復讐者
初めまして、クリタイです。
プロフにも書いてありますが、初めて投稿します。
私が書いているこの物語は、ラノベというよりかは警察小説に近いです。
序章 怪物
PM 19:00
朝から土砂降りの雨が降り続けている。
夜になっても雨が止む気配はなく、天気予報士が言うには一日中雨だと。
本来なら澄み切った虚空に綺麗な満月は見えるはずだが、今はどんよりと重たい
雨雲が美しい満月を隠している。
その雨中に、殺人鬼と言う名の「怪物」は現れた。
*
ピンポーン、と家のインターホンが鳴った。
「チッ。こんな時間に誰だよ」
男は舌打ちをして、見ていたテレビをいったん止め玄関へと向った。
「はい。どちら様?」
男は不機嫌ながらもドアを開けたのはいいが…そこには人っ子ひとりおらず、
不思議に思い周りを見渡したが静寂だけしかない。
だが、室外機の近くにキャリーケースが、一つだけ置いてある。
「チッ。なんだ?」
男は奇妙に思いながらもイタズラだと思い、ドアを閉め部屋に戻ろうした瞬間、
ピンポーン、と再度インターホンが鳴った。
男は振り返り、苛立ちを抑えながら玄関に今一度向かおうとすると、
ガチャ!!ガチャ!! とドアノブをひねる音が聞こえる。
「…誰だよ?」
男が呟いた直後、部屋の明かりが急に……消えた。
「なんだ?…停電か?」
男が困惑している最中に、「怪物」は家に入ってきた。
*
「怪物」は声を抑えながら、ひっそりと近づいて行く。
「ったく、またかよ」
男がぼやきつつ明かりがつくのを待っている反面、「怪物」は
この状況を楽しんでいる。
「ハァ、ハァ」
「獲物」には聞こえないように「怪物」は吐息を出し、背筋に鳥肌が立ちながら
瞳孔は限界まで開き、狂気の笑みを浮かべている。
「ハァ、もう、ハァ、駄目だ」
「怪物」はもう我慢出来なかった。
――――早くコイツを殺したい。
――――早くコイツが怯えている顔を見たい。
「怪物」は今まで多くの人間を殺してきたが、この緊張感と殺す時の
高揚感はなんとも言い難い。
「怪物」は衝動を抑えることは出来ず、ついに動いた。
*
「はぁ~。やっぱ、停電だったか」
部屋の明かりがつき、男は呟いた。
男が住んでいるアパートは住宅用の分電盤が古く、住人が電気を多く使用すると
時たまブレイカーが落ちることがある。
そのため先程の停電は、ブレイカーが落ちたんだろう、と男は思った。
そして、明かりがついたと同時に、
「いや、停電ではないよ」
と、何者かの声が後背から聞こえた。
最初に男が漏らしたのは、単純な驚きの声だった。
虫にでも遭遇した感覚だったのだろう。
それからそれ以上、男の発声を何者かは許さなかった。
男は悲鳴を上げることはおろか、自分自身が地面に倒れてから何者かに
襲われたと気付き、重傷を負いながらも自分を殴打した人物を見た瞬間、
真っ先にこう思った。
(…怪物だ)
そいつは男を見ながら、狂気の笑みを浮かべて再度…凶器を振り下ろした。
*
「怪物」は躊躇なく、凶器を振り下ろしていた。
鈍器で殴り続けるたびに、男の血しぶきが壁や床に飛び散り、
その度に獲物は「…うぅ」、「やめて‥くれ」など命乞いをしているが、
「怪物」は一切男の訴えを聞いていない。
むしろその声や表情を見るたびに、怪物は興奮し発狂したいが、ここでもしも
発狂してしまえば、下の階に住んでいる者に聞かれてしまうため、
「怪物」は抑え込んでいる。
しばらくたつと、「獲物」の呻き声は聞こえなくなった。
「お~い。もう終わり?」
「怪物」は凶器で「獲物」の体を揺すったが、ピクリとも動く気配がなかった。
だが、「獲物」が死んだ演技をしている可能性があると思い、
「怪物」はもう一度、凶器を「獲物」の顔面に、ガツッ! と振り下ろしたが、やはり
「獲物」は動く気配はおろか、動く素振りさえなかった。
「なんだぁ~。もう終わりか」
「怪物」は呟くと凶器を床に放り捨て、外に置いていたキャリーケースを
家中に持ってきた。
キャリーケースの中に屍の「獲物」を入れると、「怪物」は言った。
「まだまだお前には、活躍してもらうよ」
「獲物」に話しかけると「怪物」はキャリーケースを持ち、
家を出て…暗闇に消えた。