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椅子取りゲームで転生した先は弱小魔族の王女だった。【Ⅰ】  作者: 柚木 壱
魔族の国 ブラックフォレスト王国
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森番 2 ★

収穫する量は雨季が終わった頃、ダッカ杉の森を見て歩く『森番』とその長が決める。森番は昔からの森の管理者で森に入る時には必ず森番の許可が必要となる。

森番を請け負う一族はずっと昔から森に棲んでいる。

森番の小さな小屋は森の中に点在している。子供は成人し結婚をすると小屋を引き継ぐ。森の全てを教え終えた親は『壁』の手前にある『冬御殿』に移り住む。そこで煉瓦を焼き、壁を修復しながら残りの生を終えるのだ。

森番はすぐ分かる。何故なら顔に魔除けの刺青がしてあるからだ。それは森番の子供が7つになると入れられる。


森番の子供は3人まで。子供のいない森番もいる。小屋には1家族までしか住まないから、2、3番目の子供は使っていない小屋を使う。小屋が空いていない場合にのみ、もっと森の奥深くに小屋を建てる。しかし、小屋はそれ程増えはしない。森番と結婚をしようと思う者は魔族でありながらもあまりいないからだ。


かと言って、子供がいなくなってしまっては森番の仕事に支障を来す。そんな時には森番の長は城下の貧民街へ行って娘や息子を買う。そして顔に刺青を施し、森の奥の小屋へ連れて行くのだ。


森番の給料は国から支払われる。森番の長は貰った金をそれぞれの小屋へ均等に分配する。そして幾許かを『冬御殿』の為にとって置く。


森番には狩りが許されている。狩りが許されているのは狩人と森番と王だけだ。

狩人であっても森に入る時には森番に許可を得なくてはならない。何しろ王でさえも森番の許可を得なくてはならないのだから。

森番は狩った獲物を換金してはならない。森番の狩る獲物は自分達で食べる分だけだ。


『冬御殿』は煉瓦で作った二階建ての細長い長屋みたいな建物だ。そこに小屋を譲った森番達は住む。


森番は『壁』も守っている。

壁は煉瓦を積み重ねて構築してある。

『壁』の向こう側は誰も行った事の無い異界である。

そこには恐ろしい怪物や魔物がいると言われている。

『壁』は異界とこちら側を分断する丈夫な仕切りである。



煉瓦にはクド丘陵から採って来た土を使う。粘土質で固い煉瓦が出来上がる。それで壁の破損した場所を修復する。繋ぎにはロロ湿原から採って来た泥を使う。ロロ湿原の泥に石灰を混ぜると強力な接着剤となるのだ。


ダッカ杉は基本的に伐採禁止である。

ダッカ杉を使った建造物は神殿と森番の小屋のみである。王宮にも使う事は出来ない。ダッカ杉の幹は固く締まっていて丈夫な建材となる。神殿はいつから建っているのか分からない程古い昔からそこにある。だが、森番が新しい小屋を建てる時や、小屋を修復する時のみ間伐材や倒木などを使う事が許される。間伐材や倒木などは大切に保管され、神殿の修復材や小屋の建材となって使用される。

そうやって守られ育てられてきた森の中には数千年を生きているダッカ杉もある。

ダッカ杉が立ち並ぶ暗い森はこの国を守護する神の森であり、森番はその神の森を守る。


森番は森に生える薬草から薬を作る。それを城下に点在する施薬院に持って行く。または施薬院の方から森番に薬の注文が来る。施薬院は病院だ。

森番は多少の薬草を自分達で持っていて、それを換金したり、知り合いに譲ってやったりすることも認められている。おおっぴらでなければ。


森番は経済活動に直接関わっていない。森番は国からの施しで生きている。顔に異様な文様を施された森番は魔族の中にあっても特別な者達である。森番は獣たちと暗く深い森にひっそりと暮らし、森を守り、異界との境界である『壁』を守っている。

森番は魔族にさえも蔑まれ、畏れられ、森の秘密を知り、『壁』の向こう側からの侵入を防ぎ、そうやって長い時を生きて来たのであった。



 

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