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椅子取りゲームで転生した先は弱小魔族の王女だった。【Ⅰ】  作者: 柚木 壱
魔族の国 ブラックフォレスト王国
4/30

サツキナ・イダロッテ 2 ★

リエッサ王妃は現在30歳。

あの大崎リエの転生である。

顔も性格もあのままでちょっと若くなったという事である。


夫であったジョレス国王は58歳であった。リエッサ王妃はジョレス国王の第二夫人であったのだが、第一夫人のリナ王妃が亡くなって、そのまま第一夫人に昇格したのであった。


実はリエッサ王妃には黒い噂がある。

ジョレス国王の第一夫人リナ王妃が亡くなったのも、ジョレス国王が亡くなったのも、裏にリエッサ王妃の策略があったのでは無いかと言う、そんな疑惑だ。

彼等は長く病んでいた。そして亡くなった。


多分、毒。


ほんの少しずつ毒を食事に混ぜて長い期間を掛けて殺したのでは無いかと、そんな噂が囁かれていた。

何しろ権力欲の旺盛な女である。あんな女が傍にいたら恐ろしくて夜もおちおち眠れない。

その強烈な毒をもつスズメバチと婚姻関係を結ぼうと言うのだからルイス・アクレナイトと言うのは余程の勇者であるか、それとも余程の馬鹿であるのか。


どうせ、砂ゴリラみたいに巨大で屈強な男であろうよ。リエッサ王妃に似合いの。

サツキナはそんな風に考えた。

(因みに砂ゴリラとは西の山岳地帯に棲む砂遊びが好きなゴリラである。巨大な体躯を持ち岩をも砕くバカ力を持っている)


しかし、私の前世の婚約者であった真司さんは一体どこに転生しているのだろうか。

サツキナは考える。


今迄に出会った魔族の中にはいなかった。だったら、ブラックフォレスト王国にはいないのだろうか。

イエローフォレストかブルーナーガか、レッドデザイアーのどこかの部族か……。

それとも海の果ての遠い異国にいるのだろうか。

そうなると常に人に見下される魔族の私なんかと結ばれる可能性は限りなく低い。

だって、頭に角の生えた女なんかと誰が結婚しようと思うだろうか?

サツキナはそれを思うと暗い気分になる。



魔族はこのダッカ杉に覆われたブラックフォレスト王国でしか生きられない。外に出たら迫害される。ここが故郷であり、終の棲家であるのだ。

それも偉そうに魔族とか言いながら弱小だし……。




~◇◇◇◇◇



サツキナ達、魔族のもっている魔法の力と言うのは所謂「ちちんぷいぷい。美味しいスィーツよ。出ろ」などと言う魔法では無い。

風を起こす,火を操る、水を操る等の物理的な力である。

それも、扱えるのはそよ風程度の小さな風であり、蝋燭程度の小さな火であり、水たまり程度の小さな水である。

それ、何の意味があるの? と、常々サツキナは疑問に思っていた。

あまりにも微々たる力で役に立たない。


サツキナの母親は魔族の中でも稀に生まれる2つの力を扱う女性であった

彼女は火と風を扱っていた。どの力を授かるかは天の采配による。

父であるダンテ・イダロッテ王は水を扱う。

サツキナは両親の火と水の相反する力で相殺されてしまったのか、今の所、風の力だけしか無い。それも何とも心地良い微風である。



サツキナの弟のロキは魔族の中でも珍しい「雷」の力である。

それだって高々線香花火程度の雷なのだ。

序に言うとオダッチは「波」である。物質に振動を与える事が出来るのだ。


もう一つ、魔族の特徴を挙げるなら、魔族は毒に強い。

魔族に毒は効かない。そして植物に関する昔からの知恵を持っている。


魔族の中でも特別なのは『森番』だ。

彼等は薬草の扱いに長じ、中には動物や植物と話す能力を持つ特別な者もいる。


誰もがささやかな力(それ程ささやかでも無いのだが)しか持っていないのに、この力と角のお陰で『魔族』などと言う忌まわしい名称を付けられてしまっている。

こんな所にいる限り、真司さんと巡り合う事は出来ないかも知れない。

サツキナはそう思っていた。


真司さんと巡り合うどころか、隣の大国イエローフォレストにとことん搾取されて、迫害されて彼等の奴隷みたいな扱いを受けて、益々貧乏になって行く。

常にイエローフォレストの顔色を窺い、虐げられて生きて行くのは嫌だ。

ブラックフォレスト王国の王女として生まれたからには、何とかしてこの状況を打破したい。


大体、結婚するなら自分の所で賄える程度の結婚式を挙げろよ。と思う。

何でそれに対して税金を払わなくちゃならないの?

どうせブルーナーガの商人から高価な絹の織物を買って豪華なドレスを仕立てようとか、珍しい宝石の付いたアクセを大量購入しようって所なのだろう。

豪華な披露宴の為の食事とか、優雅な楽団とか、さ。

ホントに腹立つ。

前世でも嫌いだったけれど、今生でも本当に嫌い。我儘女。

出来る事なら一生関わり合いになりたくないのに。


だがリエッサ王妃の軍隊は怖い。




数世代前(90年程前)、ブラックフレストは一度イエローフォレストと干戈を交えている。

その時に大敗を喫し、ダッカ杉の森の1/3を焼かれたブラックフォレストは半永久的にイエローフォレストに税金を払う事を余儀なくされた。

ブラックフォレスト特産のブラックマッシュルーム販売利益の1/4を税としてイエローフォレストに収めるのだ。これは後々大きな負担となってブラックフォレストの財政を圧迫していた。

それに加えて、今度は800万ビルド。


これではこれから先、どんな無理難題を押し付けられるか分かったものでは無い。

サツキナは不安になる。

それなのに王であるダンテは日々のんびりと釣り三昧である。


「全く、あのオヤジ、釣りの事しか考えていない」

サツキナはぶつぶつと文句を言う。


「サツキナ様。如何致しましょうか?」

フロレス武官が帰った後でオダッチが言った。

「うーん。次の満月って後何日?」

「後、10日程で」

「今すぐ王と弟を迎えに行って頂戴。それから宰相と重臣達に号令をかけて」

サツキナは言った。


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