表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツンデレ黒豹獣人の溺愛。「あんた、私のこと好きだったんだ?!」  作者: ミカン♬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/20

15 ルッツ視点

 馬車がガタゴト動き出すと、アリーが早速口を尖らせた。

「もう、話せないと退屈じゃないの。ルッツ、戻ってよ!」


 俺は無言で尻尾だけ振った。黒豹のままでいるしかない。


 ──昨夜のことを思い出す。


 俺はボスに頭を下げた。

『アリーをレッドリバーまで護衛させてください』


 でもボスは腕を組んだまま首を横に振った。

『もっと腕の立つ護衛を付ける。おまえは不要だ』


 胸の奥がぐっと詰まる。

 それでも食い下がる俺に、ボスの声は冷たかった。


『アリーがおまえの《番》なのは知っている。だが、俺は娘を獣人にやる気はない』


 俺はボスに恩もあるし、尊敬もしてる。でも恐れてもいる。

 甘いのは娘のアリーにだけで、アランにすら時々、冷酷な顔を見せる人だ。


『じゃあ、なぜダリオンとの結婚を黙認したんですか』

 恐る恐る尋ねると、ボスは苦い顔をした。


『ダリオンは最初からアリーを騙していたからだ。気付けばすぐ別れると思ったが、あのバカ娘は四年も信じ続けた』


 胸が痛んだ。アリーがそれだけダリオンを愛していた証拠だ。


『ふん、だからダリオンは許さない。誘拐されてもギリギリまで生かしておいた。今後は死ぬより辛い目に遭わせ、一生償わせてやる』


 ダリオンの発見、わざと遅らせたのか。背筋が冷えた。本物の冷酷さだ。


『ダリオンの実家の家族もそれなりに償ってもらう。それなりにな……』

 そう言うと、ボスは改めて俺の顔を見た。挑むような目で。


『娘が戻れば、俺の後を継ぐにふさわしい相手と婚姻を結ばせる。おまえがまとわりつくのは迷惑だ』


『俺は、アリーと結婚したいなんて言ってません。ただ、護衛だけさせてください』


 その時、後ろに立っていたアランがぼそっと言った。

『アリーお嬢さんの気持ちは、どうなんでしょうね』


 ボスは即答した。

『ダリオンに惚れて結婚したくらいだ、ルッツなんて仲間程度の認識だろう』


 図星だった。俺はアリーの新しい恋の予定にも入っていない。


 黙ってうつむく俺に、ボスは追い打ちをかける。

『そんなにアリーのそばに居たいなら、ペットにでもなればいい』


 冗談で言ったのかもしれない。でもそれは俺の尊厳をひどく傷つけた。

『俺は獣人ですけど、ボスと……どう違うんですか? アリーに相応しくないと言うなら、俺に足りないものは何ですか』


 睨み返した俺と、ボスの後方にいるアランの目が合う。

 アランは首を振って合図した──逆らうな、というサイン。

 でももう引き下がれなかった。


『逆に聞きたい。おまえがアリーに相応しい理由はなんだ?』


『俺が一番、アリーを好きだからです!』


 口にした瞬間、目を閉じた。──終わった、殺される。


 だがボスは興味無さそうな声で、俺に命令した。

『くだらん、もう下がれ。ペットが嫌なら諦めろ』


 そのまま部屋から追い出された。

 思い返すたび、腹の奥が煮え立って、初めてボスを恨んだ。



 ──そして今朝。


 気づけば荷造りしてた。尊厳なんて、とっくに捨てて。

 くそ、俺、マジで頭おかしい。


 アリーと離れるくらいなら、ペットでも何でもなる。

 獣人の《番》って、こういう悲しいさがなのかもしれない。


 アランに「ヘタレ」って笑われても構わない。

 俺は護衛ペットになる道を選んだ。だから、ずっと黒豹のままでいるんだ。


 ──そんなこと、アリーには絶対知られたくない。



「戻ってくれないと、ファルって呼ぶわよ?」

 ──ああ、うるせえ。


「もう! ルッツってば、なんとか言ってよ!」

 ──言えるかよ。お前のペットになったなんてよぉ!




 レッドリバーの街に着いたのは夜だった。

 アリーはすこぶる機嫌が悪い。


「ルッツ、着いたわよ。自分の荷物持ちなさいよ」


 俺はストンと馬車から飛び降り、あたりを警戒する。


「それって新たな嫌がらせ? もう十分なんだけど?」


 ──俺はお前の護衛ペットになったんだ。お前を守ってやる。

 だからお前は、俺を可愛がれ──!



読んで頂いて有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ