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11.鍵

 


 ギイ、と押し開く扉。妹がぴょんっと小さく飛び跳ね店からでる。いや可愛いかよ。


 そうして食事を終えた俺と妹は店を後にした。薄暗くなった町。だからか妹は俺の制服の裾を摘んで歩いている。


「あ、そうだ。これ」

「......?」


 俺は鞄から鍵を出した。


「渡し忘れたらまずいから渡しとくよ。これ、家の鍵」

「あ、ありがとう、ございます......」


 妹が出した手のひらに俺は鍵を置く。すると彼女はそれをジッと見つめ、ぎゅっと握りしめる。

 小さな一つの鍵。けれどその小さな鍵が家族となった証にも思える。


(小さな頃に始めて鍵を持った時を思い出すな。大事な物だからこそ、それを与えられた時は子供ながらに少し自身が認められたような気がして嬉しかった......)


 そういえば、あの時母さんがくれた鍵。確かキーホルダーを付けてくれてたな。無くさないように。

 ......俺もキーホルダーかストラップか、何か付けて渡した方が良かったか。


 俺は辺りを見回す。妹が不思議そうに俺の顔を見上げる。きょとんとしている妹に「ちょっと待ってて」と俺は側にあった店に立ち寄る。


 すぐにみつけたそれ。目的を達し妹の元へと戻った。彼女はキョトンとした表情で、俺を見ていた。


「鍵、貸して」

「?、は、はい」


 俺はその鍵にガシャポンで引いてきたキーホルダーを付ける。そのキーホルダーとは。


「!、キララちゃん......!」


 彼女の好きなVTuber。煌星キララだ。


「無くさないようにね。家に帰ったら何かと付け替えても良いから、とりあえずこれで持ってて」

「......つ、付け替えません!ありがとうございます、お兄さん......!可愛い!」


 ミニサイズのフエルトのような材質でできた人形。丁度彼女の好きなキララの物があって良かった。喜んでくれてるみたいだし。


「わ、私、これ......宝物です!一生、大事にしますっ!」

「一生!?」

「はい!......ふふっ」


 にこにことキララの人形を眺める妹。


「ま、喜んでくれて良かった。帰ろっか」

「はい!」


 愛おしそうに頬擦りをして、ごそごそと人形つきの鍵を鞄に入れる。俺は彼女が袖を摘んだのを確認して歩き出す。

 ......こんなに表情豊かで愛らしいのに、学校では無口なんだよな。


(......整った顔立ち、愛嬌のある性格。髪を切るだけで勝手にモテそうだよな。そういやなんで髪を伸ばしてるんだ?特に前髪......今度聞いてみるか)


 ていうか。あれだな......こうしてると考えてしまう。彼女ってこんな感じなのだろうかと。

 いや、袖は摘まないか。手を握るよな、恋人なら。


 ジョギングをしている人、犬の散歩をしている人。様々な人とすれ違いながら歩道を歩く。ほとんど日が沈みかけていて街灯が明かりを灯す。


「......シリウス......」

「ん?」


 ぼそりと姫架が言う。俺は夜空を見上げるが、当然その一等星は見当たらない。


「わんわん」

「犬、シリウス......ああ、キララか」

「キララちゃんは、シリウスの光から生まれたんですよね」

「そうだな。光り輝く一等星から生まれたキララ」

「暗い空から生まれて、誰よりも輝く......光のVTuberになった。すごいです......」


「そうかな」

「......え?」


 妹がピタリと歩みを止める。くん、と摘まれた袖が引っ張られ、つられて俺も歩みを止めた。


「あ、違う!ごめん、変な意味じゃなくてさ!......キララも最初はあんなに人気じゃなかったし、決してすごい人なんかじゃない。普通の人だったから......いや」


 あいつは普通ではなかったな。


「......普通じゃないな。根暗で陰キャであまり人と喋るのが苦手だった」


 無言で俺の話を聞く妹。暗くてその表情はわからないけど、もしかしたら気分を悪くしているのかもしれない。


 でも、伝えたいことがある。


「そう。姫架さん、君と同じで......でも」


 さっきと言っている事が違う。妹は普通だと、俺はそう言った......けど、彼女の声や性格、努力の跡に一等星のように明るく輝く未来を見た。俺は彼女の力に賭けたい。だから――


 俺は真っ直ぐに姫架の目を見て言葉を続けた。


「でも、キララは少しの勇気で踏み出して輝き始めたんだよ」


「少しの、勇気......」


 勇気、勇気......と小さく何度も呟く。そして、彼女は僅かに頷いたように見えた。


「......私、わたしも......」


 空に一筋の星が流れた――


「......わたし......」


 ――小さな、輝きが――


「......私も......その、キララちゃん......」


 何かを言おうともがく姫架。けれど今は、まだ勇気が足りないようで言葉にできず、スカートの裾を握りしめていた。


「......キララちゃん、みたいに......」


 だけど、十分だ。少しの勇気で、少しずつ進んでいけば良い。君もキララのように。


「......なれるよ。君の声は美しい。他にも君には魅力的な所が沢山ある。絶対にできるよ」


 目を見開く姫架。彼女の瞳に光が宿ったように見えた。


「俺が、絶対にそこまで連れて行って見せるよ」


 全てを言葉にせずとも、俺は今なら不思議と彼女の想いを汲み取る事ができる。


『変わりたい、キララのように』


 ――小さな火が揺らぎ、大きくなるその熱を感じた。


 俺は兄だ。妹の願いを護り、叶えて見せる。







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