05 崩壊
ーーーーーーーーーー〈6年後〉
あれから6年が経った。
ただ、聖紋の儀が終わったからといって別に生活が変わることは無かった。
日常でスキルを使う機会なんて無い。平和で楽しい毎日。
いつも通りの日常をただ過ごして行くうちに、
ーーずっとみんなと生きていたい
そう思うようになった。
「お母さん、お父さんいつ帰ってくるの?」
「んー、夜には帰ってくるって言ってたけど・・・まあ、気長に待ちましょ」
今日はお父さんはノアさんと二人で護衛任務らしい。俺はお母さんと二人で静かな一日を過ごしている。
うちには大してやる事もないし、ちょっと暇だ。まあ、お母さんと一緒にいるだけで結構楽しいんだけどねっ。
「じゃあさ、お母さんーーーーーー
その時、突然誰かが戸を叩いた。
お母さんが答えた。
「はーい。ごめんね、ちょっと待っててくれる?」
誰だろ、うちなんかに用があるなんて。変なの。
お母さんが戸を開けると、そこにはよく知っている男が立っている。
「あ、アベルさん!突然どうしたんですか」
「ああ、ちょっと、忘れ物を」
「忘れ物?」
ーーーーその言い方に違和感を覚えたのも束の間、彼は突然剣を手に取り、俺の方へ襲いかかる。
「っっっ、え?」
「フッ」
数秒経って、俺は気づいた。ーー身動きが取れなかった俺を、お母さんが抱きしめて守ったことに。
「へぇ、防御スキルのないガキを守るためにわざわざ死ににくるなんてなぁ」
「や、やめて」
「おら、こっち向けよ、おい」
ーーーーアベルは何度も、何度も剣をふるった。まるで僕たちの叫び声など聞こえないように。
「っや、やめて、、やめてくれ」
「エリオ、お前のっ、せいだっ、ろうが!お前が、大人しくオレのもとに来とけば、こんなことには、ならなかったろうに!」
「何を言って、、やめろ、それ以上はっ」
俺がどんなに何を言おうと、もうアベルに届いてる気がしない。
「ずっと、我慢してた。お前らの事をっ、見るだけで、虫唾が走るんだよ、、」
(やめろ)
「もう限界だ、今日はあの邪魔な奴もいない。オレをっ、選ばなかったこと、後悔させてやる」
(やめろ)
母に向けられた剣は止まることを知らず、幾度となく牙をむく。
「ハッ、ハッ、、これくらいで良いか。・・・・・・今度はお前だなぁ、レイン」
俺に向けられた剣、それは微かに震えている。
そして、冷たくなり、俺の上にあったお母さんの体の隙間から見えた、アベルの顔。それは、醜く歪んでいた。
(やめろ、もう..)
「やめろぉぉぉぉぉっ ーーーーーーーーーー
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夜の1時に帰ってきたガイル、そしてノアは、家の静けさに少し驚いた。
(まあ、流石に寝てるか)
「おーい、帰ったぞ〜」
(あれ、いつもは寝てても返事くらいーーーー
「ひぃっっ」
ノアは、目の前に広がる信じられない光景に、思わず叫んだ。
「おい、何だよ、これ」
そこには、ーーーー無惨な姿の、家族があった。
「おい、冗談だろ?返事してくれよ」
返事はなく、ただ、深い静寂が続く。
「嘘だ、だって昨日の朝はあんなに、、」
ノアは立ち尽くし、ガイルはーー泣き崩れていた。
「うっ、うああ゛ぁ、うぅ」
全てをかけて守り抜いてきた家族の姿に、ガイルは絶望を隠す事はできなかった。
どうして、どうして気づかなかったんだ。ーーいや、油断していたのか、俺は、どう、し、て...
ーーーーただ、それも長くは続かなかった。長い沈黙の後、ガイルは何かを決心した顔で、ノアへと近づいた。
「. . レインには、、、まだ微かに魔力を感じる」
「へっ?」
ノアはレインへと近づく
「ほんとだ. . 聖紋がまだ完全には切れていないみたい。でもそれがどうしたの、もう彼もすぐに. . . .
「俺の心臓と取りかえればいい」
「え. . ?何を言って」
ガイルは自分の全てを賭した、力強い表情で近づく。
「魔力を保持しているのは心臓だ、それを取り替えれば、、、レインは助かるかもしれない」
そうだ、俺は何を迷っていたんだ。俺は英雄だ、息子の英雄になるのは、俺の仕事だろ。
俺にとって、唯一の家族を失うなんて、死ぬよりもずっとつらい。こいつらがいない世界なんて、考えたくもない。
「そんなのやだよ、それに、適応出来ずにどっちも死んじゃう事だって多い、危険なことで. .
「それでも、救わなきゃダメなんだ。大丈夫、俺とレインは親子だし、やるのもお前だ。失敗しない」
・・もしかしたら、レインも俺と同じつらさを感じるかもしれない。
「嫌だ、嫌だよ、そんなの。私、ガイルと旅をするの、本当に楽しかった。そんなあなたを殺すなんて、できるわけない」
「やるんだ、お前なら出来る」
でも、レインなら、きっと乗り越えられる。
「嫌だ、絶対に」
「これは、俺の一生のお願いだ。聞いてくれないか、なぁ頼むよ。ノア」
ガイルは、これまでノアに頭を下げて願う事なんて一度たりともなかった。
何でも1人でこなしてしまう、そんな頼もしい人であった。
そんな人がいま、頭を下げてお願いをしているのだ。
「. . . そう、ですか。あなたは、いつも決めた事は、必ずやる人ですからね」
涙ぐんだ声でノアは言った。
「. . 本当に、いいの」
「ああ」
ノアは、それ以上何も言わなかった。ガイルとの記憶を、これ以上増やしたくなかった。
「. . . さようならっ」
ああ、俺は、最後にちょっとだけ、本当の英雄に、なれただろうかーーーー
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