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4話

 死ぬ前の私は、両手の機能をほぼ失ってB国の捕虜となった。待遇はA国と比べたら段違いで良かった。両手は使えないから介護して貰ってばかりだったけども。だけどこの状況から、解放されようがされまいが、惨めな姿を桐に見せたくなかった。

 正直あの子の傷になりたいが、重荷になりたい訳じゃない。

 そんな私がとった行動は、介護してくれる人を気絶させ、彼の持ってたナイフで首を刺して自殺しましたとさ。


 「それで某君。私たちはその紫電とやらと戦う為に呼び出された?再構築された?のはいいんだけども。その再構築の定義って何?ただの人間が、機械相手に勝てる訳ないと思うけど。その基準は?」


 目の前の少年、『某』はその袖が余った白衣を捲り、私の出した質問に目頭を押さえる。その様子は、少年と表すには年季が籠もっているように感じた。


 「僕も、この力の定義は分からないんです……。ただ僕は、これを一度死んだ方へのチャンスだと思っています」


 「ふーん、回答になってないわね。200年後の世界。紫電という敵、そして再構築という謎。だいぶ不親切が過ぎるんじゃないかしら」


 正直いうとかなり怪しい。進んだ技術の力で思考も弄られている可能性もある。だからどうこう出来る訳じゃないのが、この世界の嫌な所だ。


 「……僕は、貴方たちを利用し使命を達成させます。しかし、無意味に命を散らさせようとは考えていません。なので、こちらの出せる情報は全て出します」


 「はぁ……納得いかないけど、取り敢えずは貴方の意思に従うわ。今知りたいのは紫電の情報。教えてくれるかしら」


───────────────────────


 某君が、私たちにさせたように桐にも取り付ける。腕と頭に着けるバンドだ。これで脳波と身体の動きを読取り、今後に生かすらしい。


 「凛君!見てるかいこれ!締め付け感がないぞ!」


 「アンタ注目する場所おかしいでしょ……」


 普段のすました顔が、いかにも『未知の技術』にワクワクしてますよ的なオーラに包まれる。柄にもない姿を見るのは、再構築される前……戦争が始まった直後くらいだ。相変わらず可愛いわね、本当。


 「では桐さん、そろそろ始めましょうか。……あっ!その前に武器を選びましょう。目の前に選択肢が出るので、そちらから選んで貰えば大丈夫ですので」


 某が棒状の鉄の塊を投げる。実際はとても軽かったが、見た目は凄い重そうで大変腰に悪そうだ。

 桐も、ぶつぶつと何か呟いている。耳を澄まさなくても『この見た目でこんなに軽いとは……』とか言ってるのはよく分かる。


 「リッツ様リッツ様、桐は何を使うんですか?」


 「そう……ね。彼らは地上戦が得意だったから、やはり使い慣れた銃とかかしら」


 リッツ様とステラが桐の使う武器を考察している。確かに私たちは、B国と違って地上戦を主戦力としていた。クソトップも海さんもさっきの戦いで銃を握ってたし、そう考えるのも無理はない。

 ただあの子が使うのは、私たちから見ても相当変わっている武器だ。


 「よし、決まったよ某。早速始めてくれ!」


 「えっ?レイピア!?」


 空さんが目を疑うかのように、素っ頓狂な声を挙げる。それもそうだ、私だって初めて出会った時、銃をサブウェポンに、レイピアを振るう女がいると上官から聞いた時驚いたものだ。


 「いやこれあっつ!何か電球を直で握ってる時みたいに熱いぞ!」


 「紫電の配電パーツを切断するにはそれしかなくてですね……。しかし、近接武器を選ぶ方が二人もいるとは。こちらの面々でも使う方はそうそういないのに……」


 桐が再構築される前に、私たちは一通り終えているのは、さっき某が語った通りだ。

 志鶴は馬鹿みたいに突っ込み、海さんは桐と同じ加工がされた刀で紫電の配線を叩き切っていた。……よくよく考えると、また死にに行く馬鹿が多いわね。


 「これは紫電α型、2300年代でいうダンゴムシですね」


 不思議な音とともに鈍い動きと、覆われた鉄製の甲殻を持った紫電が生み出される。生命への冒涜を強く感じる最低のデザインだ。

 因みに、ここでアングルさんは鍬を握ったまま倒れていた。理由は見た目の不快さと生命を弄くるエゴに耐えきれなかったから、らしい。


 「うむ!刺す瞬間が最高に気持ち悪いな!」


 桐は、直様甲殻の隙間を狙い、最低の団子みたいな状態にする。死んだ?紫電は、光状の粒になって消えていく。外から見る限りは、とても綺麗な光景だ。

 私たちが模擬とはいえ戦ったのは、さっきの紫電α型。そして蜂の姿をした紫電Σ型。こいつは飛ぶので中々厄介だったが、動きが単純なので寄ってきた所を狩れば簡単だった。

 やはりと思ったが、リッツ様はここで刺されて落ちた。ある意味志鶴みたいに戦えるタイプだったら、もっと警戒心を持って接していただろう。

 ここまでは、戦闘経験があるとかなら余裕だろう。問題はここからだ。


 「むむっ!中々桐さんも戦えますね……。それでは僕たちが唯一鹵獲出来た、この子ならどうでしょうか」


 某は、片手で持っていたタブレットを動かし、私たちの大部分が倒せなかった紫電を召喚する。

 それは私たちより大きく、本来保護色である筈の緑色と、関節部分を覆った鈍色のプロテクターの対比が激しく、見ているこっちも不快な気持ちにさせる。そして、ここからでも熱いと錯覚させる大きくて熱い鎌。

 それの名前は紫電〜不知火〜。カマキリの姿を取ったいかにも凶悪な敵。桐、アンタは幾らVRといえど、コイツを倒せるの……? 

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