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仁科桐の話1

 え?私の過去の話が聞きたい?……君も人の業を背負うのが好きだな。交流を目的とするなら、過去じゃなく、今に注目するべきだと私は思うがね。

 ……そうはいかない?はぁ、そこまで言うなら仕方ない。だが、某。本当に紫電を倒したいのであれば、私たちの過去になんて注目するな。これは軽い忠告だよ。情が湧いて、いざというとき切り捨てられなければ、長としては失格だからな。

 話を切り替えようか。某、君は何が聞きたい?生憎私は話を切り出すのが苦手でね。うーん自己紹介?軍にいた時の話?凛君に何故あそこまで執着してるのか?私が末期でおかしくなってた時期か?君が気になることはあるだろうが、今回は一つだけ話そう。


 …………自己紹介か。いいだろう、簡易で相手の特徴も一気に分かるからな。

 


 なら改めて、私は仁科桐。齢はあの時いくつだったかな……?まぁ20歳は超えてる。出身はA国の田舎出だ。田んぼしかなかったからな、田舎と言うには適切だろう。家族構成は父と母……なんだが、私の両親は出征がちでね。父方の祖母、つまりおばあちゃんが実の親みたいなものだ。

 好きな食べ物はおむすび。おばあちゃんがよく作ってくれてな、特に塩おむすびが私の一番だ。因みに、この年代にもおむすびは存在しているのかい?

 

 は?過去の産物?今は芋とパンが主流?待て待て、それは私は許さないぞ。

 分かるかい?おむすび、つまり米だな。米はいいぞ、中に具材を詰め込み、味の種類も多種多様に変えられる。米なら、味のマンネリ化を防げるぞ。

 芋とパンならどうだ?芋は塩、パンはジャムやバター。パンならまぁジャムの種類を変えるなり何なりすればいいが、奴は口の水分を奪うからな。その点米なら、ある程度は口の水分を保てるぞ。

 兵士の士気として食の種類というのは重要だ。飽きというのは、かつて飽食の人類が生んだ一つの罪だな。分かるかい?某。つまり米は偉大なんだよ。

 ……あぁすまない、つい語ってしまった。そんな顔をしないでおくれ。私もこれは一つの悪癖だと思っているんだ。

 嫌いな食べ物は果物全般だ。奴は見るのも億劫になるくらいには嫌悪していてね。

 珍しい?はは、そうだろうね。理由?理由はだな……


───────────────────────


 あれはいつの話だったろう。戦火のA国。民間人も貴族も女も子供も銃声の前には全て無意味に消えていく。


 「は……はは……。ここは地獄だ……」


 「おい!仁科!弾幕切らすな!あの忌々しいB国の連中の進軍を止めろ!」


 上官の怒鳴り声が頭にぐわんぐわんと鳴り響く。戦場では一瞬の気の迷いが部隊の命に直結する。彼の怒声は正しいものだ。私の一人のせいで死んだらたまったものじゃないだろう。相手は人じゃないとよく聞かされるが、そんな訳ない。彼らも死にたくないから戦うだけだ。この戦争は本当に無意味でしょうもない。

 銃声と爆発音が鳴り響く中、目視でも逃げ惑う一人の青年がいた。きっと彼はこのまま巻き込まれて命を失うだろう。


 「これでも喰らえ!B国の理想主義者共が!」


 部隊の内の誰が手榴弾を投げる。それはB国どころか、本来守るはずの民間人すら巻きこむものだ。

 見捨てればいいはずだ。今までもそうしてきたはずだ。いや待て、私はいつから人殺しを正当化してたんだ?今やればいいことは決まってる。私の信念に従って彼を助ける、それだけだ。

 気づけば銃弾飛び交う地獄を抜け、その手榴弾に覆いかぶさり…………


───────────────────────


 ………………あぁ。心配掛けたね。この話はなしにしよう。果物が嫌いになった理由は、君ともう少し信頼を深めてから話すよ。あることがきっかけ……とでも匂わせておこうか。

 じゃあ今日の話はここで終わりだ。気になるなら私の信頼を勝ち取ってくれよ、某。





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