに

「追加シナリオ」があったことを思い出す。

音鳴が台本を読みながら尋ねる。

「ねぇ。もしかして……千草 亜嵐」

「あぁ、そうだよ。僕を知ってるなんて光栄だね」

「ボスのこと知りたいんだろ」

「よくわかったねぇ〜」

「俺もボスのこと、あんまり知らないんだけど」

「そうか。やはり語ってはくれないか」

亜嵐は腰の刀を抜いた。

刀身が赤黒く輝く、禍々しい刀。

追加シナリオにはこう書かれていた。

「関わる人物――千草 亜嵐

理由――ボスを知るため

刀を構えた瞬間、追加シナリオ開始

注意――妖刀持ち」

「そうかぁ、これが追加シナリオか」

「どうしたの? 説明してよ!」

お嬢様は困惑し、音鳴の顔を見て尋ねた。

「まぁ簡単に言うと――

お嬢様の縄を解くのは、あいつとの戦いが終わってからになったらしいよ」

「どういうことよ! 説明になってないわよ!」

音鳴はお嬢様から離れ、亜嵐へ近づいていく。

お互いに歩み寄り、残り五メートルで――

二人は同時に姿を消した。

「ガキン!」

金属音が鳴り響く。

現れた時には、

刀と刀が噛み合っていた。

――追加シナリオの始まりである。

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