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青春の1ページ

作者: 愚者

 えっと、なんで私、部活に入ったんだっけ?たった一年前のことなのにひどく遠い過去のように感じられる。ああ、そうだ。あの頃は頑張れる気がしていたんだ。必死に練習して、大会に出て、結果を残して。そうして「楽しい青春」が送れる気がしていたんだ。だけどすぐにサボり癖が出た。毎日ある練習のなかで、時間に余裕はあるのに塾があるから、と休むうちに気が付けば週に1回くらいしか行かないようになっていた。

 

「あの、宮脇先生。実は来年から勉強が忙しくなるので二年生になるのと同時に部活をやめようと思っています。」


 顧問の先生は意外とあっさりと許可をくれた。気分は明るかった。部活が嫌いだったかって?別にそういうわけでもない。ただ何となくめんどくさかった。全く頑張ろうとしない自分が悪いのだ。分かっている。だけど改心して練習を増やそうしてもすぐに元に戻ってしまう。そんな自堕落な学校生活を過ごす内に気が付けば春。二年生になった。


「今川から話があるそうなので」

 そういって宮脇先生は私に話す場を与えた。やっと部活から解放されて嬉しいはずなのになぜか不安がこみあげてくる。あれ?本当に私の選択は間違っていないのかな。これからも部活を続けていく皆の顔が視界に映る。ああ、なんで皆そんなに楽しそうでなんだろう。本当は私も…。

 私の心の中はぐちゃぐちゃで、でも後戻りはできない。

「二年生になって勉強に専念することにしたので、部活をやめることになりました。一年間という短い間でしたがありがとうございました。」

 言葉は何も考えなくてもすらすらと出てきた。なんだか自分が機械になったみたいだった。


「ばいばーい」

「うん。がんばってね」

 かつての部活仲間に手を振って送り出す。帰ろう。自分の靴がコトコトと音を鳴らす。聞こえてくる音は高いのにそれに反比例するかのように心に黒くて重い、嫌な思いが募ってゆく。

 ああ、なんでやめてしまったのだろう。そう考えてしまってから一瞬だった。今まで必死に考えないようにしてきた後悔の言葉が溢れてくる。もっと。本当はもっと頑張れたのに。もっと頑張って結果を残せたはずなのに。なんで、なんでやめちゃったんだろう。なんでもっと頑張らなかったんだろう。なんで。なんで。なんで。

なんで今更こんなこと。


 風が吹く。落ちて黒ずんだ桜の花びらを一粒の涙が濡らした。


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