10話 異能
「カレーはカレー!」「フットンが吹っ飛んだ〜!」「客が来なくて、困客だ」
他にも無数のダジャレのような声が響いていた。
音鳴の異能《音操作》。
録音したボスのギャグを再生しているのだ。
音鳴はギャグを撒きながら高速移動し、
亜嵐に斬りかかる。
だが——
音鳴の身体はもうボロボロだった。
全身から血を流し、亜嵐の妖刀《亜飲》に圧倒されている。
音鳴が攻めれば、亜飲は瞬時に巨大化し盾の形へ変化。
防御の後、肥大した刃で反撃される。
「がはっ!」
音鳴は壁に叩きつけられ、壁が凹む。
音が消え、空気が止まる。
肩で息をしながら、音鳴は立ち上がった。
「はぁ……はぁ……これ勝てないかも……」
そう呟いた時、亜嵐が苛立った声を出した。
「さっきから何をやっているのかなぁ。
僕は君の力が見たいんだけど……ふざけているの かい?」
「別にふざけてないんだけど……」
亜嵐は黙った後、淡々と言った。
「この程度なのか君は。失望したよ。
、、、、死んでくれ。」
亜飲が刀を巨大化し、振り下ろされる。
ドンッ!
音鳴は地面を弾き、高速移動で回避。
振り下ろされた跡の地面はクレーターのように粉砕されていた。
音鳴は指を鳴らす。
倉庫のあちこちから音が再生される。
音鳴の姿が消える。
攪乱して隙をつく——はずだった。
だが亜嵐は音鳴が近づく瞬間に刀を防御形態へ変化させる。ずっとこの繰り返し
刃は届かない。
「だから……それじゃ、僕には通用しないって
分からないかなぁ」
刀が振られる。
ドンッ!
パラパラッ!
また壁に叩きつけられ、音が途絶える。
「がはっ……」
音鳴は膝をつき血を吐いた。
亜嵐は落胆したように言う。
「君は自分の能力を理解してるのか?
それとも本当にその程度なのか。
僕は君を気に入ったんだ。
失望させないでくれよ。
もっと自分の能力を知った方がいい。」
音鳴は何も言わず、立ち上がる。
背中に隠した冊子を取り出し、
パラパラと確認する。
台本で答えを探しているのだ。
だが——
そこには何も書かれていない。
答えがない。
音鳴は《分からない》という顔だけを浮かべていた。
亜嵐は少し哀れむようにため息をついた。
「……その冊子が何なのかは知らないけど。
そこに君の答えはあるのか?
それは自分で書いたものか?」
音鳴は答えない。
亜嵐は続けた。
「違うなら意味はないよ。
正解は自分で考えて、自分で答えをださないと。
これは僕の大事な人の受け売りだけど……
僕はそう思うよ。」
音鳴はまだ台本を見つめていた。
亜嵐は静かに刀を地面に突き刺す。
キィィンッ!
倉庫に金属音が響いた。
音鳴が反応し顔を上げる。
亜嵐は地面から刀を抜き、
構えながら大きな声でいう。
「僕の妖刀は血液を纏って形を変える。
刀は脈打つたびに強化される。」
音鳴は亜嵐の言葉を静かにきいているが
なにがいいたいかは理解していない
少しの沈黙のあと、亜嵐が続けた
「そういえば、僕が戦ったことある敵で
水を刀に纏う人もいたなぁ
能力は違っても同じことは
できるかもしれないね。
まぁ君には関係のない話だけど」
音鳴は自分の刀を見つめる。
静かに考える。
亜嵐の刀が血を纏うように——
自分の刀にも纏わせればいい。
纏わせるものは決まっている。
音。
ギュン……ギュン……ギュン……
音鳴の刀が甲高く鳴り始める。
その刃先が地面に触れた瞬間、地面に亀裂が走る。
音鳴はまだ理解していなかったが
纏わせた音は音波となり
振動となって刀を強化していた。
今までの《録音・再生》ではなく
純粋な攻撃力として。
これが正解なのかはわからない
でも台本には書いていなかった自分の力に
音鳴は少しワクワクした
音鳴は刀を構える。
亜嵐は静かに待っていた、そして音鳴が
答えを出し、刀を構えたとき微笑んだ
「それでいい。それが君の答え、音なんだね 」
心底嬉しそうに。
「第3ラウンド……これが最終ラウンドだ。」
「楽しい時間が終わりそうだ」
二人は同時に姿を消す。
──最終ラウンドの開始である。




