第6話
「えっ…まぁ…今先程」
「あぁそうなんですね!」
にぱぁと、効果音が付きそうな笑顔で言った。
けど私の事を助けてくれた人ではなかった。
取り敢えず、"表"の方の私で対応しよう。
「あの…」
1オクターブ上げた声で言った。
相変わらず自分でも聞いてきて反吐が出るような声だ。
「どうしましたか?」
「私をここに運んだのは一体誰ですか?」
「あぁ、先輩ですね」
先輩…?
それだけ言われても私には分からんぞ。
「先輩とは?」
「すみません。ちゃんと説明しないといけませんね。え~と確かいつも無表情で…」
「えっと…」
「何ですか?」
「顔見てないんです」
「えっ」
「色々とすみません」
「いやいいですよ。そうですね~強いて言うと……刀を持っていますね」
「刀!?」
「どうしましたか?」
「…その人です」
「そうなんですか!?」
まさかあの人だったとは。
世間は狭い。
ということは、この人はきっと後輩かなんかだろう。
さっき先輩って言ってたし。
一応お礼ぐらいはしとかないと。
「その人は今何処に居ますか?」
「えーと確か仮眠室で寝ていたような…」
「そうなんですか…」
そして沈黙という名の時間が始まった。
まぁしかし、これでひとまず事は落ち着いた。
ここに来てから、おかしな物にたくさん遭遇したからな。
やはり、情報収集は必須だろう。
まずは青年(仮)に聞いてみよう。
「あの…」
「どうしましたか?」
「此処はどうゆう地名の場所ですか?」
「此処は神戸ですね」
「神戸…」
「はい!そうです!」
「そうですか…。あと"聖慄"って何ですか?」
やっと1番知りたかった事を聞いた。
その直後、彼は驚いた表情でこちらを見た。
「えぇ!?知らないですか!?」
「はい」
「今の時代誰でも知っているのに。知らない方がおかしい。」
マズいぞ。
疑われ始めてる。
流石にこんなところで身の危険に晒したくないぞ。
取り敢えず、演技だ!演技!
「その私が住んでいた場所とっーても遠い場所なんですー、本当に誰も分からないようなとぉーい場所ですー」
「へー今の日本にもそんな場所があるんですね。勉強なりました。」
「そうですね……アハハハハ」
もうこれ笑えないぞ!?
なぁにが『とぉーい場所ですー』だ!
そんな説明で良いのか!?
しかし、青年よ信じるお前も大概だ!
何故その説明で分かった!?
お前はあれか天然か!?
どう考えても一般常識がある人はここで疑うだろ!
そして、勉強にもなってないぞ!
間違った知識を脳にインプットするな!
あぁもう駄目だ。
疲れてきた。
「えっと…」
その声で我に返る。
完全に自我を失っていた。
駄目だ自我を保て私。
「なんでもないです」
「じゃあ説明しますね。"聖慄"とは___」