9話 妖刀
ガキン、ガキンッ!
倉庫内に剣がぶつかり合う音が響く。
音鳴は高速で移動しながら、亜嵐の周囲を翻弄していた。
現れたと思えば消え、また別の角度から現れ、剣を叩きつけ、そしてまた消える。
ギャング相手に見せた速度よりも、さらに早い。
常人の目では追えない。
だが――
亜嵐はその攻撃を防ぎ切っていた。
亜嵐には音鳴に匹敵する速度がない。
だからこそ動かず、立ったまま対応していた。
二人はお嬢様から距離を置いて戦っていた。
理由は単純。周囲にはギャングの死体が転がっており、足場が悪すぎたからだ。
キュッ、と音を立てて音鳴が亜嵐から距離を取り止まった。
「強いな……」
「君もね。僕も暗殺者界隈では強い方なんだよ」
亜嵐は笑って言う。
「そっか」
音鳴は構えを変えた。
足を広げ、剣を腰に引きながら前傾姿勢で俯く。
音鳴の最速の構え。
最短距離で首を跳ねるための型だ。
「じゃあ……もっと速くいくよ」
「いいねぇ。君の全力が見たい」
その返答と同時に大きな音が鳴り、コンクリートの地面に深く足跡が刻まれた。
次の瞬間、音鳴はもう亜嵐の背後にいた。
亜嵐の身体が揺れ、左胸から血飛沫が舞う。
驚いた顔をしたが――すぐに笑った。
ゆっくりと音鳴の方へ振り返りながら。
「……なるほど。音が鳴るのが死の合図か。だから“音鳴”って呼ばれるんだね」
「え? なにそれ」
「君の名前の由来だよ」
「へー……そうなんだ。俺知らないよ」
「……君は本当に面白いね」
亜嵐は刀身が赤黒く輝く刀を掲げ、
そのまま地面に突き立てた。
「このままだと君に勝てそうにないかな。だから――妖刀の力を使わせてもらうよ」
「妖刀? あぁ、それのこと。俺のも妖刀だよ」
「そうか。なら妖刀同士、力を使い合おうじゃないか」
音鳴は不思議そうに首を傾げた。
「妖刀って、長さ変えられる刀じゃないの?」
「……へぇ。驚いた。君のボスは妖刀の力を教えてないんだね。僕にも勝機はありそうだ」
亜嵐が突き立てた刀から、黒い影のようなものが地面を走り、音鳴へ迫る。
「なにそれ?」
音鳴は高速で逃れるが、影も速い。
音鳴ほどではないが、追跡性能は高い。
影が地面を壁を音鳴の行先を襲う
「速いねぇ。じゃあ、これはどうかな」
亜嵐の刀から影が三本に分岐し、音鳴を包囲するように襲う。
音鳴は壁を走り、壁を蹴り、空中で姿勢を変えながら三次元的に逃げる。
逃げながらも、影と亜嵐の観察していた
音鳴はいつでも――亜嵐の首を狙っているのだ
ドンッ!
壁が凹み、大きな音を立てた瞬間、音鳴が消えた。
そして一直線に亜嵐へ突っ込む。
しかしその前に黒いワイヤーのようなものが展開し、音鳴の刀を止める。
「なにこれ?」
同時に壁を這っていた三本の影が音鳴へ襲いかかる
音鳴は空中で回転し、地面に着地すると再び消え、距離を取った。
身体や頬から血が垂れていた。
音鳴に襲いかかった影は地面を貫通していた
刃物並みの攻撃力があるらしい
「……追加シナリオしんどいな。笑わせなくていいのに、こんな苦労したの初めてだよ」
音鳴は血と汗を拭いながら呟いた。
「君も全力でやった方がいいんじゃない?」
亜嵐が言いながら
地面から刀を抜くと、影が消えた。
「全力でやってるよ」
亜嵐は不思議そうな顔をした
「……君、異能者だろ。異能使いなよ」
「あ、そっか。、、、なんで分かったの?」
「、、、君のボスは物知りだと聞いたけど、何も教えないんだね……異能者には特徴があるんだ」
「特徴?」
「理由は分からないけど……影がないんだよ」
「え?」
音鳴はすぐに自分の足元を見る。
「あ、本当だ。へぇ……影ないんだ。まぁいいか」
「ふふ……君は本当に面白い。僕は君を気に入ったよ。だからもう一つ教えてあげる」
亜嵐は赤黒く輝く刀身の刀を音鳴に向けた。
「影を操る能力は全ての妖刀が持つ基礎能力。
そして妖刀の中には固有能力を持つものもある。
例えば――僕の妖刀とかね」
亜嵐は不敵に少し笑う
刀身が脈打つように赤黒く膨れ上がる。
「吸え、《亜飲》」
血を吸った刀が巨大化した。
「じゃあ――第二ラウンド始めようか」




