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台本通りの暗殺者  作者: 多幸
2章 依頼編
24/30

5話 ゾンビ

台本通り、歓楽街に着いた。

歓楽街とは「大人の街」だと説明が書いてあったが、何が大人なのかは正直よく分からない。

確かに、オトナが外で寝ている。

これのことなのかもしれない。

家の中にいない人が多い。

ブルーシートの上で生活している人間が、やけに目についた。

よほど家の中が嫌いなのだろう。

「えれぇアホそうなガキや。外のもんかぁ」

上から声がした。

顔を上げると、二階の窓から、もじゃもじゃ頭の男が覗いている。

「何してんの」

「お前こそ、何してねん」

……何しに来たんだっけ。

俺はリュックから冊子を取り出し、確認する。

シナリオでは“霊六”という男と会うらしい。

「お前、霊六?」

「そうだ。なんで知ってねん」

「書いてあるから」

台本に書いてあるなら、間違いない。

霊六は眉をひそめた。

「よう分からねぇけど……まぁええわ。最近、えれぇべっぴんさんが来たけど、お前の知り合い?」

べっぴん?

俺は「べっぴん」という名前を知らない。

「べっぴんって誰」

「知り合いちゃうんか。危ねぇから、家上がれや」

俺は次のシナリオを確認する。

……ゾンビに遭遇と書いてある

ゾンビってなんだっけ。聞かないと。

そう思ったとき、もっと気になるものが目に入った。

天井の上。

「え……あれ何?」

屋根の上から、よだれを垂らした男がこちらを見ていた。

よだれが地面に落ちる。

じゅう、と音がして、焦げた匂いが広がる。

俺は指をさす。

「上の人、知り合い?」

「上の人ってなんや。この家は二階しかないで」

霊六が、ゆっくりと上を見る。

「……鬼やん!」

慌てて窓を閉める音がした。

「ねぇ、お前だれ?」

よだれ男は屋根から飛び降り、一直線に俺へ向かってくる。

そして――抱きついた。

よだれが、汚い。

「何してんの? 結構力あるね」

台本にあったかな。

俺は冊子を読むため、腕の力で無理やり引き剥がす。

「ぐわぁ……ぐわぁ……」

なにいってんの?

頭がおかしいのかもしれない。

台本を読んでいる間も、

ぐわぁぐわぁ言いながら

何度も抱きつこうとしてくる。

俺は左手を伸ばし、よだれ男の頭を押さえた。

「なるほど……なるほど」

……よだれ男の台本はない。

どうしよ、わからない。

「ぐわぁ!」

「ぐわぁって、何?」

その瞬間――

突風が吹いた。

風圧が地面を削り、よだれ男だけを正確に吹き飛ばす。

腕と足が千切れ、地面に転がる。

それでも、ピクピクと動いている。

(……あれで死なない? 異能者?)

風の来た方向から、声がした。

「子どもが襲われていると思ったら……音鳴だったのね」

振り向く。

扇を持った紫髪の女が立っていた。

「色香じゃん」

「久しぶりね」

「色香、台本になかったのに。よだれ男、死にかけてるけどいいの?」

色香は小さくため息をつく。

「……あれはゾンビよ」

「ゾンビ? あれがゾンビかぁ」

色香はすごいなぁ。

ぐわぁぐわぁしか言わないのに、正体が分かっている。

色香は茶風臨の暗殺者。

俺の仲間。

ボスでさえ、「仕事ができる」と認めている。

「音鳴……ボスがあなたをここに行かせたのよね」

「そうだよ」

「そう……やっぱり。隠せなかったわね」

なぜか悔しそうに呟く。

「まぁいいわ。これで一つ分かった。この歓楽街が“当たり”ってことね」

「何の話?」

「依頼の話よ。ボスがあなたを寄こしたってことは、意味があるでしょ。手伝ってもらうわよ」

俺は台本を見る。

……ゾンビの次は、“妖艶な暗殺者に従え”。

妖艶って誰のことだろう。

色香には言わない。

「色香、俺、妖艶な暗殺者に従わないといけないから無理だ」

一瞬、色香が固まる。

それから、声を出して笑った。

「大丈夫よ。妖艶な暗殺者って私のことだから」

「へぇ……そうなんだ」

妖艶って、なんだろう。

でも色香が言うなら、間違いない。

俺は色香に従って行動するらしい。

「じゃあまず、依頼の内容を話すから。この中に入りましょ」

色香に連れられ、霊六のいた家に入っていく。

……そういえば、何の依頼か聞いていなかった。

まぁ、いいか。

これから聞けばいい。

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