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5話

超久々投稿

 あの子は2300年代、昔みたいな人対人の戦いなら才能の塊だ。だが現代では、人対機械が常識だと教えられている。そして、桐の戦法は俗にいうカウンターが主流だ。

 不知火は動きこそ緩慢で、鎌を避けることは一見すると簡単だった。私のような工作員でもそう思うくらいだから、前線のエースだった桐なら尚更だ。  

 だが、熱を帯びた鎌が常時こちらに向けられているのはかなりのストレスを生む。

 ストレスは人を狂わす大きな要因だ。小さな綻びは判断ミスを容易に生み出すと私は考えている。


 「おーい烏葉?大事な大事な親友が頑張ってるんだから、ごちゃごちゃ考えてるのは可哀想なんじゃねぇの?」


 「……ちっ、志鶴。アンタよく思ってもないこと口に出せるわね」


 「いやいや見ろよ、こんな楽しい戦い中々お目にかかれるもんじゃないぜ?」


 キチキチと不快な音を奴は鳴らし、右腕の鎌を大きく振りかざす。そして桐はまるで予見していたかのようにその攻撃を避け、鋭くて熱い切っ先で胴元を突き刺す。

 「うわぁ!ちゃんと溶けてる!」なんて叫び声が聞こえてくる。私としては、その妙な冷静さが少し怖い。


 「まったく、仁科は殺しの才能に特化してるなぁ……」


 志鶴はしみじみと、桐のことを分かったかのようにぼそりと呟く。わざわざ私に聞こえるように言っているのが、こいつの気色悪いところだ。


 「なに?そんなに私に構ってほしいのかしら?随分と子供っぽいとこあるのね」


 「ったくそんなに怒るなよ。俺はただ単に思ったことを言ってるだけだぜ」


 桐に目を移す、先程の攻撃が発端になったのか不知火優勢だったところが、今は桐が優勢だ。

 彼女は、大きく不知火の懐に潜り込むと、奴の頭の節を素早く切り落とした。

 幕引きはあっさりと訪れ、私たち観客も桐の戦闘センスにどよめく。


 「はあっ……はあっ……戦闘終了か……っ?」


 桐はレイピアを握る手を緩め、肩で息をしながら目の前の残骸を見つめる。

 そう、きっと人ならそれで死ぬ。だが、相手は虫と機械の融合体『紫電』だ。

 頭という主要機関を失いながらも、奴は動き出す。生命の危機に過敏に反応した不知火は、先程の動きとは異なり、桐の身体を真っ二つに切り裂いた。

 ただ、これはVR訓練だ。生命の危険はない、生命の危険はないのだが……。私はじっとしていられず、戦闘範囲外エリアから、急いで桐の元へ駆け寄る。


 「桐!桐っ!しっかりして!ここは現実!アンタは死んでなんかないっ!」


 「……ありがとうございました桐さん。至急吐き気止めを持ってくるよう伝えていますので、少々お待ち下さい」


 偽の痛みから激しく嘔吐する桐に某君はそう告げた。嫌に冷静なのが少し、いやかなり腹立つがこんなことで騒いではいられないのだろう。

 先程取り付けた、頭と腕に付けたデバイスが痛覚に影響を及ぼすらしく、私達全員も『これ』を体験させられた。


 「はあっ、ははっ。痛覚に影響があるなら、もう少しの慎重にしたんだがな……」


 「こうすれば皆さん無理することはないでしょう?僕なりに考えた結果なので、受け入れてもらえれば幸いです」


 「騒がしいな烏葉、貴様の相方が蘇ってから随分浮足立っているようだが……」


 「エランさん、すみません休憩中に……。桐さん少しばかりチクッとしますよ、これで多少は楽になるはずです」


 下半身を鈍色に輝かせるこの男、エラン・マグフォードは手元の注射器を某に渡し、この試練を終えた私たちを軽く見渡した。私は桐より先に再構築されたので出会う機会があったが、桐にとっては初めて会う『2500年代』の生者だ。

 

 「仁科桐と言ったか、ある程度説明してやるから黙って聞いていろ。お前たちは、俺たち『OWSU』の切り札として紫電と戦ってもらう。そこはお前以外の7名も同じだ」

 

 私が聞いた内容をそのまま桐にも伝える。嘘が混ざっていたらどうしようかと考えていたところだ。

 気づけば観客席には誰一人も残っていなかった。顔合わせということで、呼ばれただけな面々だ。この世界の事情を桐より先に知っている為、もう一度彼の説明を聞く必要もないだろう。

 

 「ただ犬死されても夢見が悪いからな、我々『OWSU』の目的にさえ協力してもらえば、最低限の生活基準とQOLは保障する」


 エランは淡々と告げたが、私たちにとって拒否することは出来ない内容だ。ある意味彼らに飼われているようなものであり、A国を思い出して何とも不愉快な気持ちにさせられる。

 ただ、桐が目覚める前に過ごした数日間で、荒廃した世界の割に生活基準が高いことが実感出来たため、何とも両極端なことだ。

 ある程度具合が落ち着いた桐が、注射痕塗れの腕を軽く振った。もう立ち上がれるくらいに回復している彼女の胆力には、昔から驚きを隠せないくらいだ。


 「実質的な拒否権はないと言うことか……。まぁ、いいさ。なら改めて君たちのことを紹介してくれ、質問は追々するとしよう」


 「では改めて挨拶させていただきます。……ようこそ過去の皆様。我々はone who stands up、通称『OWSU』。父の組織『LET DOWN』にこの世界で唯一立ち向かうチームです。これからよろしくお願いしますね、桐さん」


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