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今からする質問に3つ以上該当する方は、

作者: aoi


 この話を「小説家になろう」に投稿するにあたって、地名や実名を書くことは控えさせていただきたいと思っています。


 それだけ、これから書く内容は危険なのです。



まずは、こちらをご覧ください。


 下記の質問に3つ以上該当した方は、『清めの水』を無料でお配りしています。


1 墓場まで持っていきたい秘密がある


2 夏美という名前の姉がいる


3 目の前で人が吹っ飛ぶのを見たことがある


4 4年と5ヶ月と28日前に飲酒をした


5 スマートフォンで動画を撮影したことがある


6 橈骨茎状突起とうこつけいじょうとっきを骨折したことがある


7 以前わたしたちと会ってますよね?


 回答の訂正はできませんので、慎重にお答えください。


 

 ご覧頂いたのは、先日、SNSに投稿された画像です。『不気味な2人組に話しかけられて……』という書き込みの下にこの画像が掲載されていました。


 この不気味な出来事を夏休みの自由研究にしようと思い立った僕は、SNSの投稿主から詳しいことを聞こうとメッセージを送りました。


「はじめまして、こんにちは。昨日アップされた画像について詳しく聞きたいのですが、よろしいでしょうか?」


 後日、返事がない代わりに投稿された内容は以下の通りです。


 『2日前に投稿した内容ですけど、反響が凄くて多くの方からメッセージを頂いています。一人ひとりにお答えしたいところですが、時間がないため無理です。すみません。

 

 これから投稿する内容が、頂いたメッセージで多かった質問の回答です。読んでいただければ幸いです。数日後、このアカウントは削除する予定です。皆様、くれぐれもご注意ください』


 次に投稿された投稿文には、箇条書きでこう回答されていました。


・“不気味な2人組”はどちらも女性で、年齢は60歳を超えていそうな見た目である。


・2人組を見かけた場所は、●●駅の南口を出たところの路上。


・不気味と書いた理由は、話しかけてきた女性が何者かに取り憑かれたような必死さがあったから。


 アカウントを削除するというので、僕は書かれた内容をスクリーンショットして保存しました。


 皆様、くれぐれもご注意ください──。なにか危険な領域に足を踏み入れたような、そんな感覚に襲われると、段々と鼓動が早くなっていきました。


 友人を誘っていくことにしました。というのも、友人もこの投稿を見ていたらしく、あっちから誘ってきたのです。これは好都合と思い、誘いを受けて行くことにしました。


 翌日の昼頃、友人と●●駅を降りると、意外と人の数は疎らでした。


 投稿の反響の多さから、駅には人が殺到していると思っていました。2人で拍子抜けしていると、駅の南口から訴えかけるような女性の声が聞こえてきました。


 投稿主の言うとおり、年老いた女性の声でした。


 声のする方に行くと、女性2人組が駅の周辺にいる通行人に声を掛けていました。


「ご協力お願いします」そう言う女性は、持っているバインダーを通行人に向かって必死に見せていました。


 ですが、通行人たちは、拒否の反応を示してその場を去っていきます。


 もう片方の女性は、重たそうにトートバッグを肩に掛け、声を掛ける女性の後ろをついて回っていました。おそらくあのバッグのなかに『清めの水』が入っているのだろうと思いました。


 僕の友人はあの投稿にどこか懐疑的で、面白がっている様子でした。


「よし、じゃあ行ってみようぜ」友人は右の広角だけを上げて言いました。


「うん」


 話しかけている方の女性と目が合うと、僕は蛇に睨まれた蛙のようになってしまいました。友人は臆せず女性に向かって言いました。


「あの、ご協力できることがあったら、なにか力になりますよ」


「そう?」女性は満面な笑みを浮かべて、友人にバインダーを渡しました。


「それじゃ、答えてくれる?あなたは?」


 表情を変えないまま僕を見た女性は、バッグからもう1個のバインダーを取り出して、持った手をこちらに伸ばしてきました。


「はい」僕は受け取りました。「ご協力できて嬉しいです」


「どうもありがとう」


 渡されたバインダーには上にボールペンが挟まっていて、紙に書かれた内容は、先日投稿されたものと同じでした。


 友人はペン回しをしながら余裕の表情を見せています。丸を書く時のペンの音が数回聞こえてきてゾッとしました。


「お婆さん」友人がバインダーを女性に見せて言いました。「はいどうぞ」


 受け取った女性から笑みが消えると、冷たい声で言いました。「これでいいの?訂正はできないよ」


「はい。いいですよ」友人は軽く答えた。


「ちょっと」女性は、トートバッグを持っている方の女性に声を掛けました。


 ヒソヒソ声で、すこし話したあと、トートバッグから水の入った500mlのペットボトルを取り出して友人に手渡しました。


 友人はなにかの景品を貰ったような満足げな笑みを僕に向けてきました。


 僕は、女性たちになぜこのような活動をしているのかを聞くためにここへ来たのですが、いざ会ってみると、その思いは消えて恐怖心だけが僕の心の包み込んでいきました。


「すみません、該当することはありませんでした」僕は上ずった声で女性にバインダーを渡すと、逃げるように駅のなかに走りました。とにかくこの場から離れたいと思ったのです。


「おい、どうしたんだよ」後ろから追い付いてきた友人が、肩で息をしながら言いました。


「恐くなかったの?」僕は振り向いて言いました。


「なんだよ」友人は肩をすくめました。「ただのアンケートだろ」


 友人の持っていたペットボトルは、白いラベルが貼られていて、筆で書いたような書体で『清め』と書かれていました。


 

 この日以降、友人と連絡がつかなくなりました。SNSの投稿もパッタリと更新せず、行方もわからなくなってしまいました。


 友人の両親は、警察に届けを出したそうですが、未だに友人は見つかってないそうです。


 

 他にも『清めの水』を受け取ったと、SNSに投稿している人物たちは、友人と同様、更新が途絶えているそうです。


 僕はあと一歩のところで踏みとどまりましたが、皆様はおもしろ半分や軽い気持ちで危険な領域に踏み込まないよう、くれぐれもご注意ください。

こんにちは、aoiです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

すこしでも楽しんでいただけたら幸いです。

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