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アリアは戦わない。
大きな桜の木が、星々の小さな光を吸収して淡い蒼に輝いている。
ソレは手入れのしていない、鋸のように歪な形の刃物で、人の肉を削いでいた。
怖い――そんな感情が前面に出て来るのを必死に抑えて、アリアたちは息を潜める。
戦いたくない。いや、戦わない。
例え相手が恐ろしい食人鬼だとしても、アリアたちは決して、狩猟以外で殺めたりはしない。
それはアリアたちにとって唯一のルールだったから。
「あ、あれは話せる相手じゃないよね……? どうしよう、アリア」
「何か……あるはずだよ。私たちにしかできないことが……」
『グルルルルゥ……ニンゲン、ニオイ、スル……チカクニ……イル……イルゾ……』
「え……」
「ノノ? あのゴブリン、なんて言ったの?」
「アリア、これ……やばいかも……?」
『イルゾォ! チカクニイイィィ!!!』
「アリア―――!!!」