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ツンデレ黒豹獣人の溺愛。「あんた、私のこと好きだったんだ?!」  作者: ミカン♬


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14 顛末2

 報復は終わった。


 貴族を裁くのは王家の役目だ。侯爵家当主モートンは、死罪。

 モートンと繋がっていた暗殺集団も摘発された。


 キスリー侯爵家は財産を叩き売って、情報ギルド本館の再建と補償。それで爵位は子爵に降格。


 ビルド商会のやつらも全員牢屋。こっちは余罪だらけで調査が長引いてる。


「ダリオン達、死罪は免れても、死ぬよりキツい罰食らうんじゃねーの」

 ルッツは他人事みたいに言う。

 でも彼は、毎日のようにキスリー子爵家に戻るよう、懇願されている。


「俺はもともと身分を明かす気はなかった。でもお前が自分を証明したいなんて言うから、俺もそんな気になっただけ」

「キスリー家に戻らないの?」


「キスリーの爺さんは俺の母さんを嫌った獣人差別主義者だった。戻るわけねーだろ」

「……父だってそうよ?」

「ボスは差別はしねー。ただ、獣人が嫌いなだけだ」


「どう違うのよ、それ」

「全然ちげーよ」

 これは、本気で戻る気ないな。


 黒豹仲間を失った獣舎を片付けるルッツ。間もなくここは壊される。

 庭の隅に並んだ黒豹たちの小さな墓が視界に刺さる。


「父はもう、黒豹は飼わないって」

「ああ、鼻が利く犬獣人を雇うそうだ。夜の警護なんて俺一人で十分なのによ。……で、お前はどうすんの? レッドリバーに戻るのか?」


「うん。でもその前に、父の秘密を調べようと思うの」

「ボスの秘密?」


「なんで父は裏世界のボスなのか?」

「ああ……」

 ルッツは知ってる顔。


「王家が後ろ盾だからだろ」

「ええ、王家!?」


「昔は王家の闇仕事を請け負ってたそうだ。今は法が厳しくなって王家もおとなしくなったらしいが」

「へぇ……そうなんだ」


「で、なんでも彼は落とし胤だって噂だ」

「父が?」

「いや、……アランだ。……ただの噂だけどな」


「……そっか、アランがね。あははは」

 いつも父に寄り添ってるアラン。

 もしかしたら情報ギルドの真の裏ボスは、アランなのかもしれない。


「よし。すっきりした! これで新しい気持ちで、新しい恋だって探せる。ルッツも恋人と幸せにね」

「俺の恋人? いねーよ」


「いい男だから女が放っておかないのでしょ? あんたもいい恋見つけなさいよ」

「ちょ、待て! お前は男を見る目がないから、また騙されんぞ!」


「見つけたらまず情報ギルドに素行調査をお願いするから大丈夫。じゃあね!」


 世の中、半分は男だ。

 レッドリバーは出会いが少なそうだし、王都で働きながらゆっくり探そう。慎重に。

 誠実で、優しくて……口が悪くてもいい。服の趣味が悪くても許す。


 ルッツのこと、ずっと憎らしいと思っていた。顔を見れば腹が立って、素直になれなかった。

 ──それだけ彼が気になっていたんだと思う。

 私、もうずっと前からルッツが好きだった。悔しいけど、認めるしかない。



 今はとりあえず叔母さんに会いたい。

 一度レッドリバーに戻ろう。

 いっぱい、話を聞いてもらいたいから。



 父に会いに行くと、父は「レッドリバーに戻るのか?」とだけ言った。


「はい、でも戻ってきます。本部が再建されたら働かせてもらえる?」

「ほぉ、こっちで働くのか」


「ええ、経験を生かして今度こそいい男を見つけるわ」

「ふん」

 と、父は鼻で笑った。


「結婚だけが人生じゃないですからね。互いに良い関係であれば恋人同士のままでも構わない」

 そう言ったアランが父の肩に手を置くと、父は自分の手を重ねた。


 人それぞれだ。叔母さんの夫、イアンは去勢までして叔母さんと結婚したかった。

 私の母は私を産んで捨て、父からも去った。


「明日出発しますね。では御機嫌よう」



 部屋で荷物をまとめると、荷物が随分増えていた。

「これ、ルッツが買ってくれたんだ」


 ビルド商店での出来事、思い出すと泣けてきた。

 浮かぶのはルッツの顔。

 悲しいんじゃなくて、切なかった。



 翌朝、荷物を馬車に乗せているとアランと黒豹のルッツが近付いてきた。


「見送ってくれるの?」

「ええ、ルッツは護衛に付けます」

「そうなんだ」


 ルッツは尻尾をパタパタと振った。


「あんたは……なんで変身してきたのかな。会話できないじゃないの」


「こいつは普段はイキってるくせに、お嬢様の前ではヘタレですからね」

「私の前でも偉そうな態度だけど?」


「いえいえ。ルッツは、お嬢様の為にタマを……」

「グワァァァアア!!」

 いきなりルッツがアランに飛び掛かった。が、容赦なく蹴り飛ばされる。


「もう、何やってるのよ、ルッツ」

「このバカ豹。ボスの許可も出たので、お嬢様が戻るまで護衛させます」


「えっと、私は本部の再建まで戻らないかもしれないわよ?」

「はい。これはルッツの荷物です」


 私が荷物を受け取るとルッツは馬車に飛び乗った。


 こうして私と黒豹ルッツは、叔母の待つレッドリバーへと向かったのだった。



読んで頂いて有難うございました。

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